三度目の試み
腐霊草を手に入れてから十日。
林帆はその間、一度も洞窟の外に出なかった。二力循環の完全安定に集中するためだ。
今では五呼吸で一周できる。血脈の赤い線は肘を超え、肩まで達している。左手全体がかすかに温かい。
「そろそろ“三力”に挑戦してもいい頃だ」
老怪の言葉に、彼は深呼吸をした。今までは闘気と血脈の二つだけ。今回はそこに、宝玉のかけらから吸い取った霊力を加える。
準備はできていた。
まず、二力循環を最高速度で回す。三周したところで、左手の布袋から微量の霊力を吸い上げた。
三つの力が胸の中心で出会う――
どんっ!
内側から衝撃が走った。呼吸が一瞬止まる。しかし、前回のような激しい痛みはない。
「回せ。ゆっくりでいい」
林帆は歯を食いしばり、三つの力を一つずつ順番に動かした。闘気→霊力→血脈→再び闘気。最初はぎこちないが、三十分後には小さな三角形の循環ができあがった。
一回転するのに百呼吸。遅い。しかし、確かに回っている。
「成功…した?」
「まだまだ不安定だ。しかし、零ではない。これから毎日続けろ」
その日から、彼の修行は三力循環が中心になった。
三日目。百呼吸から九十呼吸に短縮。
七日目。五十呼吸に。
十五日目。ついに三十呼吸で一周できるようになった。
その間、体にも変化が現れた。左手の甲の赤い線が、今度は右手にも薄く浮かび始めたのだ。両方の腕が温かい。
「血脈が全身に広がっている…」
「ああ。このまま三力循環を極めれば、いずれ全身の血脈が目覚めるだろう。ただし、まだまだ時間がかかる」
林帆は満足げにうなずいた。
その夜、彼は久しぶりに霊視で周囲を観察した。すると、洞窟から東へ向かう霊気の線が、以前よりもずっと太くなっていることに気づいた。
「あの方向…何か変わったのか?」
「もしかすると、どこかで霊宝が成熟したか、あるいは地脈の流れが変わったか。行ってみるか?」
林帆はナイフを手に取り、立ち上がった。
「行ってみます」
東へ四十分。辿り着いたのは、小さな滝だった。高さは五メートルほど。水量は多くないが、滝壺の水がうっすらと光っている。
「これは…」
「霊水の滝だ。下級だが、銀葉参の次くらいの効果がある。毎日浴びれば、血脈の成長がさらに加速する」
林帆は服を脱ぎ、滝壺に飛び込んだ。冷たいが、体中の力が活性化するのを感じる。
滝の真下に座り、水を浴びながら三力循環を回す。すると、なんと十五呼吸で一周できるようになった。
「ここは…すごい場所だ」
「運が良かったな。この霊水の滝、あと半年もすれば枯れるかもしれん。その間にしっかり使え」
林帆は滝のそばに簡易な小屋を作ることに決めた。しばらくここで修行しよう。
その夜、彼は満天の星の下、滝の音を聞きながら眠った。体は冷たいが、心は熱かった。




