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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第6章 銀河辺境大戦

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98.悪者にならずに戦争を始めたい

 母港に到着して最初に行ったのは、城の改装だ。

 ブルネットは一度更地にして日本風の屋敷にしたがったが、時間と、何より金が絶望的に足りないので、実際に行ったのは一部の部屋に掘りごたつを導入しただけだ。


「ここは落ち着くにゃ」


「キン姉。また畳をひっかいてる……」


 一番リラックスしているのがキンとベリルで、一番平常心なのが護衛をしている拿捕猫耳たちだ。

 ブルネットはかなりおさまってはいるが、苛立ちが残っている。


「悔しいけれど環境は素晴らしいわ。キンとベリルちゃんには、艦橋機能の使い勝手を調べて欲しいのだけど?」


 ブルネットは、対デブリレーザー砲塔の使い勝手や、セキュリティの強度を調べているようだ。

 俺は、快適ではあるが初めての環境に慣れるので精一杯だ。


「どーせサルのことだからこのまま使うにゃ?」


「僕は口座残高を見たくないからしばらくこのままー」


 キンとベリルはだらけたままだ。

 新しい畳の香りは魅力的だから、堪能したい気持ちはよく分かる。


「このまま使うのは内側だけですね。今後戦う相手は強敵ばかりです。対デブリと対艦戦闘のために、タキオン砲を……できれば20は欲しいです」


「もとからついてる対空砲はそのままにするにゃ?」


「タキオン砲では新装甲に苦戦しますからね」


「了解にゃ」


 キンは畳の上を転がって移動し、装飾の一部として配置されているタブレットに触れる。

 入力速度は俺の目で追えないくらいに速く、タブレットに表示される内容が切り替わる速度も目で追えない。

 【見】るのは……ここでなら少し【見】るだけなら負担なしでできそうだが、タブレットを【見】るときにタブレットを操作中のキンまでうっかり【見】てしまう恐れがあるので、俺は【見】ないことにする。


「タキオン砲の相場が跳ね上がってるにゃ」


 キンは絶望的な事実を口にした。

 聞いていたベリルが『に゛ゃぁ』と断末魔じみた鳴き声をあげている。


「特大タキオン砲はどうでしょうか。あれは強力ですから、4つもあれば猫の巣号の守りは爆発的に向上します」


「特大サイズの奴は市場から消えてるにゃ。星系管制ならコネとかあるかもにゃ?」


「「あいつに借りを作るのは……」」


 俺とベリルが声を揃えて嫌そうに言った。


【お父さん! ここすごい! 知らないものがいっぱい!】


「お嬢、壊したら修理費がとんでもないので気を付けるっすよ。懐古趣味なのか物持ちがいいだけなのかは分からないっすけど、コランダム総司令、博物館で動態保存していた機動要塞をそのまま贈ってきたのかもしれないっす」


「あの女のことはこれ以上話題にしないでちょうだい」


 ブルネットから苛立ちと同時に疲れを感じる。

 巨大過ぎる存在を意識し続けるのは大変だからだ。

 コランダムとの関係を絶てない俺が根本的な原因なので、ブルネットには本当に申し訳ない。


「とりあえず、使わない部屋は封印しておきますか?」


「サルくん。この船で使わないものを売っていいかな? 猫攻撃機をもっと増やすんだけど、飛ばすためのお金が足りるか不安なの」


「コランダムのメンツを潰すことになるので止めましょう」


「うん。そうだよね……」


 ベリルは畳の上で体を丸めて、畳の目を数え始める。

 そんなベリルを跳び越えてトーティが戻ってくる。

 とても興奮していて、無意識に尻尾で畳を叩きまくっている。

 尻尾が当たっていないはずのベリルが、何かに『ぺちぺち』叩かれたように小刻みに動いていた。


【お父さん! すっごく遠くのテレビが見れるみたい!】


「ふむ」


 ここでいうテレビとは、超光速通信網に流れる番組のことだ。

 俺は地表では、遠方へ出張したとき、その土地の番組を見て楽しんでいた。

 トーティ基準で【すっごく遠く】の番組というのが見れるなら、俺も是非見てみたい。


「キンさん。設定をお願いできますか。必要な予算は俺が出します」


「サルも物好きにゃ。ちょっと待つにゃ」


 テンションが上がったトーティが、部屋(というより俺の家に匹敵する広大な空間)の一部を模様替えし始める。

 超高価な調度品ばかりなのに、配置と組み合わせに妙な既視感があった。


「お義母様とお義父様の家の居間に似ているかしら。配置だけだけど」


 確か、居間に大型のテレビがあった記憶がある。

 ベリルにスカウトされた後に帰省したときは、少なくとも俺はテレビを見ている暇がなかったので印象が薄い。


「できたにゃ」


「にゃ!」


 トーティが残像が発生しそうな速度で大型画面の前へ移動する。

 光翼人間に似た、しかし光翼ではなく後光を背負った人間が何かを喋っている。


「にゃ?」


 トーティの表情は『言葉は理解したが発言者の意図が分からない』ときの困惑顔だ。

 数秒してから自動翻訳機が言語の特定を終え、仕事を始めた。


『猫耳に対する保護活動に、銀河輸送が全面的な賛同と協力を表明しました。解説のアルゴル伯。これはどういう意図なのでしょうか』


『大部分の猫耳にとっては保護活動ではありますが、強力な存在から庇護を得ている猫耳にとってはいい迷惑でしょう』


 性別不詳の美形がアナウンサー。

 回答中の口髭が似合う男が、解説なのだろう。


『と、おっしゃいますと?』


『この活動……今はあえて猫耳保護活動と称しますが、猫耳は保護や援助を受ける代わりに、遺伝情報を含めた個人情報の提供を強制されます。これでは強みも弱みもすべて他人に知られてしまいます。失うもののほとんどない猫耳ならともかく、地位や財産を持つ猫耳にとっては非常に不利な活動です』


『なるほど。その活動に、強力な艦隊を複数所有する銀河輸送が関わるということは……』


『おそらく慈善ではない目的もあるのでしょう。これ以上は憶測にしかなりませんのでコメントしませんが、最近流行している食品の産地には持ちこたえてもらいたいですな』


『産地、ですか?』


『ほら、神聖猫耳王国という、いかにも若い国らしい国名のあそこですよ。私は魚が好きでしてね』


 あとの内容は雑談と別のニュースだった。

 トーティは初めて見た種族に驚き、他の全員は苦々しい表情か雰囲気になっている。


「サルくん。これ、いきなり攻めてくるんじゃなくて、僕らが絶対に勝てない状況を作ってから攻めてくるつもりかな?」


「連中の目的は殺しではなく捕獲です。戦えば勝てる状況を作った上で降伏勧告する、に一票です」


「サルや星系管制なみに性格がわりーにゃ」


「褒め言葉と受け取っておきましょう。しかし、銀河輸送ですか。ずいぶんと立派な名前に聞こえます」


「サルさん。私が雇われていた企業の上部組織の上部組織の……いくつ上か分からないけど、一番上の組織よ。規模は銀河通商なみ。地球人奪還社に宣戦布告した企業でもあるわね」


「……ど忘れしていました」


 ブルネットを低待遇で雇っていた企業は、俺たちと戦った結果、事実上潰れている。

 だからもう関係ないと主張しても、立場と戦力が強い側は受け入れないだろう。


「この『猫耳保護活動』とやらを潰しても、ブルネットとその子供に対する所有権を主張している恐れがありますね」


「潰すにゃ?」


「潰せる機会と名目があればすぐにでも。キンさん、猫の巣号への空母機能の追加と、改造後の猫の巣号に載せられるだけの猫攻撃機の準備をお願いします」


「いいけど、全部飛ばすとベリルの金が底をつくにゃ?」


「俺からも出しますし、出撃で儲けられるよう工夫します」


「任せるにゃ。こっちはこっちで進めるにゃ」


 キンは母港内にいる拿捕猫耳全員と、整備区で働く全員に対して指示を出してから、スッスにベリル号を操縦してもらって整備区へ向かった。


「サルくん。意見、だいじょうぶ?」


 いつもは容赦なく意見を求めてくるベリルが、今はかなり控えめだ。

 銀河通商なみの超大企業への対抗策を思い付く頭はないと思っているのだ。

 その通りなので腹も立たない。


「そうですね……。最終的には銀河輸送をなんとかする必要があるんですが、神聖猫耳王国から銀河輸送に宣戦布告すると、敵が不必要に増える気がします」


「私たちは地球人奪還社の生き残りを助けているし、そのことは救出時に外部に知られてしまっているわ」


 身内以外には酷薄なところのあるブルネットが『できれば見捨てたくない』という顔をしている。

 ブルネットにそう思わせるほど、地球人奪還社は猫耳たちのために血を流してくれたのだ。


「サルくん?」


「銀河輸送への宣戦布告にはもちろん賛成します。ただ、銀河輸送が猫耳保護活動に全面協力すると言ってるのは、陛下の懸念どおり、『神聖猫耳王国は優しくしてくれた相手に噛みつく恩知らず』という評判を俺たちに押しつけるのが目的な気がします。……どうしましょう?」


「「「にゃあ」」」


 トーティも含めて、猫耳全員が困った顔で鳴いた。


「あ、そうだ! こういうときは基本に戻ろうよ! 専門家に聞こう!」


「専門家ですか?」


「うん! キン姉! 今いい? キン姉のお友達に依頼したいんだけど……」


 神聖猫耳王国による侵攻作戦に、地球人の知恵と知識と悪意が加わることが確定した。



  ☆



 1週間後。

 俺、ベリル、スッス、そして船長猫耳20人と数人の拿捕猫耳が、猫の巣号へ乗り込んだ。

 巨大な『一枚板』の一部には、増設された発着設備と固定装置が並び、20隻の猫攻撃機がむき出しのまま固定されている。

 事故で外れても吹き飛ばされないよう、巨大シールドも展開済みだ。


『サル。にゃーのダチは裏切らねーけどミスはするにゃ?』


 機動要塞の改造と猫攻撃機の増産を1週間以内ですませただけでなく、軍事と政治と経済の専門家のコネまで提供してくれたキンが不安顔だ。


「俺たちがやられたことをそのままやり返すというのは、提案されるまで気付けませんでした。俺は良い案だと思いますよ」


「銀河輸送が大きくなるまでにめちゃくちゃ世話になった小国の中から、反猫耳の姿勢が強硬で、今でも銀河輸送の主要幹部を何人も輩出している国を選んで襲撃かあ。僕ら、悪者っぽくない?」


 そんなことを言っているベリルだがヤる気は十分すぎるほどある。

 猫耳社会でとんでもなく評判が悪い国らしい。


「陛下。銀河輸送から神聖猫耳王国に宣戦布告させるのが目的ですからね?」


 そのための侵攻作戦だ。

 精鋭パイロットの大部分と猫攻撃機のすべてと猫の巣号が出撃するので母港の守りは減る。

 しかし、母港にはタキオン砲が多数搭載され、タキオン砲を搭載している猫巡洋艦はすべて母港の守りにつき、トーティのペットだけでなく近くに居着いた2つの野良機動要塞までいる。

 船長猫耳が抜けた猫巡洋艦に新人船長や船長候補を臨時配置しているのは不安材料だが、射撃ではブルネットが、偵察と操縦では下僕たちがいる。

 仮に銀河輸送の正規艦隊が襲って来ても、俺たちが戻ってくるまで持ち堪えることは可能なはずだ。


「分かってるってばサルくん。でも、艦隊戦に勝った後は、拿捕しちゃっていいよね?」


「それはまあ、はい」


 必要以上のヘイトを向けられないことと、拿捕して艦隊の維持費を稼ぐことの両立は非常に難しい。

 でもやるしかない。

 俺はベリルと猫耳たちを宥めながら、自力センサーによる索敵と、猫の巣号の発進と操縦と、敵国首都惑星の防衛艦隊撃破とカツアゲの計画を、ぜんぶ並行して行っていた。

◆ CAT'S NEST MK3  ※追加装甲・追加兵装は未装備。各種装備を追加可能

船体:6 / 跳躍:4 / 航続:6 / 装甲:3 / 居住:5 / 船倉:3 / 兵装:3

◆ CAT'S NEST MK3(20/20)  ※空母機能を追加。猫攻撃機20隻を搭載

船体:6 / 跳躍:4 / 航続:6 / 装甲:3 / 居住:5 / 船倉:1 / 兵装:3




◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:2 *8 / 船体:1 *40 ※猫飛行機と猫攻撃機を生産

◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:2 *20 / 船体:1 *40 ※猫攻撃機を生産

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うぐぐ……脳内再生がやにねこに引っ張られる……
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