表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/112

残されたもの

あの惨劇から三日後、林帆は再び腐れ森の縁に立っていた。


足はまだ少し震えている。しかし、彼には確信があった――あの戦いの現場には、何かが残っているはずだ。強者たちが捨てていったもの、あるいは見落としたもの。


「危険を冒す価値はあると思うか?」老怪が問う。


「食べ物も薬草ももう底をつきました。このままじっとしているより、何か掴みたい」


彼は慎重に、あの爆発の跡地へ向かった。


木々はなぎ倒され、地面は黒く焦げていた。血の跡は雨で薄れているが、生々しい記憶を呼び覚ます。林帆は息を殺して、目を凝らした。


しばらく探して、彼は見つけた。


砕けた宝玉のかけら――あの黒い甲冑の男が持っていたものの一部らしい。親指ほどの大きさで、かすかに青白く光っている。


「触るな!」老怪の声が鋭かった。


林帆は手を引っ込めた。


「何ですか、これ?」


「“霊力貯蔵晶”の破片だ。それも上級品。お前のような未熟者が素手で触れば、中の残留エネルギーで指の一本や二本は軽く吹き飛ぶ」


「じゃあ、どうやって…」


「布で包め。それから、お前が練習しているあの微量な闘気で、そっと表面をなぞれ。同調すれば、あるいは安全に扱えるかもしれん」


林帆は震える手で、自分の服の裾を裂き、宝玉のかけらを包んだ。そして、人差し指からごく細い闘気を流す。


カッ…かすかに暖かな光が広がった。指は無事だ。


「よし。それを持って戻れ。運が良ければ、中のエネルギーをお前の循環に組み込めるかもしれない」


洞窟に戻る道すがら、林帆はもう一つ気づいた。戦場の隅に、捨てられた粗末なナイフ。刃こぼれしているが、まだ使えそうだ。


「これももらっておこう」


その夜、彼は初めて“武器”を手にした。


宝玉のかけらは、布に包まれたまま洞窟の奥に置いた。まだ触れる勇気はなかった。しかし、ナイフの柄を握りしめた感触が、妙に頼もしい。


「変わったな、お前」


老怪が言った。


「前のお前なら、恐怖で縮こまっていた。少なくとも、動けるようになった」


「動かなきゃ、死ぬだけですから」


林帆はナイフを振ってみた。風を切る音。たどたどしいが、素手よりはましだ。


「次は……これをどう使うか、ですね」


彼は的として、洞窟の壁に丸い印を彫った。ナイフを投げる練習もしよう。近づけなければ、飛ばせばいい。当たらなければ、何度も投げればいい。


凡人が生き残る術。それは、ただがむしゃらに続けること。


そして、少しだけ賢くなること。


その夜、彼は宝玉のかけらとナイフを枕元に置いて眠った。夢の中では、あの黒い甲冑の男が振り返って笑っていた。


「よく拾ったな」


林帆は目を覚ました。冷や汗でびっしょりだ。しかし、その手は確かにナイフを握っていた。


恐怖は消えない。だが、それと同時に「次は生き延びる」という執念も、しっかりと芽生えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ