凍てつく神殿への道
雪狼の群れを倒してから二日。
天気はますます厳しくなり、吹雪が視界を遮る。林帆はヨルの手を引き、一歩一歩慎重に進んだ。
「羅針盤は?」
「大丈夫。まだ北を指している」
シグリッドから借りたコンパスは、凍りつきそうになりながらも正確に方角を示している。赤くは光っていない。今のところ危険はなさそうだ。
その時、足元の雪が突然崩れた。
「危ない!」
林帆は反射的にヨルを抱き寄せ、横に飛んだ。二人が立っていた場所は、深い雪の穴へと変わっていた。底は見えない。
「あぶなかった…」
「ありがとう…」
ヨルの顔は青ざめているが、何とか踏みとどまった。
その穴を迂回し、さらに進むこと一時間。視界の先に、ようやく何かが見えてきた。
それは石造りの門。二本の柱が立ち、その間に分厚い氷の壁。氷の向こうには、さらに大きな建物の影。
「ここが…凍てつく神殿の入り口か?」
林帆が近づくと、氷の壁がかすかに震え、声を発した。
「よく来た、修行者よ」
「なにっ!」
彼は短剣を抜いたが、氷は攻撃してこない。
「私はこの神殿の守護者。長い間、誰もここを訪れなかった」
「通りたいのです。さらなる力を求めて」
「ならば、試練を乗り越えよ」
氷の壁が左右に割れ、中へ続く通路が現れる。中はさらに寒く、息をするたびに白い靄が立ち込める。
「ヨル、ここで待っていてくれ」
「でも…」
「大丈夫。すぐに戻る」
彼はヨルを門の外に残し、一人で通路を進んだ。
十歩、二十歩。行き止まりにぶつかった。壁には三つの穴。それぞれに手を入れるようになっている。
「三力の試練か」
彼は両手を二つの穴に入れ、さらに額を三つ目の穴に当てた。闘気、霊力、血脈の熱。三つを同時に流し込む。
壁が光り、空間が歪んだ。次の瞬間、彼はまったく別の場所に立っていた。
そこは広い神殿の内部だった。天井は高く、床には氷の鏡。中央に、氷でできた台座。その上に、一振りの剣。
氷の剣。刃は透明で、内部に星のような光がきらめいている。
「これを…くれるのか?」
『試練を乗り越えた者に与えられる。ただし、この剣を使いこなすには、さらに深い修行が必要だ』
氷の剣は自ら台座から浮き上がり、林帆の前に漂う。彼はそっと柄を握った。冷たいが、手に馴染む。
「これは…調和の剣とはまた違う」
『五行の力ではなく、氷と星の力を宿している。使いこなせば、さらなる高みへ』
林帆は礼を言い、氷の剣を背中に背負った。
神殿を出ると、ヨルが今にも泣きそうな顔で立っていた。
「遅かった…もう帰ってこないかと思った」
「ごめん。でも、これを見てくれ」
氷の剣を抜いて見せると、ヨルの目が輝いた。
「きれい…」
「ああ。これでまた少し強くなれた」
羅針盤を見ると、針はまだ北を指している。しかし、赤くは光っていない。
「さあ、次へ行こう」
二人は吹雪の中へ再び歩き出した。
背中の氷の剣が、かすかに星の光を放っている。




