表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/112

黒衣の魔術師

風が止んだ。


林帆と黒衣の男が向き合う。塔の影が長く伸び、周囲の空気が張り詰める。


「お前のような小物が、よくここまで来たものだ」


男の口元に冷笑が浮かぶ。「しかし、それまでだ」


杖を振ると、地面から無数の黒い蔦が生え、林帆の足に絡みつく。


「ぐっ…!」


彼は調和の剣で蔦を断ち切る。五行の金の力を込めた刃は、闇を裂くように鋭い。


「おや? なかなかやる」


男が次の呪文を唱える。今度は上空から黒い雨。一筋一筋が針のように鋭い。


林帆は素早く後退し、五行の土の力で一時的な壁を作る。黒い針は壁に突き刺さるが、届かない。


「受け身ばかりでは勝てないぞ!」


男が叫び、直接杖で打ち込んできた。林帆は短剣で受け止める。ギイインという金属音。力は互角。


「なぜ…なぜお前のような雑魚が俺と同等の力を…!」


「それはお前が闇に頼りすぎているからだ」


林帆は一気に間合いを詰め、五行の火の力を短剣に込めて横薙ぎに振るった。


男は杖で防ぐが、炎が杖に燃え移る。黒い石が嫌な悲鳴を上げた。


「この…!」


男が後退しながら、手にした黒い石を林帆に向けて掲げる。次の瞬間、林帆の体が急に重くなった。まるで全身が鉛になったかのよう。


「この石は…重さの呪い…!」


「そうだ。これでお前は一歩も動けまい」


男がゆっくりと近づき、とどめを刺そうとする。


その時、地面に横たわっていたヨルが突然起き上がった。


「や…めろ…」


彼女のかすかな声。しかしその両手から、黒い靄が放たれる。それは男の手にある黒い石に吸い込まれた。


「なにっ!」


石が揺れ、ひび割れた。重さの呪いが解ける。


林帆はその隙に全力で飛び込んだ。調和の剣に五色の光を集め、男の杖を真っ二つに斬る。


「終わりだ!」


さらに、刃を男の喉元に突きつける。


男は地面に崩れ落ち、悔しそうに林帆を睨みつけた。


「なぜ…なぜお前は負けない…」


「負けない理由があるからだ」


林帆は男の懐から黒い石を取り上げた。石は鈍く光っているが、もうそれ以上の力は感じられない。


「この呪いをどうやって解くか教えろ」


「教えると思っているのか?」


「教えなければ、この石を粉々にする」


短剣で石を削ると、男の顔が歪む。


「…分かった。教えてやる。ただし、見逃せ」


「それでいい」


男が解呪の方法を呪文とともに伝える。林帆はそれを頭に刻み込んだ。


「さあ、消えろ。二度と俺の前に現れるな」


男はよろよろと立ち上がり、荒野の彼方へ消えていった。


林帆はヨルのところに駆け寄り、早速解呪を始めた。


黒い石を両手で挟み、五行の力を順番に流す。火、水、木、金、土――五つの光が石を包み、ヨルの体内の黒い靄を吸い出し始める。


「うっ…」


ヨルが苦しそうに身をよじる。しかし靄は確実に減っていく。


十分後、最後の靄が石に吸い取られた。ヨルの目が、普通の黒い瞳に戻っている。


「終わった…」


林帆は力尽きてその場に座り込んだ。


「ありがとう…林帆さん」


ヨルが初めて、はっきりと微笑んだ。


空には星が出ていた。長い一日が終わろうとしている。


塔の中には、まだ何があるのか分からない。しかし今はただ、この静かな夜に身を委ねたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ