017 衝突
「あの大きさは流石に未体験ですね」
「そうであろうな」
ヤマツミの背に乗り山中を駆けながら、孝洋はミズチのあまりの大きさに感嘆する。
並はずれて大きい。ただそれだけで畏敬の念が湧いてくるから不思議なものだ。
「攻撃しないんですか?」
「まともにやって勝てるものか。
私は山の神だ。地の利を活かすにも体格差を活かすにも山地に移動した方が良い」
体高五十メートル級の猪となったヤマツミが巨木を踏み折り岩を砕き山肌を削って駆ける。
ヤマツミが唐突に横っ跳びに跳躍する。
ほぼ同時に、ヤマツミの体スレスレを大口を開けたミズチの頭が通過した。
追いすがる衝撃波を足場も無いはずの空中を蹴って振り切り、ヤマツミは疾走を再開した。
ミズチの頭が山の斜面に突き刺さり、大穴が開く。
「おお、結構な威力だ」
「口を動かす暇があるならどうにかする方法でも考えてくれ」
「あ、はい」
ミズチの大きさに中てられて、少し気分が昂揚してしまっていたらしいと孝洋は反省する。
(まあ口は動いていないけれども)
神力を扱えるようになってからヤマツミに教わり、孝洋は空気の振動を必要としない会話――いわゆる念話の能力を習得していた。
大型化や高速戦闘によって音声での意思疎通が困難になる事が予想されたからだ。
「策は無いんですか?」
「神の戦の情報は殆ど漏れぬ。相手の能力も定かでないのにロクに策なぞ立てられるものか」
どうりで事前の打ち合わせが淡白であったわけだと孝洋は納得した。
「解っておることと言えばミズチの保有する権能の種類程度よ。
戦い方も対処法も実際に戦った神が口を閉ざせば漏れては来ぬ」
「ああ、権能――能力については自分も郷長から聞いています。
川の神にして鉄の神、あとは岩山といくつかの農作物と……」
「確かそんなところだ。他の神から奪った権能は適性が薄い故さほど脅威でもないがな」
話しながらも山岳地帯の奥深くへ移動を続ける。眼下に一際大きな川が見えた。
ヤマツミとミズチの移動の影響で波立ち濁った川面が、不自然にゆらりと歪む。
「効くか!」
川から放たれた高圧水流が、孝洋が咄嗟に張った結界に届く前に二手に分かれて山肌に穴を穿った。
ヤマツミにはかすりもしない。
「山の神に水分りが出来ぬ訳があるまい」
ヤマツミは次々放たれる水流をあるいは躱しあるいは逸らし、その合間合間に仕掛けられる噛みつきを華麗に躱す。
なるほど確かに山岳戦は得手であるらしい、と孝洋は納得した。
危なげがない。このままただ回避し続けるだけなら相当な時間持ち堪える事が出来るだろう。
(しかしどうにも感覚がおかしいな)
孝洋の見る限り、ミズチもヤマツミも超音速で移動している。
その速度のままで飛んだり跳ねたり急旋回したりあまつさえ空中を蹴って地面に向かって飛び込んだりしている訳で、本来なら体に相当な負担がかかっているはずだ。
(高速戦闘の経験なんて一度や二度じゃない。
どんな動きをすればどれだけ負担がかかるかぐらい体が覚えているはずなのに)
想定よりも随分と負担が軽い。ヤマツミの体にしがみ付くにも大した苦労が無い。
ほぼ無音である事から何らかの障壁のような物で外部からの衝撃から守られている事はわかる。
ヤマツミの体を通して伝わる振動を除き、外界の音は一切聞こえない。
しかし、衝撃を遮断した所で着地や跳躍による急激な速度変化の影響は受けるはずなのだ。
ヤマツミの毛に掴まって百メートル程落下。着地直後にまた百メートル程跳躍。地を蹴って一秒以内には最低でも時速数百キロに達している。
それが、一般人でもまあ気絶はしない程度の負担に抑えられている。
(おかしいと言えば、ヤマツミ様達の動きにキレがありすぎる。外見にそぐわない)
並のサイズのイノシシや蛇に比べ少々鈍重な印象はあるものの、それでも手足の回転や回頭が速すぎる。
なんの工夫も無い単純な巨大化がそのままパワーアップに繋がるというのは、ちょっとおかしい。
現実的に考えて、小動物が人より俊敏に細かく動くように、巨大生物は末端部の最高速度はともかくとして一つ一つの動作の完了により多くの時間がかかるはずである。
そうでないとしたら、少なくとも体型が同じでは無い。
大蛇の胴の中程が不恰好な程膨らんでいるように、トラやライオンが猫に比べゴツゴツとした体型をしているように、より多くの筋肉やより頑丈な骨格が必要とされるはずだ。
しかし、ヤマツミの体型は平均的な猪の成獣……よりやや細身に感じる程であり、ミズチの体型は人の指程の胴回りしかない小型の蛇のそれに似ている。
尻尾と頭部を除いてミズチの胴回りの太さはほぼ均一だ。細く、長い。
(神、だしな。まあそういう事もあるだろう。
何故なのかはともかくとして、こうも速くて大きくて、あの速さで岩に頭をぶつけても平気な程頑丈となると厄介だ)
「ヤマツミ様、何か禁じ手のようなものはありますか?
神同士の戦いにははっきりしたルールは無いと聞いたんですが」
「んー? 禁じ手は特に……っと」
噛みつきを躱した直後、ミズチの口からやや太めの水流が撃ち出された。ヤマツミは空中を蹴って進行方向を修正し、水流の軌道をわずかにずらして回避した。
「そうだな、戦争が終わっても付き合いは続くのだから、尊厳を著しく傷つけるような真似は止した方が良い」
「なるほど。とりあえず、正面から殺し合いする分には制限は無いという事で?」
「まあ、そうだ。……っ!」
後方から追いすがるミズチの口から、及び左側面下方の川から撃ち出される数本の水流を躱していると、進路上に巨岩が転がり落ちてきた。ヤマツミを狙ったと思われた水流の内何本かは、これを射落とす為の物であったらしい。
「くっ」
咄嗟に踏み切り岩の通過した後をすり抜けようとしたヤマツミの頭上から巨大な何かが降ってくる。
ミズチの尻尾だ。山を回り込んで尻尾と頭で挟み撃ちにする算段であったようだ。
左にはまだ巨岩が残っている。右は傾斜の急な山肌で塞がれている。後ろからはミズチの口が迫り、前方且つ上方からはミズチの尻尾が打ち下ろされようとしている。
「前に突っ込め!」
孝洋の呼びかけに応えるように跳び出したヤマツミの目の前に、ねじれた三角錐状の結界が形成される。
結界は高速で回転しながらヤマツミを振り切る速度でミズチの尻尾に向かって飛び出し、深々と突き刺さった。
「左に!」
結界が稼いだわずかな時間の内にヤマツミは巨岩の横を通り過ぎている。ヤマツミは即座に宙を蹴り、窮地から脱出を果たした。
「助かったぞ!」
「いえ……しかし思ったより脆いですね、ミズチ様の体」
わずかでも時間を稼げればと射出した結界製のドリルが、勢い余ってミズチの尻尾に大穴を開けている。孝洋の感覚では貫くには威力不足であるはずだった。
「神力を透過する設定だったのが良かったのか……? 試してみるか」
ヤマツミの背の上で向きを変え、ヤマツミに食らいつこうと頭を高く上げているミズチの首に向き合う。
腰に帯びた剣に手をかける。
鞘の形状から幅広で小ぶり、二十センチ程の長さの刀身が想像される、脇差と呼ぶにも短い短剣に。
「伸びろ、自在剣」
軽く剣を振るい、鞘に戻す。
ミズチの首がずるりと滑り落ちた。
─────
「接触しました」
「ええ」
祈祷師を使った通信を利用して本陣から指揮を執る郷長のすぐ近くで、要は自分に付けられた英雄と祈祷師各一名に守られて戦況を注視していた。
兵器作成及び作戦立案に関わった者として、郷長に参考意見を提供する役目を担っている。
前線では既に両軍が衝突している。
敵前衛二部隊が突撃を仕掛けると同時、敵後衛の一部隊が跳躍。
それに合わせるように自軍の後衛部隊も跳躍し、空中で衝突。
絡み合うように落下し、そのまま前衛に混ざって乱戦となった。
挟撃あるいは後方の本陣への強襲を企図して飛び越えようとしたのだろう。
両軍が衝突した中央部では団子状になって乱戦が繰り広げられ、その両脇を敵部隊がすり抜けようとするのを自軍の部隊が抑えている。
両軍共にやや後方に予備部隊が控え、細やかな移動による位置取りで突破しようとする敵を牽制している。更に後方に予備の祈祷師を数名積載した荷車があり、陣を張って味方に有利な領域を作り出していた。
予備部隊と前衛との間に空いた空白に小さな穴から不用意に飛び込めば、金床に鎚を打ち付けるが如く潰されてしまう。予備部隊を突破できるだけの勢いがなければ飛び込めない。
しかし連合軍は数で劣る。そういくらもかからない内に突破する者が現れるだろう。
真っ当な戦いだ。
この世界でよくある形の真っ当な会戦だ。
二十を超える英雄が投入される事こそあまりないが、基本形をそのまま拡大すればこうなるといった意外性の無い戦いだ。
(ここから仕掛ける)
相手もおそらくそこまでは読んでいるだろう、と要は推測する。
真っ当過ぎて数でも対人戦闘経験でも負けるこちらに勝ち目が無いのは明白なのだから、これで終わると考えられているなら連合は相当なめられている事になる。
実際に一度会った印象として、要には一沙王や夜須奈がそういった油断をする種類の人間には見えなかった。
「郷長」
呼びかけ、軽く頷く。
「村民兵、弩を起動! 間隔を五に設定、照準は各々合わせろ! 味方を巻き込んで構わん!」
郷長の号令が響き、所定の位置に移動を終えた兵達が一斉に杖を地面に突き立てた。
杖から伸びた結界が兵の前後左右に兵器を展開する。
右に三段左に三段、計六つのボウガン状の物をドラムセットのように使用者の周りに配置した装置だ。それを、使用者が突き立てた杖によって操作する。
超長距離対応連弩一号と命名したが、長いので単に弩と呼ばれている。
「放て!」
号令に従い百八十名の弩兵、計千八十の弩から同時に矢が放たれる。
斜め上方に向けて発射された矢は初めに放物線を描き、最高高度に達するかという頃合いになって矢筈から何かを吹き出し水平よりやや下方向に向けて急加速を始めた。
そのままの勢いで本陣からおよそ八百メートルの距離にある前線に着弾、戦闘で生じていた土煙を一層深くさせた。
各弩の連射速度は発射間隔五の設定で0.6発/秒程度。最速の設定一で3発/秒程度になっている。
従来の連弩のような操作手順を踏む必要無く、引き金を引いている間矢が放たれ続ける。
郷長の指示通りに敵味方共に矢の雨に曝される形となった。
「戦闘継続中。敵味方共に現在まで被弾無しとの事です」
「ここまでは予想通りですな」
「ええ」
(あの面積に秒間648程度の密度では英雄の幸運どころか祈祷師の加護を破る事も出来ない。
ここまでは事前の調査でわかっていた事だ)
英雄に飛び道具は効かない。常識のように語られるそれの詳細を調べるべく、要は連合の英雄数人の協力を得て兵器のテストを行っている。
その結果、英雄の動体視力と反応は至近距離で放たれた矢を指で挟んで止められる程に優れている事、英雄が躱そうとするまでもなく矢が自ら軌道を変えたかのように逸れてしまう事が明らかになった。
飛び道具が効かないとはこの両方の意味で語られる言葉であろうが、特に後者は村民の戦力化を考える要にとって厄介な問題であった。
回避可能な隙間を作らなければいいという面制圧を企図した攻撃が、矢の軌道をずらされる事で無効化あるいは弱体化されてしまう。
「充分に広く撒きました。そろそろ宜しいかと」
「射撃を中断、デイジーカッターに換装せよ」
矢の雨が一時止まり、弩兵が杖に付いたつまみを操作する。
「英雄に合図を送れ! 弩兵、放て!」
郷長の指示が祈祷師を経由して伝わったらしく、矢が放たれた直後に自軍の英雄達が直上に跳躍、ガス状の何かを下方に噴出しながら更に上昇した。
「敵はスラスターを忍具の一種と解釈、祈祷を始めました。まもなく上空に突風が」
「矢が届くが早い」
弩兵が先に放った矢が、何故兵のまるで居ない地点にまで広範囲にばら撒かれたのか。
一沙軍はそこに気付くべきであったと要は考える。
(気付いたとして、その程度の違和感を根拠に散開を指示できるものでも無いだろうが)
デイジーカッターと呼ばれた赤い矢の雨が広範囲にごく薄い密度で降り注ぐ。
地面に着弾したデイジーカッターはポフンと気の抜けるような音をたてて爆発した。
直後、周囲に突き刺さっていた通常の矢――連合軍が誘爆型と呼称するそれが、崩壊する。
轟音と閃光を伴い、戦場が爆発した。
「追撃の手を緩めるな。
間隔を一に変更、誘爆型を爆発地点を中心に規定通りにばら撒け。
中川班はデイジーカッターを間隔二だ。
直射班に間隔二で誘爆型、爆発地点の手前を狙えと伝えよ」
点では避けられる。
面ですら当てられない。
では空間全体を巻き込めば、どうか。
無数の小規模爆発が互いに干渉し風が荒れ狂う。
よしんば熱や爆轟波によるダメージが大したものでないとしても、あの空間では今までのような回避は不可能だ。
英雄の質量は人のそれと大差ない。
一度吹き飛べばいくら力が強かろうが任意に移動できたものではないし、吹き飛ばぬように地面に取り付いていては、矢を満足にかわす事も出来ない。
矢が自ら軌道を変える、不可思議な現象。
実験を重ねた結果、それには通力が関与していると要は判断した。
通力を消費して、矢の軌道が歪められている。そして英雄の通力は無限では無い。
間断なく矢を降らせ、爆風を生じさせ続ければ何もできずに通力を削られる事になる。
(戦争において忍者の炸裂符が数度使用された事が確認されている。
反撃不能な程に集中攻撃を行う事が条約に抵触しない事も過去の事例から明らかだ。
条文解釈は「自動的に効果を発揮する罠の設置を禁止する」「捕縛を主目的とする得物の使用を制限する」で合っていると考えていいはずだ。
攻撃を主目的とした爆発による副次的効果としての行動不能状態は許容される)
郷長とも充分に相談したうえで選択した作戦だ。
先例に倣えばこの作戦は夕陽ヶ浦条約には反しないと郷長が太鼓判を押してくれた。
(魔力カートリッジも粉末も数に限りがある。もう間もなく撃ち尽くすはずだ。
そして恐らく、それでも英雄の過半数は生き残っている。
純粋な物理攻撃では回復中枢にダメージが残らない。
回避と回復で通力を使い果たして死ぬのは七、八人も居れば御の字というところだろう)
「残り僅かです。…………撃ち尽くしました」
「こっちもです」
計ったように、そこかしこから弾切れの報告があがる。
一沙王に備えて全弾数の半分を予備として残してあるが、それをここで使う必要は無いと要は判断した。
「敵祈祷師は恐らく生きてはいないでしょう。英雄による戦闘の再開を」
「うむ……弩兵は予備の粉と魔力板を補充し一沙王の攻撃に備えよ。
英雄部隊に戦闘再開の指示を」
(祈祷師が死ねば本陣との通信手段と加護が失われ、なにより青銅製の装備の性能が青銅本来の物でしかなくなる。
残ったのは数を減らし強力な装備を失い通力を消耗した英雄達のみ。
あとはこちらの英雄部隊で対処できるだろう)
スラスターによる離脱のあと少し離れた位置に待機していた英雄達が、土煙の中に突っ込んだ。
「予備祈祷師は全滅、部隊付きと併せて祈祷師九名の死亡を確認。もう二人は未だ確認が」
「祈祷師の全滅を確認しました。英雄は……今確認が取れているだけで六名死亡」
「三名追加。湯里の坂本が二名討ち取りました」
祈祷師達から報告があがる。
内容は事前の予測を大きく外すものでは無かった。
「順調ですね。孝洋さん達の方はどうなってますか?」
「はい、山本様が――」
「報告! 一沙王、動きました」
報告を受けて要が敵本陣に注意を向けると、崖を下り終え前線に向かって走る一沙王の姿があった。
「弩兵に迎撃を!」
「目標一沙王、射撃開始!
中沢班岡本班は残って足止めを!
それ以外の英雄部隊を本陣まで後退させよ!」
一沙王が一歩踏み切る毎に地面から派手な土煙があがる。
乱流に吸い込まれた土煙を振り切って一沙王が疾走した。
矢の雨の中を流星のように――いや、不規則に軌道を変える様は稲妻のようと言うべきか。
隙間など無いはずの矢の雨の中を目にもとまらぬ速さで駆け抜けてくる。
着地して減速し、身を沈み込ませて反動の補助を得て跳躍する、その手順が省略されている。
跳弾のように。
着地と同時に次の地点へ跳躍している。
(しかし、爆発なら)
デイジーカッターの第一陣が到達し、爆発が始まった。
直後、爆発によって生じた土煙がモーセの奇跡が如く開かれ流れていく。
別れた土煙の中央を、長剣を手にした一沙王が変わらぬ速さで走っている。
「縦に割れて別れるだと……?」
(……いや、後方で回折し閉じている。
大きく形も特殊だが、おそらく祈祷師の加護と同種の何かだ)
「要、逃げるぞ!」
弩兵として参加していた次郎が駆け寄ってくる。
殿に残された英雄達との距離が二百メートル程になった頃、ふ、と、一沙王が歩みをとめた。
「う、おおおおおぉぉおおっ!」
殿に残った英雄の内四人が雄叫びを上げて一沙王に殺到する。
次の瞬間、英雄達の体がはじけ飛び、遅れて大地が砕けるような爆音と衝撃波が届いた。
英雄達の残骸を踏みしめて、一沙王が立っている。
状況を理解した要は、ひ、とひきつるような声を上げた。
死んでも蘇生する。傷も残らない。
それがどうした。
それらの知識は要にこれっぽっちも安心を与えてはくれなかった。
圧倒的な暴力。
あれに蹂躙されるのだと想像し、要は体の芯から震えが走るのを感じた。
それは根源的な恐怖であった。
勇敢と言うべきか、残った英雄達は尚も一沙王に斬りかかり、一刀のもとに斬り伏せられた。
斬られた英雄は回復する事も無くそのまま動かなくなった。
ぽっかりと空いた空白地帯を、一沙王が駆ける。
たった一人の進軍は止まらない。
もはや矢を射掛ける者も居ない。
矢を射掛けて、またあの突進をされればどうなるか。
はじけ飛んだ英雄のように、次は自分が無残な死を迎えるのではないか。
距離の優位を信じる事が出来なくなった。武器への信頼も無くなった。
村民兵のうち逃げる気力のある者は早々に後方の山中へ離脱し、残るのはゆっくりと迫りくる死を震えながら待つ者のみ。
連合軍は散り散りになり、崖の上の陣地は放棄された。
あっという間の出来事であった。
デイジーカッターという兵器(特定の兵器の正式名ではなく、ある種の性質を持った爆弾の通称)は実在しますが、本作に登場するものは単に名称を拝借しただけで仕組みも性質も別物です。




