第25話 遺跡探索
翌朝、探索者はいくつかのチームに分けられ、各自探索を開始するように命じられた。
リツ、レイア、スルギ、クオンに加えて、派遣されてきた同世代くらいの魔法使いのゼーレゼが加わって、五名でのチームとなった。
「翠緑の魔法使い、ゼーレゼよ、よろしくね」
森の中に突如として地下への階段が露出しており、グループごとに順番に遺跡に入るように促された。
遺跡の中に入ると、だだっ広い空間の先に十種類ほどの扉が並んでいた。
(道筋は知っている。早くクリアして、王都へ戻ろう)
扉を正しい順番で開けていかなければいけない時空迷宮になっており、正しく開けていくと、五つの扉をくぐるごとに一フロアのダンジョン階層が広がっており、ダンジョンの奥まで行くとまた扉が出現するという流れだ。正解は徐々に重い扉を選んでいくと先につながるのだが、探索者の間ではまだダンジョン階層の二つ目までしか到達できていなかった。
久々に合流したスルギとの連携はもちろんのこと、クオン、そしてゼーレゼとの連携も特に問題がなく、ダンジョン攻略はサクサクと進むことができた。
「これって正解の道ってことだよなたぶん」
「私たち最短じゃない? リツ、冴えてるね」
「そうだね、恐らくこれが遺跡核の部屋だ」
明らかにこれまでとは異なる扉が現れた。入る前に準備を整えようか、と各自装備を確認していると、黒猫姿のステラがリツの弓を加えて、飛び出した。
「おい! 待て!」
リツが慌てて追いかけると、その先に人型になったステラが立っていた。
「リツ様、いま向かうとシナリオが大きく変わります。一度引き返してください」
「なんだって?」
「今は行ってはいけません」
「再度魔放出が起きるのでは?」
「はい、それを待って、対応してから、最奥部のクリアを目指してください」
「そんなことできるわけないだろ! あの惨状を見て、そこにいる人々を見て、一刻も早く対処が必要だろ!」
「ですが……」
「ふざけるな! そんな言葉を聞く気はない!」
「……わかりました」
ステラは弓を返し、改めて黒猫の姿に戻った。
「大丈夫?」
戻るとみんな準備ができているようだった。
「ああ、じゃあいこうか」
大きな重い扉を開けた。
◇
中には巨大な魔導ゴーレムがおり、チェーンで縛られて身動きができない状態になっているように見えた。
「なんだ? これじゃあただ攻撃を当てるだけじゃ……」
バスッ。
音がしたと思い、振り向くと、ゼーレゼの喉元に横から矢が突き刺さっていた。
「な、ゼーレゼ!」
声を出した瞬間、リツに向かって飛んできていた矢をスルギが叩き落とした。
「まあ一旦魔法使い殺せただけでもいいかぁ。流石に二対五は骨が折れるからなぁ」
声の方に目をやると、天井に逆さまに立ち弓矢を構えている男と、フードを被った魔法使いのような身なりの人がおり、男のほうがブツブツと喋っていた。
「はぁ、面倒だなあ。ガーディアンのオモリをしながら、侵入者を殺さないといけないとは」
「だれだ!」
「聖教会シンラ派のものですよー。魔放出まで、ガーディアンを生かしておかないといけないものでして、みなさんにはここで死んでもらいますねー」
「なんだと……じゃあお前らがサーザリーを……」
「いやぁ最初の魔放出は不運だったねえ、ずっと待ってるのも暇だったから……暇つぶしにはなってくれよっと」
男の方だけ降りてきて、短剣を抜いた。
「じゃあいっちょやりますか」
そう言った瞬間、スルギの眼の前に現れた。スルギはギリギリ剣で受け止めたが、そのまま吹き飛ばされ壁に激突する。
「スルギ!」
「よそ見してんじゃないのよ」
今度はリツに向かってくるが、すかさずレイアが切りかかった。
「おぉ、お姉さんは反応できてるみたいだね。この中じゃ一番骨があるかな」
クオンの方は、と見ると、魔導ゴーレムを縛っているのと同じ鎖が地面から生えており、ぎりぎり持ちこたえているような状態だった。
「捌き切れない!」
ドォンという音とともに、クオンも鎖によって吹き飛ばされた。
なんとか、リツとレイアで捌くが、ギリギリだ。どう見ても敵の男は余裕がある。
「うーん、ミラちゃーん。まずはこのお姉さんと戦いたいから、そいつ縛っといてー」
天井にぶら下がったままの魔法使いにそう声をかけると、リツの足元から鎖が出てきた。
空間魔法で制御して避ける。
「おぉなんか珍しい魔法使える坊やだな。それもヤるのが楽しみだ」
一気に鎖が増え、リツも縛られてしまった。
「レイアさん!」
「やっばいね、これは勝てないかも……」
さばき続けるレイア。
「お姉さん、ちょっと本気出すけど、付いてこれるかな?」
そう言って、男は腰の長剣を二本取り出した。一振り目をレイアが躱し、二振り目を受けたが、そのまま蹴りが飛んできて、レイアは吹き飛ばされた。
「ぐぅあううう」
レイアの鈍い悲鳴とともに土埃が晴れると、足に片方の剣を刺されて身動きができないレイアが見えた。
「レイアさん!」
「あぁ、やっぱりこんなもんかぁ。お姉さんこれでも微色なんだねえ、残念だったね」
「やめろ!!!」
「うるせえな、次はお前もやってやるから黙ってろよ」
「こんな、こんなシナリオを許してたまるか! くそっ! 変えるんだ、すべて!!」
「何いってんだか」
そう言いながら男は剣を振りかぶり、レイアの首めがけて振り下ろした。
その瞬間だった。
カバンの留め金が弾けるような音がして、黒猫の瞳が暗闇の中で開いた。
次の瞬間には、ステラが男と剣の間に割り込んでいた。腕にまとった何かが、男の長剣をぴたりと止めている。
「ステラ……!」
リツの声が、掠れた。
「なんだぁお前」
男が警戒して距離を取った瞬間、ステラが大きな拳のようなものを男にぶつけた。男が壁まで吹き飛んでいく。
「ステラちゃん……?」
レイアの声も、信じられない、という響きだった。
ステラは振り返らなかった。男から目を離さないまま、ゆっくりと息をついた。
「はぁ、やっぱりだめね」
リツは、息が止まった。
その声は、ステラの声だった。だが、ずっと聞いていたあの声ではなかった。敬語も、ナビゲーションキャラクターの口ぶりも、どこにもなかった。ただ、呆れたように、やわらかく、リツに向き直って言った。
「本当にシナリオを改変するつもりなんだね? ここから……本当に変わってしまうよ……」
「あ、あぁ。できることがあるなら全部やる。シナリオが変わっても、その中で戦っていくんだ」
ジト……とした目で睨みつけられたが、観念したように言った。
「わかったわ。それならそれで力を貸すから。……頼むからクリアはしてよ……」
ピコン、とシステム音が鳴り響いた。
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メインストーリー達成率:13%
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毎日21時更新です。次話もよろしくお願いします。




