表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/112

新たな一歩

黒狼のボスを倒してから三日。


林帆はその間、滝壺での修行に専念した。傷はほとんど癒え、体内の三力循環はさらにスムーズになっている。今では七呼吸で一周できる。


「そろそろ金霊花を使う時だ」


老怪の助言で、彼は収納指輪から黄色い花を一株取り出した。金霊花――霊力を直接高める効果がある。ただし、使い方を間違えれば逆に気脈を傷める。


「まずは花びらを一枚だけ。噛みしめて、そのまま循環に乗せろ」


林帆は言われた通りにした。花びらは苦い。しかしすぐに、全身が熱くなる。循環が勝手に加速し始める。


五呼吸で一周。三呼吸で一周。そして――


一呼吸で一周。


その瞬間、体内の三色の光が一瞬だけ、ひとつの明るい光に変わった。


「今だ!その状態を覚えろ!」


林帆は必死に感覚を記憶しようとした。しかし、その光は三秒と持たなかった。循環は元の速度に戻る。


「どうだった?」


「一瞬だけ…三つが本当に一つになりました」


「それが“三力同源”の片鱗だ。この感覚を積み重ねれば、いずれ常時その状態を保てる」


彼は残りの金霊花を大事にしまった。今は一枚で十分だ。


その夜、滝の裏の壁にもう一度向き合った。体・気・神。この三つをさらに高める方法はないか。


壁の文字をもう一度読んでいると、以前は気づかなかった行が目に入った。


『体を極めし者は岩を砕き、気を極めし者は風を斬り、神を極めし者は万里を知る』


「神…つまり精神力を鍛えれば、遠くの物事も視えるようになるのか?」


「理論的にはな。お前の霊視もその一種だ。まだ数メートル先だが、いずれはこの森全体を視渡せるようになる」


林帆はその日から、神の訓練に時間を割くことにした。滝の裏で座禅を組み、徐々に視界を広げていく。


三日後、彼は洞窟から百メートル先の霊気の流れを視られるようになった。十日後には五百メートル。半月後には――


森の東の果てに、かすかながら人の形が見えた。


誰かがこっちに向かって歩いている。しかも、かなりの速度で。


「老怪、人が来ます」


「隠れろ。敵か味方かわからん」


林帆は滝の裏に身を潜め、息を殺した。


数分後、一人の男が滝壺の前に現れた。青いローブをまとい、腰には長剣。目つきが鋭い。


男は周囲を見回した後、滝壺の中を覗き込んだ。


「だれか、ここに住んでいたのか?」


独り言のように言い、しばらくして去っていった。


林帆は冷や汗をかいていた。あの男、自分よりはるかに強い。霊視で見ると、全身が強い光を放っていた。


「あれは…修行者なんですね?」


「ああ。お前が今まで見たどの存在よりも強力だ。まだ関わるな」


その夜、彼はなかなか眠れなかった。この森の中にも、自分以外の人間がいる。しかも、自分よりはるかに強い。


恐怖と同時に、闘志も湧いてきた。


いつか、あのレベルに追いつく。そして、追い越す。


その決意を胸に、彼は朝まで循環を回し続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ