銀葉の恵み
洞窟に戻った林帆は、すぐに銀葉参の使い方を老怪に尋ねた。
「直接食べるのが一番早い。ただし、一度に全部は駄目だ。三枚の葉を一日一枚ずつ、噛みしめるように食え。根は後で取っておけ」
彼は震える手で一枚目の銀色の葉を摘み、口に入れた。
最初は何の味もしなかった。しかし、数秒後――
じわじわと、舌の上で甘みが広がる。そしてその甘みが喉を通り、胸の中心へと流れ込んだ。
循環が、勝手に回り出した。
いつもなら十五分かかる一周が、今は五度の呼吸で完了する。それだけではない。闘気と血脈の間に、かすかながら青白い光――霊力の介入が感じられる。
「三力が…近づいている…」
「そのまま無理に回すな。ただ流れを感じ取れ」
林帆は言われた通り、何もせずに体の内部の変化を観察し続けた。三十分ほど経ったとき、熱は徐々に収まった。循環の速度は通常の三分の二程度に落ち着いた。
「どうだ?」
「いつもより速いです。それに…なんというか、力がスムーズになった気がします」
「上出来だ。これでお前の基礎速度は一割増しだ。残り二枚を食えば、さらに上がるだろう」
その夜、彼はいつもより軽い体で眠りについた。
翌朝、二枚目の葉を食べる。今回も同じような感覚。しかし、終わった後、左手の甲の赤い線が肘の辺りまで伸びていることに気づいた。
「血脈が…成長してる…」
「ああ。銀葉参は血脈を活性化させる効果がある。お前のような半端な血脈には特に効く」
三日後、三枚目の葉を食べ終えた時点で、彼の循環速度は当初の倍になっていた。それだけではない。霊視の精度も格段に上がり、洞窟の外にある霊気の流れがはっきりと見えるようになった。
「ここからが本当の始まりだ」老怪が言った。「お前は今、やっと修行者の入口に立った。だが、これから先は今までの比じゃない。心してかけ」
林帆はうなずき、残った銀葉参の根を布に包んで大事にしまった。
そして、拳を握る。今度は、拳の周りにかすかな風の輪が生まれているように感じられた。
「行こう。次の場所へ」
彼は洞窟を出た。目指すは、霊視で見えるあの霊気の線が最も濃い場所――森のさらに奥、まだ足を踏み入れたことのない領域。
そこが危険な場所であることは分かっている。しかし同時に、何か大きなものを手に入れられる予感もしていた。




