その2:2026年2月16日月曜日・G県N市駅前「台湾酒場」②
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テーブルには早速、中ジョッキに注がれたビールが運ばれてくる。 2月中旬という、まだまだ寒い時期の昼間から、麦色の甘美な液体に目を輝かせる二人。
「ああ、昼間からお酒を始める私たちをお許しください。」
ジョッキを手にしたカレンはそんなことを言いながらも、表情は明らかににこやかで楽しそうだ。 なんだよ、「ちょっと、お昼から?」なんて言ってたくせに、めちゃくちゃ嬉しそうな顔して。そんなことを思いながら、アイラもニヤリと笑みを浮かべ、ぐっとジョッキを持ち上げた。
「許すも何も、カレンは今日休みじゃん。それじゃ、乾杯。」
「乾杯。」
【カコチーン】とグラスを合わせ、グイッと一口、二口。 冷たいビールの喉越しが――
「うーん、うまい!」
アイラにこの一言を、意識することなく言わせる。 その様子を“相変わらずだなぁ”とニッコリ見ているカレンは、アイラとは対照的に静かにコクッと一口。 ジョッキに口を付け、上品な仕草で飲み、ふう、と息を吐いた。
「昼からお酒なんて、ほんと久しぶり。」
「ハハハ。どうよ、たまにはいいもんだろ?」
「そうね。た・ま・に・は、いいものね。」
ニヤリと笑うカレンの目は、 “あなたは日常茶飯事なんでしょ? アイラ” と語っているようだった。 それにアイラも、 “当然!” と目で返していた。
どちらからともなく小さな笑い声がこぼれ、和やかな雰囲気の中、二人はゆっくりとビールを飲みながら、料理が来るのを待ちつつ、何気ない日常を語り合っていた。
◇◆◇
アイラの友人、黄泉野カレン。
G県N市駅前・新町通りでヨミノカウンセリング室を営む心理カウンセラーで、市内では“幽霊の見える心霊カウンセラー”と、不本意ながらその名が広まっている人物だ。
そんなこともあり、毎年世間の夏季休暇明けには心霊体験相談が一気に増えることに、頭を悩ませている――そんな、アイラの長年の友人である。
友人とはいえ、カレンはアイラより5歳年上。今年33歳になる。落ち着いた雰囲気から年相応の印象はあるものの、その見た目は年齢詐称を何度も疑われるほど若く見える女性だ。
「それで、今回はどんな仕事なの?」
「んー、まあまあ、それは飯食べたあとにゆっくりと。」
「ふふ、まあそうね。ごはんの最中に仕事の話というのも、だものね。」
クスリと笑いながら、コクッとビールで喉を潤すカレン。 その様子に、アイラは舌を出して苦笑いを浮かべた。
二人は友人であり、仕事でも互いに助け合う仲だ。そして普段はメッセージで連絡を取り合う二人が“通話”を使うとき――それは十中八九仕事の話である、というのが暗黙の了解になっている。
「はーい、アイちゃん、Aランチ2つねー!」
ビールを飲みながらそんな話をしているうちに、早速お昼のAランチがテーブルに届いた。
“大きい”という言葉では足りない。【ゴッツーン】という擬音が背景に浮かびそうなほどの拳骨大の唐揚げがゴロッと盛られ、大盛り野菜が山のように乗った皿。 さらにご飯、汁物、小鉢が一つ。 見た目は大盛り――いや、特盛定食と言っても差し支えない量だが、これがこの店の普通盛り。これがこの店の日替わりAランチである。
相変わらずの迫力に、アイラは目を輝かせ、 そしてカレンは「忘れてた……」と口元を引きつらせていた。




