星の導き
氷の巨人を倒してから二日。
谷間を抜けると、視界が開けた。一面の雪原。その先に、ぽつんと一軒の石造りの小屋。煙突からは煙が立ち昇っている。
「誰か住んでいるのか?」
林帆はヨルに注意しながら近づいた。ドアをノックすると、中から白髪の老女が出てきた。目はくりっとした青い瞳。背中は曲がっているが、その目つきは鋭い。
「旅の人かい? こんな辺境に来るなんて珍しい。上がりな」
二人は招かれ、中に入った。暖炉には火が燃え、部屋は暖かい。壁にはびっしりと本棚。天井には星の絵。
「おばあさんは、ここで一人で?」
「そうさ。もう何十年もね。星を見るのが生きがいでね」
老女は林帆の背中の氷の剣を見て、目を細めた。
「それは…星の剣か。昔、一人の修行者が持っていたものだ。まさか、また現れるとは」
「ご存じなんですか?」
「少しだけな。その剣は、星の力を使う。ただし、使いこなすには“星の位置”を読めるようにならなきゃいかん」
老女は本棚から一冊の星図を取り出し、広げた。
「今夜は特別な夜だ。北極星が最も輝く時。その光を剣に取り込めば、さらなる力が得られるだろう」
「どうすれば?」
「外に出て、剣を空にかざせ。それだけでいい」
その夜、林帆は小屋の外に出た。空は満天の星。特に北の星がひときわ明るい。
彼は氷の剣を抜き、両手で構えて天にかざした。
剣が震え始める。星の光が一筋、剣に吸い込まれていく。刃の中の星が一つ、また一つと増えていく。
「これは…」
体の中の三力循環が、剣と共鳴しているのが分かる。まるで体内にも星が生まれたかのよう。
光が収まったとき、氷の剣の輝きは以前よりずっと深くなっていた。刃の中には無数の星がきらめいている。
「これで…お前も星の使い手の仲間入りだ」
老女は満足そうにうなずいた。
「その力を使いなさい。正しい道のために」
翌朝、林帆とヨルは小屋を後にした。老女は見送りに立っていた。
「気をつけて。この先には“星の迷宮”がある。かつて多くの修行者が挑んだが、生きて帰った者は少ない」
「それでも行きます」
「そうか。ならば、これを貸そう」
老女は小さな首飾りをヨルに渡した。月の形をしたペンダント。
「これは“月の護符”。暗闇でも光を放ち、迷子にならないように導く」
ヨルは大事にそれを首にかけた。
「ありがとうございます」
「またいつでもおいで。星の話を聞かせておくれ」
二人は雪原を歩き出した。羅針盤は北を指している。その先には星の迷宮。未知の危険と、さらなる力が待っている。
林帆は氷の剣の柄を握りしめた。星の力が体内で脈打っている。
「行こう。まだまだ道は続く」




