星の湖の秘密
岩熊を倒してから三日。町の祝宴も落ち着き、林帆は再び日常の薬草採取に戻っていた。
しかし、彼の頭の中はあの「星の湖」のことで一杯だった。湖の水に触れた時感じたマナ、そして光魚が紋章に触れた瞬間の感覚。確かに、あの湖には何かが眠っている。
「ミラ、星の湖についてもっと知っていることはないか?」
薬草籠を手に、彼は尋ねた。ミラは首をかしげて考える。
「おばあちゃんが言ってた。昔、あの湖に星が落ちた時、一つの石も一緒に落ちたって。その石を持った者は、どんな病も癒せるって伝説があるけど…」
「その石はどこにあるんだ?」
「知らない。誰も見つけたことがないから、ただの言い伝えだと思ってた」
林帆はそれを聞いて、ますます興味を持った。
その日、仕事が終わった後、彼は一人で星の湖へ向かった。ヨルには宿で休むように言ってある。
湖は夕日に照らされ、黄金色に輝いている。彼は湖のほとりに座り込み、右手を水面にかざした。紋章がかすかに光る。
しばらくすると、湖の中で何かが動いた。あの光魚だ。銀色の体に、今日は三匹。
魚たちは林帆の手元に集まり、くるくると回る。その時、一匹が水面から飛び出し、彼の手のひらに何かを落とした。
小さな石。青白く輝いている。
「これは…」
石を握ると、体中に温かい力が広がる。星の力だ。この世界の星の力。
「まさか、これが伝説の石?」
魚たちは嬉しそうに跳ね、水中に消えた。
林帆は石を握りしめ、町に戻った。宿でヨルに見せると、彼女も驚く。
「きれい…何て呼ぶの?」
「星の涙、とでも呼ぼうか」
その夜、彼は石を胸のポケットに入れて眠った。夢の中で、あの白いドレスの女――セレスが現れた。
「その石は、あなただけが持つ資格がある。この世界の星の力は、まだあなたを覚えている」
「どうやって完全に力を取り戻せばいい?」
「焦るな。あなたはもう答えを知っている。信じる道を進め」
目を覚ますと、窓から朝日が差し込んでいた。ポケットの石は温かい。
数日後、町長のエドガーが林帆を呼んだ。
「北の街道で、また魔獣が出たらしい。今度は狼の群れだ。数が多い。君の知恵が必要だ」
「わかりました。行きます」
林帆はヨルとミラ、そして町の若者二人を連れて北へ向かった。
街道の両側は森。狼はおそらく森の中に潜んでいる。
「罠を仕掛けよう。薪を集めて、火を用意する。狼は火を嫌う」
皆で手分けして薪を積み上げ、街道の要所に配置する。
日が暮れた頃、遠くから遠吠えが聞こえた。十数匹の赤い目が闇に浮かぶ。
「今だ!」
林帆が合図し、一斉に火を点ける。狼たちは怯んで後退するが、一匹の大きな黒い狼だけは動かない。ボスだ。
「あいつを倒せば、他の狼は逃げる」
林帆は棍棒を握りしめ、黒い狼に向かって歩き出した。狼が飛びかかる。彼はかわし、棍棒で脇腹を打つ。狼はよろめくが、すぐに立ち直る。
「強い…」
その時、胸のポケットの星の涙が熱くなった。彼は無意識に右手をかざすと、紋章からかすかな光が放たれ、狼の目をくらませた。
「今だ!」
もう一撃。狼の頭を殴り、地面に倒した。他の狼は一目散に逃げ去った。
「終わった…」
皆が駆け寄り、林帆を褒め称える。
その夜、彼は星の涙を手のひらで転がしながら考えた。この世界の力は、ゆっくりと自分に馴染みつつある。
完全に戻るのはまだ先。でも、少しずつ前に進んでいる。
それが何よりの喜びだった。




