書の示す道
古戦場から戻ったその夜、林帆は祠で見つけた書物を開いた。
『三力融合・基礎編』――著者は名乗っていないが、字は丁寧で、ところどころに図が入っている。
「まずは三力の定義を理解せよ。霊力は天地に満ち、万物を生かす。闘気は体内に宿り、血肉を駆る。血脈は祖先より継がれ、限界を破る」
彼はうなずきながら読み進めた。今まで実感として知っていたことが、言葉になって腑に落ちる。
続いて、具体的な訓練法。
「第一段階:一力専修。最も感じやすい力を選び、それを極めよ」
林帆は少し迷ったが、自分は既に三力を少しずつ回している。しかし書物は言う。基礎がないまま三力を回すのは、砂の上に家を建てるようなものだと。
「つまり、今のお前は間違った順序で進んでいたわけだ」老怪が言う。
「でも、もう三力で回せてますよ?」
「回せてはいる。だが、一つ一つの力の深みが足りない。書物の言う通り、まずは一力を極めるべきだ」
林帆は歯を食いしばった。今までの努力が無駄になる気がして、悔しい。
しかし、書物を読めば読むほど、その論理の正しさがわかる。
翌日から、彼は修行のやり方を変えた。
まずは闘気だけ。全身の闘気を一箇所に集め、体中をくまなく巡らせる。それだけをひたすら繰り返す。
三日目。闘気の量が倍になった気がする。
五日目。拳を振ると、風を切る音が変わった。
七日目。ついに、闘気だけで岩にひびを入れられるようになった。
「これが…一力専修の成果か」
「まだまだだ。書物には『一力を極めし者は、岩を砕き、鉄を曲げる』とある。お前はまだひび割れレベルだ」
林帆は笑った。その通りだ。しかし、進んでいる実感がある。
次は血脈。書物に従い、左手の赤い線を全身に広げる訓練。
これは闘気よりずっと難しかった。三日やっても、赤い線は胸の中心から動かない。
しかし、七日目、ついに線が右肩に向かって伸び始めた。
「遅いが、確実に前に進んでいる」
その夜、彼は書物を閉じて、外の星を見上げた。この道は長い。しかし、正しい道を歩いているという確信があった。
明日からは霊力。天地から霊力を集め、体内に取り込む訓練。
それにはまず、この森の中で最も霊気が濃い場所を探さなければ。
彼は地図を広げ、次の目的地を指でなぞった。




