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初めての循環

翌日、目を覚ますと全身が鉛のように重かった。左の手首には、狼の牙がかすった跡。消毒もしないまま眠ってしまった。


「生きているのが不思議なくらいだ」


老怪の声は相変わらず皮肉っぽい。


「だが、お前は運がいい。あの赤い線――あれは間違いなく血脈の萌芽だ。生まれつき塞がっていたものが、無理やり開きかかっている」


林帆は左手の甲を見た。うっすらと浮かぶ赤い線は、昨日よりわずかに濃くなっている。


「これが……血脈?」


「萌芽に過ぎない。獣の血を一滴も吸っていない、貧弱なものだ。しかし、お前のような凡人の体でここまで来たのは、我も初めて見た」


老怪は続ける。


「これからの方針を変えるぞ。三つの力を同時に回すのはまだ無理。まずは“闘気→霊根→血脈”の一方通行を安定させろ。一方向だけでいい。それで循環は生まれないが、少なくとも戦闘時に一発は頼りになる」


林帆はうなずいた。そして三日間、ただそれだけを繰り返した。


左手の甲から血脈の熱を感じ取り、それを胸の中心へ集め、そこから闘気を生み出し、水霊根へ流す。そしてそのまま外へ放出――ただの直線的なエネルギーの流れ。しかし、それを止めずに持続することが、今の彼の目標だった。


四日目の夜。


とうとう、三秒間だけ流し続けることに成功した。


「よし。それで十分だ。次はこれを“当てる”練習をする」


老怪が洞窟の壁に簡単な的を描いた。三メートル先。


「手をかざせ。ただ流すんじゃない。撃ち出すイメージだ」


林帆は息を整え、右手を伸ばした。闘気を集め、水霊根を通し、掌から――


パチン!


乾いた音とともに、空気が微かに震えた。的には届かなかった。しかし、掌から何かが放たれたのは確かだった。


「惜しい。あと半分」


その夜、狼の遠吠えが聞こえた。昨日の連中かもしれない。林帆は身構えたが、洞窟の入り口を塞いだ岩が揺れることはなかった。


「まだだ……まだ足りない」


彼は拳を握りしめた。明日もまた練習する。明後日も。百回外しても、一回来ればそれでいい。


凡人は、そうやって這い上がるしかないのだから。

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