表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/112

覆面の剣士

女の剣が鞘を抜かれ、陽光に白く輝いた。


林帆は短剣を構えながらも、殺気は感じなかった。むしろ、試すような目つき。


「やるのか?」


「あなたが退かないなら、ね」


彼女が踏み込んだ。速い。風のように間合いを詰め、袈裟懸けに一閃。


林帆は調和の剣で受け止める。カンという甲高い音とともに、痺れが腕を駆け抜ける。


「なかなか」


「まだまだ」


彼女はさらに二撃、三撃と連続で叩き込む。すべてを受けきったが、後ろに数歩下がっていた。


「ふうん…三力同源の使い手か。珍しい」


彼女が初めて感心したような声を出した。


「どこでそれを覚えた?」


「この森の中で」


「なるほどね」


女は剣を収めた。戦意が消えた。


「通っていいわ。ただし、一つの条件を呑みなさい」


「条件?」


「この先の“砦の町”で起きている失踪事件を調べてほしい。私はそれを追っているの。でも、一人じゃ手が足りない」


「なぜ俺に?」


「三力を使える人間は、普通の修行者より適応力が高い。それに――あなたの目は諦めていない」


林帆は少し迷った。しかし、このまま町に入っても、何が起こっているか分からない。協力するのも悪くない。


「分かった。ただし、無茶はしない」


「よし。私はリュウカ。よろしく」


「林帆です」


二人は並んで歩き出した。砦の町の壁が、だんだんと大きく見えてくる。


「町に着いたら、まずは情報収集からだ。失踪は主に夜、宿の外を歩いている人が狙われている」


「夜か…」


林帆は無意識に首の玉を握った。もしかすると、これが関係しているかもしれない。


町の門に着いたとき、日はもう傾きかけていた。門番が二人を一瞥し、無言で通す。


中は意外と活気があった。屋台が並び、人々が行き交う。しかし、よく見ると皆、どこか慌ただしい。


「宿を取ろう。日が暮れる前に」


リュウカに連れられ、古びた宿屋に入る。女将は渋い顔をしたが、金貨一枚でにっこり笑った。


部屋に通され、林帆は窓から外を見た。日が完全に沈めば、犯人が動き出す。


「今夜は俺が外を見張る。あなたは休んでいてください」


「協力するって言ったでしょう。私も行きます」


リュウカはフードを深くかぶり直し、剣を握りしめた。


外は暗くなり、街灯がぼんやりと道を照らしている。二人は宿の屋根の上に身を潜め、息を殺した。


深夜二時。


かすかな物音。道の向こうから、一人の男がふらふらと歩いてくる。酔っ払いか。


次の瞬間、道端の影が突然動いた。人の形をした黒い影が、男に覆いかぶさる。


「今だ!」


林帆とリュウカが同時に飛び降りた。


影は彼らに気づき、男を放り出して路地へ逃げ込む。


「追え!」


二人は暗い路地を駆け抜けた。影は素早いが、三力を使う林帆はすぐに追いつく。


行き止まりで、影が振り返った。


それは人の形をしていたが、目はなく、口だけが大きく開いている。


「なんだ、ありゃ…」


「吸魂鬼だ。人の魂を吸って生き長らえる化物」


リュウカが剣を抜いた。「私が引きつける。あなたは背後から――」


しかし、吸魂鬼は先に動いた。鋭い爪がリュウカの首を狙う。


林帆は調和の剣に五行の炎を込め、横合いから斬りつけた。


シューッ。


触れた瞬間、吸魂鬼は悲鳴を上げて弾け飛んだ。黒い煙となって消える。


「…終わったのか?」


「こいつは分身のようだ。本体は別の場所にいる」


リュウカは地面に落ちていた黒い欠片を拾い上げた。


「これが手がかりになる。とりあえず今夜はここまで」


林帆は欠片を見つめた。かすかに霊気を放っている。これもまた、何かの力の一部なのだろう。


その夜、彼は眠れなかった。


この世界には、まだ見たことのない存在が溢れている。


それらと向き合うために、もっと強くならねば。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ