星の迷宮・入口
老女の小屋を出てから半日。
雪原の果てに、黒い岩肌が露出した丘が見えてきた。その麓にぽっかりと口を開けた洞窟。入り口の両脇には、朽ちた星の紋章。
「ここが…星の迷宮か」
林帆は氷の剣を構え、慎重に近づいた。羅針盤は北を指したまま。しかし針が微かに震えている。危険が近い証拠かもしれない。
「ヨル、絶対に離れないで。何があっても俺の後ろに」
「うん」
彼女は首飾りの月の護符を握りしめた。かすかに白い光が灯る。
二人は洞窟の中へ足を踏み入れた。
中は思ったより広く、天井は高く、壁には無数の星の絵。ところどころに青白く光る鉱石が埋め込まれ、足元を照らしている。
「幻想的だな…」
しかし、その美しさとは裏腹に、空気は張り詰めている。一歩進むごとに、かすかなプレッシャーが強くなる。
十歩ほど進んだとき、突然、壁の星の絵が光り出した。光が集まり、一つの人影を形作る。
それは鎧を着た戦士の姿。剣と盾を持ち、目は虚ろ。
「侵入者よ…ここはお前たちが来る場所ではない」
戦士が機械的な声で言う。
「星の試練を望むなら、我を倒せ」
林帆は調和の剣を抜いた。「望むところだ」
戦士が盾を構え、突進してくる。林帆は横に跳び、背後から氷の剣で斬りつけた。しかし戦士の体は硬く、刃が浅い。
「物理攻撃は通じにくい…ならば!」
彼は調和の剣に火の力を込め、正面から打ち込んだ。火花が散り、戦士の胸当てが歪む。
「ギャア…」
戦士が後退する隙に、林帆は氷の剣に星の力を集めた。刃が輝き、無数の星屑が剣先から飛び散る。
「これで終わりだ!」
一閃。星の光が戦士を包み込み、鎧は粉々に砕け散った。戦士の姿は光の粒となって消える。
代わりに、床に小さな星型の鍵が落ちていた。
「これが…次の扉を開ける鍵か」
林帆は鍵を拾い上げ、先へ進む。
さらに奥へ。分かれ道が三つ。それぞれに違う星の印が刻まれている。
「どっちだ?」
羅針盤は震えたまま。はっきりとした方角を示さない。ヨルが月の護符を掲げると、護符がかすかに左の道を照らした。
「こっち…気がする」
「よし、左だ」
二人は慎重に道を選び、進み続けた。
背後からは遠吠えのような風の音。正面からは冷たい息吹。
迷宮はまだまだ深い。しかし、二人の手には星の鍵と月の灯りがある。
何とか抜け出せるはず。
そう信じて、一歩を踏み出した。




