闇の本体
あの夜から三日。
林帆とリュウカは、黒い欠片の手がかりを追って町の中を探り続けた。欠片はかすかに同じ方向へ霊気を放っている。北西――町はずれの古い墓地の方角だ。
「あそこが本体の居場所かもしれない」
リュウカは剣の柄を握りしめ、警戒しながら歩く。林帆も調和の剣に常に霊力を込め、いつでも抜けるようにしていた。
墓地に着いたのは、日が暮れかけた頃。朽ちた墓標が無数に立ち、所々から青白い燐光が浮かんでいる。
「気をつけて。ここは霊気が淀んでいる」
老怪の警告が頭に響く。林帆は霊視を最大まで広げ、周囲の気配を探った。
中央の大きな墓の下。そこから最も強い闇の霊気が漏れている。
「あの中だ」
二人は慎重に近づき、墓石を押しのけた。下には石の階段。暗く、底が見えない。
「行くぞ」
林帆が先頭に立ち、短剣を構えて降りていく。リュウカが続く。
十歩、二十歩。ようやく底に着くと、そこは広い地下空間だった。壁には無数の骨が積み上げられ、天井からは何かが滴り落ちる音。
そして、中央にどろりと黒い塊がうごめいている。人の形ではない。不定形の闇。
「吸魂鬼の本体…」
塊から無数の触手が伸び、二人に向かって襲いかかる。
林帆は調和の剣で触手を切り裂く。五行の炎を込めた刃は、闇を焼き焦がしながら進む。
しかし、切っても切っても新しい触手が生えてくる。
「リュウカ、本体を狙え!」
「分かってる!」
リュウカが地面を蹴って飛び上がり、塊の中心めがけて剣を突き立てた。しかし、闇は剣を飲み込み、弾き返す。
「効かない…!」
林帆は首から下げた玉を握った。五つの破片が合わさった玉は、かすかに震えている。
『三力同源・五行の極意――全ての闇を浄化せよ』
玉から放たれた光が、地下空間を満たした。林帆の体から、五色の光が放射される。
火の赤、水の青、木の緑、金の白、土の黄。
五つの光が渦巻き、黒い塊を包み込む。
「ギャアアアア!」
悲鳴。塊が縮み、弾け、そして――消えた。
全てが終わった後、そこには小さな黒い石だけが残されていた。
「これが…核か」
林帆は石を拾い上げた。触れると冷たく、吸い込まれそうな感覚。
「持っていなさい。役に立つかもしれない」
リュウカが静かに言った。「私はこれで町を出る。あなたはこれからどうする?」
「北へ行く。もっと強い者に会うために」
「そう。気をつけて」
彼女は軽く手を振り、階段を上っていった。
林帆は地下空間を最後に見渡し、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れた。
外はもう朝だった。夜が明け、新しい一日が始まっている。
彼は黒い石を収納指輪にしまい、再び北への道を歩き出した。




