風車の村
少年に案内されて、風車の麓にある村に到着した。
村は風車を中心に広がっており、家々はすべて石造りで、屋根は低く傾斜している。風が強いこの土地では、家は地面にしっかりと固定されている。
「ここが俺の村、“風車の里”だ!」
少年は誇らしげに胸を張る。村人たちが集まり、林帆とヨルに好奇の目を向ける。特に林帆の背中の剣と杖に注目が集まる。
「あんたが、風の獣を倒したって本当か?」
一人の大柄な男が前に出てきた。村長らしい貫禄がある。
「たまたまです。運が良かった」
「運だけであの獣は倒せない。あなたは強い。この村に、しばらく滞在していってくれ」
その夜、村で歓迎の宴が開かれた。風の強い土地だが、村人たちの心は暖かい。少年は林帆の隣で、嬉しそうに食事をしている。
「あのさ、お兄さん。明日、風車の上に連れて行ってあげるよ。そこから見える景色はすごいんだ!」
「風車の上? 危なくないか?」
「大丈夫! 風が強い日は行かないけど、明日は穏やかだって爺さんが言ってた」
翌朝、少年に連れられて風車の内部へ入った。中は巨大な歯車が回っており、規則正しい音を立てている。
螺旋階段を上ること十分。最上部に辿り着くと、視界が一気に開けた。
「すごい…」
林帆は息を呑んだ。眼下には広大な草原が広がり、その先には青い海。そして、あちこちに同じような風車が点在している。この世界は、風そのものが動力源だ。
「この風車は何のために回っているんだ?」
「水を汲み上げたり、粉を引いたり、村の生活全部を支えてるんだよ。でも最近、風の獣が現れてから、風車が壊されることが増えたんだ」
「なるほど…」
林帆は遠くを見渡した。彼の星の力がかすかに反応する。東の方角に、何かがいる。
「あそこに何かあるのか?」
「東の山には“風の神殿”があるって言われてるけど、行ける人はいない。風が強すぎて」
林帆は決意した。
「行ってみる」
その日、準備を整えた林帆とヨルは、東の山へ向かった。少年が見送りに手を振る。
「気をつけてね!」
風は確かに強く、山道は進むごとに傾斜が急になる。しかし、林帆の三力循環と杖のおかげで、何とか進める。
三時間ほど登ったとき、視界の先に神殿が現れた。白い石造り。風に削られて丸みを帯びている。
入り口の扉は半分開いている。中に入ると、風の音が消えた。不思議な静けさ。
奥には祭壇。その上に、一振りの短剣。柄には羽根の意匠。
「風の剣か…」
林帆が手を伸ばすと、短剣が震え、風を纏いながら彼の掌に収まった。
「これで風の力も使える」
外に出ると、風が一瞬止んだ。まるで、この剣が風を鎮めたかのように。
「帰ろう。新しい力を持って」
二人は山を下り始めた。
風はまだ強いが、以前よりずっと優しく感じられた。




