星の降りる朝
意識が戻ると、星の祭壇は静かに朝を迎えていた。
天井の星は一つひとつ消え、代わりに外の光が差し込む。林帆はゆっくりと立ち上がった。体は軽く、まるで生まれ変わったかのよう。
「ヨル、大丈夫か?」
「うん…わたし、泣いてたの?」
彼女の頬には涙の跡。覚えていないようだが、それだけ深いところで何かがあったのだろう。
「お疲れ。よく頑張った」
林帆は彼女の頭を撫で、祭壇の外へ歩き出した。
扉を開けると、黒い砂漠が広がっている。しかし以前とは違う。砂粒が朝日に輝き、まるで星のようだった。
「すべてを乗り越えた者のみに見える景色だ」
後ろから声がした。振り返ると、アストラムが立っている。彼の姿は以前よりずっとしっかりしている。
「あなたは…」
「私はこの祭壇の管理人。お前が闇を乗り越えたことで、私も本来の姿を取り戻した」
アストラムは杖を地面につき、微笑んだ。
「これでお前の修行は一段階終わった。次の目的地は決まっているのか?」
「まだ…でも、もっと広い世界を見たい」
「ならば、ここを東へ進め。海を越えた先に、別の大陸がある。そこにはさらなる試練と、さらなる力が眠っている」
「海を越える…」
林帆は少し考えた。今の自分なら、可能かもしれない。
「行くのか?」老怪が問う。
「行く。まだまだ強くなりたい」
彼はヨルの手を引いて、東へ向かって歩き出した。
その時、空から一筋の流星が落ちてきた。彼の目の前に止まり、光の粒となって散る。粒は林帆の体に吸い込まれ、新しい力を与えた。
「星からの贈り物だ。大切にしろ」
アストラムの声が遠くから聞こえる。
林帆は振り返らずに手を挙げた。礼の代わりに。
黒い砂漠を三日。途中、何度か魔獣に襲われたが、新しい力で簡単に撃退できた。
砂漠の果てに、青い海が広がっている。波は静かで、遠くに陸の影が見える。
「あれが次の大陸か」
「遠そうだね…」
「大丈夫。星の力を使えば、風を起こして船を進められる」
林帆は近くの倒れた木を集め、簡単ないかだを作った。ヨルと二人で乗り込み、海へ漕ぎ出した。
風が凪いでいる。代わりに彼は星の短剣で風の精霊を呼び寄せ、帆を膨らませた。
いかだはスイスイと進む。
「楽しい…!」
ヨルが初めて、心から笑った。林帆もつられて笑う。
夕暮れ時、いかだは次の大陸の砂浜に到着した。
そこは緑豊かな土地。見たことのない花が咲き、鳥がさえずる。
「ここが…新しい世界」
林帆は砂浜に降り立ち、深く息を吸った。
これから何が待っているのか分からない。しかし、もう怖くない。
自分は自分。闇も光も含めて、全てを受け入れたから。
「行こう、ヨル」
「うん!」
二人の足跡が、新しい砂浜に一筋、また一筋と刻まれていく。




