星の導き手
星の夜から十日。
林帆は毎日、星の涙を片手に修行を続けた。石は彼の手の中で脈打つように光り、少しずつ力を取り戻す手助けをしている。体内の三力循環も、以前の三分の一ほどまで回復していた。
「そろそろ、町の外に出ても大丈夫そうだ」
彼はヨルとミラを連れて、西の森のさらに奥へ足を伸ばした。これまでは手前のエリアだけだったが、今回は新たな薬草を探すため、深い場所へ。
森は鬱蒼とし、木々の間から陽の光が差し込む。空気は冷たく、かすかに獣の気配。
「ここは初めて来るな」
ミラが緊張した声で言う。彼女の手は短剣の柄に置かれている。
三十分ほど歩いたとき、道の先に一軒の小さな家が見えた。苔むした屋根、蔦に覆われた壁。誰か住んでいるのか。
「ここに、誰かいるのか?」
林帆が声をかけると、ドアがゆっくりと開き、一人の老婆が現れた。背中は曲がっているが、目は鋭い。白い髪をまとめ、手には木の杖。
「久しぶりの客人だ。入りな」
老婆は家の中へ二人を招いた。中は簡素だが、暖炉の火が暖かい。壁には無数の薬草が吊るされている。
「私はマール。この森で薬草医をしている。お前たち、何を探しに来た?」
「新しい薬草を探しています。それと…この石について知っていることがあれば」
林帆は星の涙を取り出した。老婆は目を見開き、震える手で石を受け取った。
「これは…星の涙だ。まさか、実在したとは」
「知っているのですか?」
「若い頃、私もこの石を探していた。しかし、見つけられなかった。あなたはどこで?」
「星の湖で、光魚から授かりました」
老婆は深くうなずいた。
「ならば、あなたは選ばれた者だ。この石は、世界を超える力を持つ。ただし、使い方を誤れば、大きな代償を払うことになる」
「使い方を教えてください」
老婆はしばらく考えた後、奥の棚から一冊の古い書物を取り出した。
「これをあげる。星の涙の完全な使い方が記されている。ただし、読むには時間がかかる。焦るな」
林帆は受け取り、丁寧に頭を下げた。
その夜、宿に戻った彼は書物を開いた。最初のページにはこう記されている。
『星の涙は、持ち主の心を映す。恐れれば闇を、信じれば光を。真の力を得たければ、まず己の心を見つめよ』
彼は深く息を吸い、目を閉じた。
恐れはある。しかし、それ以上に信じる気持ちがある。
この旅を続ける意味を、自分はもう知っている。
「明日から、また新しい一歩だ」
彼は書物を閉じ、窓の外の星を見上げた。




