三力の剣
時を刻む塔を出た翌朝。
林帆は新しい剣を手に、塔のふもとで試し切りをすることにした。周囲には何もない荒野。絶好の場所だ。
彼は剣を抜き、目の前の大きな岩に向かって振り下ろした。
ざしゅっ。
刃が岩に触れた瞬間、何の抵抗もなく真っ二つに割れた。切断面は鏡のように滑らか。
「すごい切れ味だ…」
さらに、柄に意識を集中すると、剣の色が変わった。青(星の力)、赤、虹色(根源の力)。そして、三色が混ざり合うと、白い光に。
「三つの力を自由に切り替えられるのか」
「そのようだ。これ一本で、あらゆる状況に対応できる」
老怪も感心している。
林帆は剣を収め、地図を広げた。次の目的地は、この大陸の東端にある「古代の門」。そこを抜ければ、また新しい世界に渡れるらしい。
「行くぞ、ヨル」
「うん」
二人は東へ向かって歩き出した。
途中、小さな村に寄った。村人たちは二人を見て、怯えたように家の中へ隠れる。
「何かあったのか?」
林帆が声をかけると、一人の老人が戸を少し開けて答えた。
「西の山から魔物が降りてきて、毎晩村を襲うんだ。誰も太刀打ちできない」
「俺に任せろ」
その夜、林帆は村の外れで待ち伏せた。剣を抜き、闇の中で目を凝らす。
深夜、山の方から黒い影が三つ、這い寄ってきた。体長は二メートルほど。毛むくじゃらの体に、赤い目。
「オーガか。この世界にもいるんだな」
オーガたちが林帆に気づき、咆哮を上げて襲いかかる。
林帆は剣を横薙ぎに振った。白い光が走り、一匹の胴体を切り裂く。残りの二匹が同時に飛びかかるが、彼は素早く後退し、剣を逆手に持って反撃。二匹目の首を刎ね、三匹目は腹部を深く斬る。
あっという間の出来事。三匹のオーガは地に伏した。
村人たちが恐る恐る家から出てきて、林帆に感謝した。
「ありがとう! これで安心して眠れる」
「もう大丈夫です。しばらくは来ないでしょう」
村を後にして、さらに東へ。道中、何度か魔獣に襲われたが、新しい剣の前では雑魚も同然。
三日後、ようやく「古代の門」が見えた。二本の巨大な石柱。間に歪んだ空間。前に見た門と同じ種類だが、規模が大きい。
「ここか…」
近づくと、門の前に誰かが立っていた。黒いローブの男。顔は見えない。
「待っていた。三力を統一した者よ」
男の声は低く、響く。
「私はこの門の守護者。お前を通すわけにはいかない」
「なぜだ?」
「この門の向こうには、この世界よりもさらに危険な場所がある。行けばお前でも死ぬ」
「それでも行く」
林帆は剣を抜いた。男も杖を構える。
「ならば、力ずくで通ってみせよ」
男が杖を掲げると、地面から黒い蔦が生え、林帆に絡みつく。以前見た闇の力に似ているが、もっと強力だ。
しかし、今の林帆には違う。彼は剣に白い光を込め、蔦を斬り裂いた。
「甘い!」
一気に間合いを詰め、剣を男の喉元に突きつける。
「参ったか?」
男はしばらく黙っていたが、やがて杖を下ろした。
「見事だ。お前なら、向こうでもやっていけるだろう」
男は門に手をかざした。門が光り、渦が生まれる。
「行け。ただし、後悔はするな」
林帆はヨルの手を引き、光の渦へ足を踏み入れた。
体が軽くなり、景色が歪む。
新しい世界へ――
また一歩、彼の旅は続く。




