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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第5章 猫耳の国を作ります

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85/103

85.娘のペットは機動要塞

「「「おっちゃんしっかり!」」」


『だから言ったじゃないっすか! 今そっちに向かってるっす! 意識は失わないでくださいっす!』


 800年前の『地図』で興奮したのが悪かった。

 俺は拿捕猫耳たちによってベリル号に担ぎ込まれ、医務室に叩き込まれた。


 大急ぎでやって来たスッスの治療を受けた直後に気絶。

 目が覚めたときには24時間以上経過していて、ベリル号は母港の港湾区に係留されていた。


『サルくんさあ……』


 通信越しのベリル社長の目は冷たい。

 自分の体力を考えずに無茶をした俺への呆れだけでなく、トーティにとってもベリル運送にとっても『少なくとも今は』命綱である俺を危険に晒したことへの呆れもあるようだ。


『あとでブルネットお姉ちゃんに怒られてね。……例のものは受け取ったよ。これって、外と回線が繋がってる場所で見るとまずいんだよね?』


「残念ですが、我々のセキュリティは星系管制に確実にハッキングされてしまう程度でしかありません。確実に隠すためには、物理的に隔離するしかないでしょう。通常使用するものとは別にコンピュータを用意することを考えると、頭が痛くなりますが」


『キン姉がこれ以上仕事増やすなって怒ってたよ。学園部門と港湾部門から、商業区を早く建ててって言われてるから』


「商業区は後回しでいいのでは? 港湾区にも商業施設はありますし」


『それじゃ足りないんだって。遊ぶ場所としての商業区もね。こっちは学園部門から、泣きそうな顔で言われてるの。地表まで行くのはお金がかかりすぎるし、僕の孤児院時代みたいに自習だけじゃ、学生のストレスがたまるみたい』


 俺は少し考えた。

 腹が温かい。

 うにゃうにゃという、言葉か鳴き声か分からない音も聞こえる。


「ふう」


 俺の腹を枕にしている娘がかわいい!


『かわいいけどそういうのは後!』


「社長。いつの間に【見】ることができるようになったのですか?」


『僕にはそんな特殊能力はないけどサルくんの顔を見たらその程度は分かるよ! 話を戻すけど、情報の分析が遅くなるけど、例のものは物理的に隔離で確定でいい?』


「俺は物理的に隔離を推します」


『ん。それで決定だね。……稼ぐお金も使うお金も桁が上がりすぎて、たまに桁を間違えそうになるんだよね』


 ベリル社長の言葉は冗談めかした内容だが、響きは非常に真剣だ。


「気持ちは分かります。お互い気を付けましょう」


『うん……』


 金銭管理の面では、俺はブルネットに、ベリルはブラン秘書官に頼り切り(結構な頻度で命令を出す前に重大な誤記を指摘される)なので、とても共感してしまう。


【お父さん? 仕事しすぎ、めっ】


「はい。反省します」


 起き上がって、俺を心配しながら説教してくれる娘に対し、俺は未使用のハンカチを使って目脂をとってやるのだった。



  ☆



「このたびは誠に……」


 コランダム総司令の謝罪は、謝罪の意思という点では満点だ。

 光翼も使って、土下座に匹敵する低姿勢で、トーティを含む俺たち家族全員に謝っている。

 ただ、最も謝罪されているトーティはよく分かっていない。


【●●さん。えっと、ごめんなさい。何についての謝罪?】


「はい。わたくしが送信した『機動要塞のセキュリティ解除用データ』の中に罠が含まれていたことについての謝罪です。わたくしのミスにより、トーティさまを含む大勢の方の命を危険にさらしてしまいました」


【うん? おっきな獲物を拿捕する機会をくれたんだよね?】


「それは結果論で……」


 コランダム総司令の顔色は悪いが、俺やブルネットの顔色もそれ以上に悪い。

 トーティには、危機感が足りない。

 このまま育つと危険に気付かず飛び込んでしまいそうだ。


「姪ちゃん姪ちゃん。僕らは拿捕の専門家だけど、拿捕で失敗は有り得るし、失敗したら死んじゃうかもだよ?」


 ベリル社長は公の場でもトーティに甘い。

 それは身内の子供に対する情と、トーティの社会的地位に対する配慮もあるだろうが、それだけではない。


【でも被害なかったよ?】


「うん。被害をなしにするために、サルくんもブルネットお姉ちゃんも、僕も船長たちも拿捕班も、みんな一生懸命がんばってるの。サルくんなんて倒れるくらい頑張ってるんだよ」


【お父さん! 倒れるの、だめ!】


 トーティはコランダム総司令を完全に忘れて俺の腹部に抱きついてきた。


 3歳児は結構重いし、何よりトーティは猫耳だ。

 拿捕猫耳複数が俺の背後から支えてくれたから、トーティに情けないところを見せずに済んだ。

 なお、衝突時の衝撃でちょっと吐きそうになったのは根性で我慢した。


「はい。これからは気を付けます」


 目をあわせるのも大事だが、誤魔化しではなく本心から言うのが一番大事だ。


【ほんと?】


「本当です。頼りになる社長と、仲間たちがいますからね」


 損な役回り(叱る役)をしてくれたベリルに対し、動作としては『軽く頭を下げる』だが真剣に感謝する。


 トーティは俺とブルネットという大金持ちの子供としてうまれ、リゼーレという上位存在に可愛がられている。

 こんな立場では、間違いなく叱られる機会は少なくなる。

 叱ってくれる相手は、本当に貴重なんだ。


「えーっと、だからね」


 なお、ベリル社長の顔色も悪い。

 この場にはコランダム総司令を除いて身内しかいないが、動かせる戦力も社会的地位も雲の上の相手であるコランダム総司令に頭を下げさせたままなのは、あらゆる意味で怖いからだ。


【社長お姉ちゃん! 質問です! 仲直りの方法、おしえて!】


 感情にまかせて突き進むのではなく、頼りになる身内に積極的に聞く態度が、3歳児離れして素晴らしい。

 俺は感動で熱い涙を流し、顔を濡らした。


「僕に聞いちゃうかー。そっかー」


 微笑むブルネットに嫉妬の視線を向けられたベリルが、顔色をさらに悪くする。


「おめーらいつまで続けてるにゃ。遠くから客が来たなら歓迎するのが常識にゃ?」


 事態に気付いたキンが顔を出して強引に宴会を始めてくれて、本当に助かった。



  ☆



「サルくんの故郷に『将を射んと欲すればまず馬を射よ』ってことわざがあるらしいね?」


「怖いことを言わないでください」


 コランダム総司令ほどの権力者を雑にもてなすわけにもいかず、しかし毀誉褒貶が激しいコランダム総司令との関係を大々的に宣伝するのも危険なので、基本的に『身内の猫耳以外立入禁止』(例外は俺、スッス、リゼーレ、星系管制)の居住区に招くことになってしまった。


【きょーあくはんざいしゃ?】


「800年前、わたくしは一部の国から犯罪者として扱われていました。当時は若く、今より抑えが効かず、多くの方に影響を与えてしまったのです」


 一番の上座にトーティとコランダムがいる。

 最初はベリルとコランダムだったんだが、ベリルがストレスで体調を崩して拿捕猫耳に運び出されて、代理としてトーティが座ることになった結果だ。

 礼儀正しいが物怖じしないトーティと、欲望に忠実だが幼児に対して配慮する程度の良識はある(良識があるふりをしているだけかもしれないが)コランダムの相性は悪くない。


【大変だったね!】


 トーティは裏表なく気遣う。

 過去のやらかしをある程度知られているコランダムは、微笑みを浮かべてそれ以上の追求を躱そうとしていた。


「今もどったっす! 社長は単に寝不足とストレスっす。ブラン秘書官に泣き付いてるっすから、ほっとけば回復するっす!」


「スッス。社長のプライベートの暴露は控えめに」


「先輩、そこは暴露するなって言う所じゃないっすか?」


 カクテルが入ったグラスをスッスへ渡す。

 スッスはストイックに自分を磨くタイプだが、俺より内臓が強いので軽いアルコールなら問題なく摂取可能だ。


「先輩、どもっす!」


【きれい!】


 トーティの視線がグラスとその中身に釘付けだ。


「お嬢はまだだめっすよ。ノンアルコールのを今注文するからちょっと待つっす」


【はい先生!】


 スッスはトーティの主治医でもあるので、健康についてならスッスの指示に素直に従う。

 スッスは、あまり慣れていない手つきで、自分のタブレットから厨房へ注文を送っている。


「お嬢は結構食べてるみたいっすから、量と甘さは控えめにするっす。……先輩、第4分遣艦隊から報告っす。何隻か嗅ぎつけてきたみたいっす」


 第4分遣艦隊は例の機動要塞の監視と封鎖を行っている。

 猫ボートを総動員すれば母港まで牽引できるかもしれないが、猫ボートはカイパーベルトでの資源採掘に必須の存在なので、機動要塞回収に使うのは難しい。

 回収中に敵に襲われて破壊されでもしたら、食料品輸入に並ぶ稼ぎ頭である『猫輸送船の量産』が止まってしまうからだ。


【あの子だ!】


 トーティが猫耳幼児らしい身体能力を発揮して、忍び足で近付いてきてスッスのタブレットを覗き込んだ。

 尻尾が立って、先端が機嫌良く揺れていた。


「あの子?」


「先輩。お嬢は無機物でも【見】えるのかもしれないっす。逆に先輩は無機物が苦手っすね。まあ、苦手といっても自力センサーの性能がとんでもなく高性能なので、これまで気づけなかったっすが」


 前回の戦闘ログを解析し、スッスは俺の自力センサーの不得意分野の特定に成功した。

 無人兵器の強敵に襲われる前に気づけて、良かったというべきだろう。

 できれば、あの機動要塞との戦いの前に知っておきたかったが、スッスは極めて優秀なパイロットではあるが、医者としてはそこまでではない。

 完璧を求めるのは無茶というものだ。


「……今、機動要塞が動いたような?」


「先輩、いきなり怖いこと言わないでくださ……うわ」


『『『人類……ご無事、で』』』


 機動要塞の極々一部の装甲が明滅している。

 モールス信号と同じ理屈の『言語』での発言内容が、自動翻訳機により音声として流れている。


【お父さん!】


 凜々しく可愛らしいトーティが、俺に対して何かをねだる顔を向ける。


【スカウトしたい!】


「……えっ」


「一般的に価値観とズレてるのはリゼーレさまの影響っすかね。あっ、別に責めてるわけじゃないっす」


 表情を曇らせたトーティに対し、スッスは軽い口調で説明する。


「でも仲間は難しいっす。AIに人権を認める国は少数派っす。仲間にするなら、お嬢の所有物の扱いしか無理っす」


【うん! 先生、教えてくれてありがとうございます! えっとね、聞こえてる? 私、トーティ! あなたは?】


 『言語』での信号がないのに、トーティは話し続け……話が弾んでいる。

 まさか、あの機動要塞を制御するAIを、本当にスカウトする気なのか?


「猿谷さま。あの機動要塞ですが、修理する場合は大変な費用が必要になります。最低限の修理に限定しても、特大デュプリケーター1基分は必要です」


 静かに近付いてきたコランダムが、会話に夢中になっている猫耳なら聞き逃しそうな音量で俺に伝えてきた。


「す、すごい額ですね」


 俺は今、娘に『とても危険なもの』を感じている。

 物理的な危険ではなく、財政的な危険だ。


【お父さん!】


 一番近いのは『ペットを飼いたい』とねだる子供の顔だ。

 俺は、絶対に勝てない戦いに挑み、敗北した。



  ☆



 あれから1か月後。

 俺の体調が完全に回復し、優先度の高い『航路の安全確認』が終わった後、俺が乗る第1攻撃艦隊は遠くまで遠征した。

 800年前の地図に載っていて、現在の地図には載っていない、800年前は『ハイパーレーンが敷設されていた資源星系』が目的地だ。


 そこには、遠くから見ても、近付いても、恒星は見つからなかった。


「恒星、ないね」


「完全に無人です。800年は恒星が燃え尽きるには短すぎる期間です。あの『地図』に虚偽情報が載っていたか……」


「星系が破壊されたか、だね。恒星が消えると重力が大きく変化するから惑星もハイパーレーンもどこかに行ったのかな?」


 俺は自力センサーに集中する。

 恒星と比べるとあまりにささやかな『残滓』が、遠くまで続いているのが【見】えた。


「あっちか。サルくん、何があると思う?」


「トーティのペットの修理の足しになればいいと思います」


 俺とベリルは顔を見合わせ、大きなため息を吐いた。

◆ PET

◆ RUIN STATION ※損傷で能力低下

船体:6 / 跳躍:1 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4


◆ CREW

超AI  |船長Lv2 [頑固Lv4]



◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:4 防衛:8 遠征:13 ※第1と第2をあわせた評価


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *16 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |司令Lv3-[財産Lv9]

サル   |操縦Lv6-[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3+[医療Lv2]

司令猫耳 |司令Lv1 [拿捕Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2 [白兵Lv2]



◆ FRIENDLY FLEET

◆ SUPPLY SHIP ※エネルギー補給用装備を搭載。高価な船

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:3 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CREW

ノワール |諜報Lv2[霊媒Lv1]



◆ BERYL DETACHED FLEET

規模:5 防衛:6 遠征:10 ※第1から第4をあわせた評価


◆ CAT CRUISER *4

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER MK2 *20

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CAT TUGBOAT MK2 *8

船体:2 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]



◆ RESERVE

CAT DESTROYER MK2 *1

大型輸送船 *1

通信系強化型低速大型船 *1



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:8 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT CRUISER *4

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT MK2 *16

船体:2 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv3 [白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2 [白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv2 [衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv1]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

船長候補 |船長Lv1 [衰弱Lv1]

新人学生ズ|市民Lv1 [衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中



◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7)

権利:2 / 規模:4 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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― 新着の感想 ―
す、すごい! ちょっと改善したと思ったら全方位に特大の地雷が埋まってるのを 発見した気分だ そして社長は別の意味でのストレスで倒れる
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