第19話 サーン商工自治領
「まず、育成はいいけど、リツは何の職業を目指したいの?今はまだ初期職業としての斥候でしょ?」
「そうですね……強いと言うと、最終的には、魔銃士、賢者、簒奪者、阿修羅、ウェポンマスター、冥剣士などを目指すのがいいかなと思っていますが……まだまだ先は長いので、まずは素早さと近接戦が強くなることですかね」
センテは特に気にしていない様子だが、レイアが驚いている。
「な、なにその職業……」
「あ〜ということを、昔、行商人に聞いたり、古来書で読んだんですよ。職業も新しいものも生まれていますし、目指すならいいかなってね!」
「ふぅ〜〜〜ん、図書館で勉強してたぐらいだし、物知りだねえ」
「とはいえ、初期は拳闘士・斥候・銃士・剣士・狩人あたりで基幹職としてちゃんと育つのがいいんじゃないか?」
センテが助け舟を出してくれる。
「やっぱりそうですよね。目指せウェポンマスターのレイアさんもいることですし、斥候を軸にいろんな武器を鍛えていくことにします」
「え、私はそのウェポンマスターって職業を目指してたの?」
「あ……まあそうです!」
センテが呆れた顔をしている。
「ううん……まあいいか。武器はどうするの?」
「いまは弓と短剣を持っています。あとは、銃、投器、ショートソードあたりまでは使えるようになりたいです。器用貧乏タイプなので、幅を広げていきたいなと」
「それもすごいけれど……まあいいや、探索者の基礎力という意味では、斥候より優れているものもないからね。情報収集ができるのが何よりも強みだよ。情報が先、戦闘が後。これが基礎だね」
「分かりました、師匠!」
「とりあえずは魔窟をクリアしながらレベルを上げようか。取り急ぎどのレベルくらいまで目指す?」
「三ヶ月でできる限り強く、第二位階の段超え試練までは終わらせたいです!」
「じゃあ魔窟を三つは超えないとだね」
「そうですね、良い遺品も探さないといけないですし」
その後、これから一緒に回るなら、とセンテ・レイアそれぞれに説明をして戦型の確認をした。第三位階を越えたタイミングではっきりと心核を認識することになるらしく、センテもレイアもあれがそうだったんだという感じだった。二人とも尖塔型だった。
「あ、そうだ。私のパーティ解散したって言ったでしょ? よければここの空き部屋も使っていいよ」
レイアの優しい提案に対して、なぜかセンテがジロリとリツを睨んだ。
(……レイアの家に居候できるのを羨ましがっているのだろうか)
◇
オーガスト家に戻ると、ちょうどスルギも荷造りをしていた。
「師事試験合格できたよ。十五人くらい受けて合格者は僕ともう一人だけだ。すごいだろう?」
「よかったな! おめでとう」
「そのもう一人っていうやつがあんまり好きじゃないのが難点なんだけどね……明日から泊まり込みで師事を仰ぐことになったよ。というかルアは一緒じゃないの? リツはどうするの?」
これまでの経緯を説明して、ルアがガーランドに師事することになったことと、リツはレイアのところで師事を仰ぐことを伝えた。
「えぇ! ガーランドさんはすごいな。でもとりあえず安全そうで良かったね。じゃあ一旦は各自修行ってことか。負けないように鍛えてくるよ。家も自由に使って大丈夫だと思うし、定期的に連絡しよう」
(スルギが部屋を出ていくのを見送りながら、リツは思った。ルアはガーランド、スルギはジューゾー。どちらも、この世界で指折りの師匠だ。西ケレまでに追いつかなければならない)
◇
翌日、冒険ギルドで黄色と赤色の魔窟のクエストをもぎ取り、レイア、時々センテの修行兼魔窟挑戦が始まった。
都度、王都には戻らず、南東にあるサーン商工自治領を目指しながら魔窟攻略をしていくことになった。旧王の遺品探しの第一歩目として、サーン商工自治領の近くにある魔窟で「深く青く沈む金冠の地図」というものを手に入れることが、先の案内になるはずだとシナリオを頑張って思い出した。
レイアは教えるのがかなりうまかった。行き道は街道を行かず、集中や索敵・空間認知・遠投・気配消しなどのスキルを次々と教えてもらった。リツも器用貧乏タイプというだけあってか、覚えるのは早く、レイアも驚いていた。
魔窟は二日目には黄色魔窟に到達した。リツが斥候をしつつ、敵と出会ったらレイアが銃で牽制、そのままリツが前衛で戦うという流れだ。基本センテは手を出さない。
最初の識異点魔獣はコウモリの群れで、音と光に反応する敵だったが、リツのレベルアップした斥候スキルでの気配消しと集中に加え、音無鳥の弓矢という全く音の鳴らない弓矢によって、バッサバッサと倒すことができ、思ったよりも簡単に終わった。
次の赤色魔窟も特に難なく識異点魔獣に到達し、巨大な狼のような敵二体を同時に倒す形でクリアできた。
そして、サーン商工自治領の近くのかなり分かりづらい海岸線の岩場を転々と探し続けると、魔窟があった。紫色だった。
「紫か。白は低レベルで、黄が異常、赤は力、緑は魔法、青は仕掛けと言われていて、それ以外の色は掛け合わされることが多いけど、大抵難易度が高いんだよな。紫ってことは力と仕掛けか」
「厄介なのが出たらリツが即死しそうで心配」
「ええ、怖い」
「とりあえずまだ時間はあるからサーン商工自治領に行って、別の魔窟を見ようか。リツが段超え試練できれば、少しは動きやすくなるところもあると思うから」
合意して、サーン商工自治区に入った。
海に面しているだけあり、船の往来が多く、漁業や貿易が特徴的だ。港に騎士を模した二体の白い巨大な像があるのが目を引く。王都も人が多かったが、さらにいろんな種類の人やモノが集まっている感じがある。
潮の匂いが、鼻をくすぐった。新しい街に来たのだと、胸が少し高鳴った。
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