星輝の槍・覚醒
光が収まったとき、林帆は見知らぬ場所に立っていた。
そこは宇宙の中心。無数の星が周囲を巡り、銀河の渦が足元に広がる。そして、正面に立つ一人の女――全身が星の光でできた戦士。
「よく来た。星輝の槍を求める者よ」
女の声は冷たく澄んでいる。
「私はこの槍の真の守護者。お前に最後の試練を課す」
「どんな試練だ?」
「己の限界と向き合うことだ」
女が手をかざすと、林帆の体が勝手に動かなくなった。手足が縛られ、身動きが取れない。
「これまでお前は、他者を守るために戦ってきた。しかし、本当に守る価値のある者は誰だ?」
「それは…」
「自分を犠牲にしてまで守る者がいるか? 答えよ」
林帆の脳裏に、両親、老怪、ヨルの顔が浮かんだ。
「いる。ヨルは…俺が守ると約束した」
「ならば、その想いの強さを示せ。この縛めを、力ずくで断ち切れ」
林帆は全身の力を振り絞った。三力循環を最大速度で回す。八本の気脈が悲鳴を上げる。星の短剣、氷の剣、そして杖――全ての武器が共鳴し始めた。
がちん。
縛めにひび割れが入る。さらに力を込める。
ばきん。
ついに縛めが砕け散った。
「見事。お前は自分の弱さを認め、それでも他者を守る覚悟を持っている」
女の姿が徐々に薄れていく。
「これが本当の星輝の槍だ。受け継げ」
光の粒が槍に吸い込まれ、槍は銀色から黄金色に変わった。穂先からは無数の星の光。
林帆が槍を手に取ると、体中に力がみなぎる。これまでの比ではない。
「これが…新しい力」
気づくと、彼は元の台座の前に立っていた。槍はもう輝いている。
彼は槍を背負い、谷を後にした。
出口でガルムが待っていた。目を見開き、驚いた表情。
「まさか…本当に槍を手に入れたのか」
「ああ」
「信じられん…何十年もの間、誰も成し得なかったことを…」
ガルムはひざまずいた。
「俺はお前に何かを教えられる立場ではない。ただし、一つだけ忠告する。その槍は多くの者に狙われる。気をつけろ」
「分かっている」
林帆は家に戻り、ヨルと再会した。
「遅くなってごめん」
「ううん、おかえり」
ヨルは泣きそうな顔で笑った。
その夜、ガルムの家で二人は最後の晩餐を共にした。ガルムは旅の途中で役立つ知識をいくつか教えてくれた。
「この先の街には“闇の商館”という場所がある。そこでは情報や道具が手に入る。ただし、裏切られることもある。用心しろ」
「ありがとう。助かった」
翌朝、二人はガルムと別れ、槍の示す方角へ歩き出した。
次の目的地は――街。そしてその先にあるもの。
槍は黄金に輝き、新しい旅の始まりを告げていた。




