北への追跡
廃坑を出た林帆とヨルは、街に戻らずにそのまま北へ向かった。
槍は白金の輝きを放ち、確かに北を指している。背後からはもう賞金稼ぎの気配はしない。しかし、安心はできない。
「夜になる前に、ある程度距離を稼ごう」
林帆はヨルの手を引き、歩調を速めた。
荒地を抜け、小さな丘を越え、川を渡る。槍の光だけが頼りだ。
日が完全に落ちた頃、彼らは小さな森の入り口に辿り着いた。その時、背後から馬の蹄の音。
振り返ると、五人の騎手。昼間に賞金稼ぎの男もその中にいる。
「待て! 槍を置いて行け!」
林帆は無視して森の中へ走り込んだ。木々が視界を遮り、騎手たちは馬を降りて追ってくる。
「ヨル、先に進んで。ここで足止めする」
「でも…」
「大丈夫。すぐに追いつく」
ヨルはうなずき、森の奥へ走っていった。林帆は槍を構え、五人の男たちと向き合った。
「お前ひとりでどうにかできると思っているのか?」
賞金稼ぎが嘲笑う。林帆は答えず、槍に星の力を込めた。白金の光が闇を裂く。
「やってみろ」
最初の男が剣を振りかざして飛びかかる。林帆は槍で受け流し、その勢いで男の足を払う。男は倒れ、動けなくなる。
二人目が斧を振り下ろす。林帆は後ろに跳び、槍の柄で斧を打ち落とす。すかさず蹴りを入れ、戦闘不能にする。
三人目、四人目も同様に。最後の賞金稼ぎ――昼間の大柄な男だけが残った。
「てめえ…」
男が奥から短剣を抜く。しかし林帆は槍で短剣を弾き飛ばし、そのまま男の喉元に槍先を突きつけた。
「二度と追ってくるな」
男は青ざめてうなずき、仲間を連れて逃げ去った。
林帆は息を整え、ヨルの後を追った。森を抜けると、小さな泉。ヨルがそこで待っていた。
「終わった?」
「ああ。もう大丈夫」
彼は泉の水をすくって飲んだ。冷たくて美味しい。
その夜、泉のそばで野宿した。焚き火を囲みながら、槍の手入れをする。
「ねえ、この槍はどこまで連れて行くの?」
「さあ。でも、きっと大事な場所だろう」
彼は空を見上げた。星がまたたいている。
次の日、さらに北へ。道は次第に険しくなり、岩場が増える。
昼過ぎ、視界の先に何かが見えた。石造りの大きな門。周囲には何の建物もない。
「ここは…」
近づくと、門には古い文字。
『星の試練を越えし者のみ、この門を通れる』
林帆は槍を門にかざした。槍が光り、門が自ら開いた。
中は広場。中央に、大きな星の石版。周囲には無数の星の像。
「これが…槍の最終目的地か?」
石版に近づくと、表面に自分の名前が浮かび上がった。
『林帆よ、よく来た。これからお前に、星の最終試練を授ける』
声は、以前の女戦士のものだ。
「最終試練?」
『この石版に触れよ。お前の記憶、力、全てを試す』
林帆は深呼吸をし、ヨルを見た。彼女はうなずいた。
彼は石版に手を触れた。
次の瞬間、意識が真っ白になった。




