霊力を込めて
新しい玉片の破片が教えた方法――それは、武器に霊力を通して切れ味を一時的に高めるというものだった。
翌朝、林帆は早速試してみることにした。
まず短剣を手に取り、深呼吸をする。三力循環から微量の霊力を引き出し、刃の方へゆっくりと流し込んだ。
じわ…じわ…
刃がかすかに青白く輝き始める。これまでにない感覚だ。まるで刃が息をしているかのよう。
「よし…これで」
彼は目の前の太い枝を振り下ろした。
すっ。
刃はまるで豆腐でも切るかのように、枝を真っ二つにした。抵抗はほとんどない。
「すごい…」
「おおっ、なかなかやるじゃないか」老怪も感心した様子だ。「ただし、霊力の消費は馬鹿にならない。短時間しか持たないぞ」
林帆は何度か試した。刃を光らせるのに、一回につき体内の霊力の一分の一を消費する。最大で十回も持たない。
「切り札として使うか…」
その日は終日、霊力を武器に込める練習をした。徐々に消費量を減らし、より長く持たせるコツを掴んでいく。
三日後、同じ霊力量で十五回は切れるようになった。
「よし。そろそろ獣人のところに戻るか」
彼は短剣を腰に差し、再び南へ向かった。
あの場所に着くと、獣人たちの痕跡はすでに薄れていた。死体はどこかに運び去られたらしい。しかし、新しい足跡が別の方向へ続いている。
「追うか?」
「慎重にな」
林帆は足跡を辿り始めた。三十分ほど進むと、小さな洞窟の入り口に行き当たった。中からは獣人の唸り声と、かすかな金属音が聞こえる。
「何人いる?」
霊視で探ると、五匹。前回よりも多い。しかし、その中の一匹だけが、他のより明らかに強い霊気を放っている。
「ボスがいるな。気をつけろ」
林帆は入り口の脇に身を隠し、様子をうかがった。彼らは何かの作業をしている。金属を打っている音だ。
「武器を作っているのか?」
「かもしれん。しかし、あのボスの腰にも…何か光るものが見える」
よく見ると、ボスの腰の革袋から、かすかに青白い光が漏れている。玉片の破片だ。
「あれを持っている」
「そう簡単には渡さないだろうな」
林帆は作戦を練った。まずは数匹をおびき出し、一匹ずつ片付ける。
彼は洞窟の入り口から十メートルほど離れた場所に罠を仕掛けた。つるで簡単な足絡めを作り、その先に黒狼の牙を尖らせて置く。
そして、石を投げて洞窟の中に音を立てた。
ガラガラ…
獣人の一匹が様子を見に外に出た。罠にかかり、足を取られる。その瞬間、林帆は背後から短剣を突き立てた。
二匹目も同様に。
三匹目は気づいてしまい、まっすぐに飛びかかってきた。しかし、霊力を込めた短剣で一振り――鎧のように硬い獣人の皮も、簡単に裂けた。
残るはボスと、もう一匹。
ボスが吼えた。低く、重い声。洞窟全体が震える。
「来るぞ!」
ボスが飛び出してきた。他の獣人より二回りは大きい。手には粗末だが鉄の斧。
林帆は防御に徹した。正面からぶつかっても勝ち目はない。避けて、かわして、隙を見て短剣を入れる。
三合、五合、七合。
徐々にボスの動きが鈍る。肩と太ももに傷を負っている。
「今だ!」
林帆は渾身の力を振り絞り、霊力を刃の先に集中させた。そして、ボスの喉を狙って一閃。
どさり。
巨体が地面に倒れた。
「はあ…はあ…」
彼はボスの革袋を奪い、中を確認した。あった。玉片の破片。今度は親指ほどの大きさ。
さらに、洞窟の奥に積まれた品々の中から、古びた鉄の鎧も見つけた。ボロボロだが、修復すれば使えるかもしれない。
「収穫は上々だ」
林帆は急いでその場を離れ、小屋へと戻った。
その夜、新しい破片を合わせると、今度はさらに詳しい“三力融合”の術が浮かび上がってきた。
『三力を円環と為し、体中を巡らせば、肉体は鋼の如く――』
「これでまた一歩、前に進める」
彼は満足げに、短剣の手入れをしながら眠りについた。




