追跡
あの日から、林帆は青いローブの男を密かに観察し続けていた。
直接近づくのは危険すぎる。しかし、霊視を使えば遠くからでも男の動きを追える。男が放つ強い霊気は、暗闇の中の松明のように目立っていた。
男は主に東の地域――あの湖の周辺をうろついている。時折立ち止まり、地面を調べ、何か探し物をしている様子だ。
「やはり玉片を探しているのか?」
「おそらくな。しかし、あの男が持っている破片は一つだけのようだ」
林帆は男が寝ている隙を見計らって、彼の通った跡を調べた。足跡の他に、時折小さな紙切れが落ちている。メモのようなものだ。
ある日、思い切ってその紙切れを拾い上げた。
『三力同源の遺跡、湖の東南にあり。ただし結界が強く、単独では突破困難』
「結界…あの湖か?」
「あの男ですら突破できないとなると、かなり強力なものだろう」
林帆はしばらく悩んだが、一つの決断をした。男が諦めて去るのを待つか、それとも自分が先に何とかするか。
彼は日記と古地図を再度精読した。すると、『修行雑記』にこんな記述があった。
『湖の結界は“五行の順”で解ける。周囲にある五つの石柱を正しい順序で押せば、一時的に扉が開く』
翌朝、林帆は男が東へ去ったのを確認し、急いで湖へ向かった。
湖の周辺には確かに五つの石柱が立っていた。それぞれに、うっすらと文字が刻まれている。火、水、木、金、土。
「五行の順…火生土、土生金、金生水、水生木、木生火。この順番か?」
彼は火の柱、土の柱、金の柱、水の柱、木の柱の順に手を当て、それぞれに微量の霊力を流し込んだ。
五本目の柱を押した瞬間、湖面が大きく波打ち、中央に渦が現れた。渦の中から、石の階段が姿を現す。
「行ける!」
林帆は周囲を警戒しながら、階段を下りていった。
中は広い空間だった。壁には古代の壁画。床には幾何学模様の陣。そして、中央の台座に、淡く光る玉片――彼が持っているものよりもさらに大きい。
「これが…四つ目」
彼が近づこうとしたその時、背後から足音が聞こえた。
「やはりお前か」
振り返ると、青いローブの男が立っていた。口元には冷笑。
「ずっと気づいていた。お前がこの辺りをうろついているのをな」
林帆は全身の毛が逆立つのを感じた。
「お前は…」
「玉片を寄越せ。そうすれば命だけは助けてやる」
男の手から鋭い霊気が放たれる。殺気だ。
林帆は短剣を抜いた。調和の剣。まだ男に勝てるとは思えない。しかし、ここで渡せば全てが終わる。
「やれるもなら、やってみろ」
彼は八本の気脈を全て開放し、三力を最高速度で回した。




