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迷宮を抜けて

星の迷宮を出ると、外はもう夜だった。


振り返ると、入り口の黒い岩肌に星の紋章がかすかに輝いている。中での出来事が夢のように感じられた。


「長かったね…」ヨルがぽつりと言う。


「ああ。でも、終わった」


林帆は手にした星の石版とペンダントを確認した。これからもきっと役に立つ。


羅針盤はまだ北を指している。しかし、その先には何があるのか。


その時、遠くから馬の足音。一頭の白い馬に乗った騎士――シグリッドだ。


「やはり無事だったか。よく生きて帰った」


彼女は馬から降り、林帆の肩を軽く叩いた。


「迷宮で何を得た?」


「星の力…それと、次の目的地」


「どこだ?」


「もっと北、この世界の果てにあるという“星の祭壇”。そこに行けば、さらに深い真理に触れられるらしい」


シグリッドは少し考え込んだ。


「そこは、かつて私の師匠も探していた場所だ。しかし、行き方は分からなかった」


「羅針盤が示してくれる」


林帆はコンパスを掲げた。針が微かに震えながらも、確かに北を指している。


シグリッドはうなずき、腰から小さな革袋を外して手渡した。


「これを持っていけ。干し肉と薬草、それに多少の銀貨。長旅になるだろうから」


「ありがとう…必ず返す」


「いや、これは借りではない。恩返しだ。お前たちがこの地に平和をもたらしてくれたことへの」


彼女は馬に乗り、手を振って去っていった。


その夜、二人は迷宮の近くの岩陰で野宿した。焚き火を囲み、これからの話をする。


「ヨル、本当に最後まで付いてくるのか? これからもっと危険になる」


「うん。わたしはもう決めたの。林帆さんの役に立ちたいって」


彼女はしっかりとした目で答えた。


林帆は微笑み、彼女の頭を軽く撫でた。


「分かった。一緒に行こう」


翌朝、二人は北へ歩き出した。


雪原が終わり、今度は荒涼とした岩場。ところどころに枯れた草。風は冷たいが、空は晴れている。


羅針盤の針は変わらず北を指している。


道中、小さな遺跡を見つけた。崩れた石柱、苔むした石碑。かつて誰かが住んでいた跡。


「ここで少し休もう」


林帆が石碑の文字を読むと、古い言葉でこう記されていた。


『星の祭壇に至る者は、三つの試練を乗り越えよ。第一は迷宮、第二は氷の山脈、第三は――』


そこから先は風化して読めない。


「氷の山脈…つまり、まだ越えなきゃいけない山があるのか」


「でも、迷宮を抜けられたんだ。きっと大丈夫」


ヨルの言葉に、林帆はうなずいた。そうだ。ここまで来た。次も乗り越えられる。


彼は石版と羅針盤を手に、立ち上がった。


「さあ、行こう。次の山を目指して」


二人の影が夕日に長く伸びる。


まだ遠い。しかし、確実に前に進んでいる。

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