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第4話

 シャルル・フランソアは人から褒められる事にあまり慣れていない。

 優秀な父と母には、いくら頑張っても手が届かないと知っているから。両親はシャルルの事を褒めてくれるが、それは娘だから。身内贔屓というやつだ。


 客観的に褒められるという事があまりないので、バーバラが褒めてくれるたび、何だかくすぐったい気持ちになる。同時に嬉しくて頬が緩んでしまう。

 フランソア侯爵家令嬢として、緩みきった顔を見せる事は出来ないので、バルコニーへと逃げてきた。


「どうしてなのよ!!」

 シャルルが立っている真下から女性の金切り声が聞こえてくる。彼女が覗き込むと、ちょうど庭園の休憩所にある長椅子に座っているベロニカが見えた。ギルにこっぴどく振られて癇癪を起しているらしい。

 面白そうだからこのまま見てみようとシャルルは覗き込む。


「ギルバード様は何であんな女を選ぶの!? あんな女より魅力があるのに。ずっと前から想いを告げていたのに、どうして!?」

 ベロニカはハンカチで顔を押さえながら、隣で狼狽える女中の肩を叩く。


(使用人に八つ当たりするなんて主人としての資格がない奴ね)

 シャルルが呆れていた時、リヒトがやって来た。良い事を思いついたシャルルは、リヒトに手招きをして下を見るよう指をさす。

 リヒトはバーバラに悪態をつくベロニカを見て、汚物を見るような眼差しを向けていた。シャルルは笑いそうになるのを堪えながら、リヒトと共にベロニカを観察する。


「あの女、許さないんだから!」

 ベロニカの言葉に目の色をさっと変えるリヒト。明らかに怒っている。

 シャルルはリヒトの肩を叩き、近くにいた蜘蛛を掴んで見せた。にやりと笑って、そのまま真下へと蜘蛛を落とす。


「きゃああ!」

 ベロニカの甲高い悲鳴が上がった。シャルルは声が出そうなのを堪え、真下を見る。

「頭に何か乗っているわ、早く取ってちょうだい!」

 慌てふためきながら頭に乗った蜘蛛をどうにかしようともがくベロニカ。まるで、操り人形を無茶苦茶に動かしているような動きにシャルルはぷっと笑ってしまった。


 リヒトと目が合い、二人でくすくすと笑い合う。

 彼は、蜘蛛の巣に絡まっていた蝶の死骸を手に取ると、シャルルと同じように真下へ落とす。


「いやぁあ!」

 と叫んでベロニカは走って逃げていく。二人は声を出して笑い合う。面白くて涙が出るほどだ。

「あんた、やるじゃない」

「君もね」


 シャルルとリヒトは顔を合わせ笑っていた。こんなに楽しい思いをしたのはいつぶりだろう。



 ◆ ◆ ◆


 舞踏会からの帰りは、私とギル、リヒトに加えてシャルルも一緒になった。シャルルは、せっかくなのでモント公爵邸に泊まる事になったのだ。

 公爵邸に到着し、シャルルに部屋を案内した後、私は聞いてみる。

「一緒にお風呂入ってみる?」

 シャルルは少し照れたように顔を逸らして答える。

「はしたないわ」

「今日くらい令嬢じゃない事してみない?」

 悪い誘いをしてみると、そそられたのかシャルルは唾を飲み込んで頷いた。


 侍女に体を流してもらいながら、私達は裸の付き合いをしている。

「わたしもあんたみたいになれるかな」

 ふと、私を見てシャルルが呟いた。

「何が? 身長?」

「そ、その胸とか……」

 見比べながら言うシャルルに私は驚いてしまう。


「まだ十歳だよ! 伸びしろしかないからね!?」

 勢いあまって額をシャルルにぶつけてしまう。私達は顔を見合わせると笑った。


「本当はこうやって同性と過ごしてみたかったの。わたしには友人がいないから、両親やギル兄さま以外の人と話すのが初めてで……ちょっと楽しい」

 照れくさそうに言うシャルル。あまりにもいじらしくて可愛らしい彼女に、私は胸がぎゅうっと締め付けられるような思いをした。


「もう私達、友達だから!」

 そう言って私はシャルルを抱き締める。

 彼女は離してと言っていたけど、逃げようと思えば逃げられる程度に腕は緩めている。逃げないのは彼女も人の温もりを欲しているからだ。

 私はくすっと笑う。


「ちょ、ちょっと、バーバラ。離してってば、その、胸が……邪魔!!」

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