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港町の闇

倉庫の歪みを修復した翌朝。


港町の空はすっかり晴れ、人々の表情にも少しずつ活気が戻っていた。林帆はエルリリアと共に町の様子を見て回る。


「助かった。このまま歪みが放置されれば、町全体がマナ不足で廃墟になるところだった」


「まだ他にも歪みがあるのでしょう?」


「ああ。コンパスが示す限り、あと五ヶ所。すべて修復すれば、この大陸のマナのバランスは戻る」


その時、港の方から騒ぎ声が聞こえた。駆け寄ると、漁師たちが何かを取り囲んでいる。


「何があった?」


「今朝、網を引き上げたらこれがかかっていたんだ」


漁師が示したのは、黒い石の破片。歪みの核の一部のようだ。


林帆が手に取ると、石がかすかに震え、彼の手の中で砕け散った。しかし、砕けた瞬間、かすかな声が聞こえた。


『北の灯台…来るな…』


「北の灯台?」


エルリリアが地図を広げる。町の北、断崖の上に確かに灯台の印がある。


「あそこは長年使われていない。まさか歪みの根源がそこにあるのか」


林帆はすぐに向かうことにした。ヨルも一緒に行くという。レリスも同行を申し出た。


三人は町を出て、北の断崖へ向かう道を歩き始めた。道は険しく、所々崩れている。


一時間ほど歩くと、古びた灯台が見えた。石造りで、壁には蔦。窓は割れ、内部は暗い。


「ここか…」


近づくだけで、濃いマナの澱みを感じる。息が苦しい。


レリスが先頭に立ち、剣を構えて中へ。林帆とヨルが続く。


中はらせん階段。一段上がるごとに空気が重くなる。


最上階に辿り着くと、そこには大きな歪みの球体。今まで見た中で最大。周囲のマナを吸い込み、脈動している。


「これが…根源か」


球体の中から、黒い影が這い出してきた。人の形をしているが、目はなく、口だけが大きく開いている。


「お前たち…来るな…」


影が襲いかかる。レリスが剣で斬るが、影は霧散してすぐに再生する。


「物理攻撃は効かない!」


林帆は右手の紋章から虹色の光を放った。光が影を包み込み、断末魔の叫びを上げて消える。


しかし、球体自体は無事。さらに大きな影が生まれようとしている。


「これではキリがない…本体をやらねば」


林帆はヨルを見た。彼女はうなずき、月の護符を掲げた。護符の光が球体を包み、歪みの動きを一時的に止める。


「今だ!」


林帆は全ての力を右手に集中させ、球体めがけて飛び込んだ。虹色の光が球体を貫く。


ばちん。


球体にひび割れが入り、あっという間に砕け散った。最後の一瞬、球体の中から人の声。


『ありがとう…これで…終わる』


歪みが完全に消え、灯台の中に新鮮な空気が流れ込む。


「終わったのか?」


「ああ。これでこの大陸の歪みは全て修復された」


コンパスの針が止まった。もうどこも指していない。


灯台を出ると、外は夕暮れ。海が夕日で金色に輝いている。


ヨルが微笑む。


「きれい…」


「ああ。これからも、この景色を守れるように」


林帆は右手の紋章を見つめた。虹色の光は少し弱まっているが、まだ温かい。


「さあ、帰ろう。みんなが待っている」


三人は町へ向かって歩き出した。


旅はまだ続く。しかし、この大陸での役目は一旦終わった。


新しい冒険が、またどこかで待っている。

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