氷の迷宮
砦を出てから半日。
地図の示す道は、次第に氷に覆われていった。足元は滑りやすく、転ばないように慎重に歩く。雪は止み、代わりに氷の壁が両側を囲み始める。
「ここが…氷の迷宮か」
入口には古い石柱が二本。柱にはそれぞれ星の紋章と月の紋章。林帆は右手の星紋章をかざすと、柱が光り、氷の壁が左右に開いた。
中に入ると、そこは無限に続く氷の回廊。天井も壁も床も全て氷。ところどころに分かれ道。
「地図には…ここから先は描かれていない」
「つまり、自分で見つけろってことね」
ヨルが月の護符を掲げると、護符がかすかに左の道を照らした。
「こっちかな」
二人は左へ進んだ。十分ほど歩くと、行き止まりの壁。しかし壁の奥からかすかな光。
「壊せるか?」
林帆は右手の紋章に意識を集中し、星の力を放った。光の弾が壁を撃ち抜き、向こう側への道が開ける。
さらに進むと、広い空間。天井からは無数の氷柱。床には大きな氷の鏡。
その中央に、氷の台座。台座の上に、一冊の書物。
近づくと、書物が自動的に開いた。ページには古い文字。
『氷の迷宮を抜ける者は、己の影を克服せよ』
次の瞬間、床の氷の鏡から、もう一人の自分が現れた。以前の闇の幻影とは違う。完全に同じ姿。しかし目が冷たく、感情がない。
「お前は…」
「お前だ。お前の弱さも強さも全てを映す鏡」
影が襲いかかる。動きは林帆と同じ。しかし予測できない。鏡だから、逆の動きをするのだ。
林帆は回避しながら、星の短剣で反撃する。しかし影も同じ武器を使い、互角。
「どうすれば…」
「鏡は壊せば消える!」
老怪の声。林帆は床の氷の鏡に気づいた。鏡を壊せば、影も消える。
彼は星の力を右手に集中し、拳で鏡を叩きつけた。
ばりん。
鏡が砕け、影も消える。同時に台座の書物が光り、地図の続きが浮かび上がった。
「これで…出口が分かる」
林帆は地図を確認し、ヨルを連れてさらに奥へ。
その後も幾つかの分かれ道と罠を乗り越え、ついに迷宮の出口へ到着した。
出口の先は、広大な氷原。その先に、輝く海。星の光で満ちた海。
「これが…星の海」
波は立たず、ただ静かに光っている。向こう側は見えない。無限に広がる光の世界。
林帆は深呼吸をした。
「行くぞ。向こう側へ」
「うん」
二人は手を繋ぎ、星の海へ足を踏み入れた。
光が彼らを包み、意識が遠のいていく。
新しい世界が、きっと待っている。




