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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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79.揺り籠から墓場まで

 戦後処理でクソ忙しい状況で、星系管制が逮捕された。


「ご協力に感謝します」


 見た目が中学生の光翼人間が俺に対して敬礼する。

 外見年齢はともかく、言動と雰囲気は厳格な役人のものだ。

 なお、彼あるいは彼女の所属は『銀河帝国国税局査察部』。

 星系管制の罪状は、脱税であった。


「こちらこそ、お手間をとらせてしまい申し訳ありません。銀河帝国の方の身分照会をする方法が限られていまして」


 母港が高速宇宙船の艦隊(なんと32隻もいた)に包囲されたときは終わったと思った。

 こっちは完全勝利はしたが補給しないとまともに戦えない状態だったし、向こうはすべての船がタキオン砲を装備していたからな。


「いえ、辺境でこれほどスムーズに物事が進むことは滅多にありません。さすが、選ばれた方々です」


 査察艦隊司令は、俺の娘が熟睡している部屋がある方向を見る。

 かつてリゼーレが逗留した場所であり、今でもときどき妙な気配がする……高い天井に残った光がいつまでも消えない大部屋だ。


「猿谷さん!? 匿ってくれてもいいんじゃないでしょうか!」


 星系管制はじったんばったんと暴れてはいるが、銀河帝国の高度技術で作られた腕輪と足輪と翼の拘束具は外れない。


「銀河通商内の政治抗争ならあなたに肩入れしたかもしれませんが、列強国家の法律に、解釈の余地なく違反しているなら庇えませんよ」


 俺はそう言って肩をすくめる。

 相手が圧倒的強者でも立ち向かうしかない(立ち向かわないともっと悲惨な境遇に陥る)状況は存在する。

 が、今回のはどう考えても星系管制が悪い。


「……政治抗争ではありませんよ?」


 戸惑ったように言う査察艦隊司令は、今の言動は演技かもしれないが、あまり政治ができるようには見えない。


「はい。我々ベリル運送は、銀河帝国にも帝国の国税局にも文句を言うつもりはありません。ただ、この……もう星系管制から解任されているかもしれませんが、ともかくこの星系管制が今後どういう立場になるか教えて頂けないでしょうか? こんなのでも、ベリル運送の大口出資者なのです」


 大口出資者なのも問題だが、職権濫用でベリル運送に便宜を図っていたのも問題だ。

 こっち(ベリル運送)が罪に問われないよう立ち回っているつもりだが万一があるし、地球の食材の密輸が許されなくなると(主に船長猫耳たちの)生活費がヤバイ。


 俺の質問に、査察艦隊司令が真剣な表情になった。


「罪状は脱税のみです。辺境での犯罪ですので、第7営業艦隊第1分遣隊司令の職も、この星系の星系管制の職も、解任される可能性は低いと思われます。ただ、脱税の額が額ですので、貴社への出資分が問題になるかもしれません」


「脱税といっても、猿谷さんたちの活躍でベリル運送の評価額が上がって結果的に法に触れてしまっただけなんです! 信じてください!」


 暴れるのを止めた星系管制が、しおらしい態度で訴えてくる。

 それに対して、査察艦隊司令は冷たい目で見下ろした。


「脱法的な節税を繰り返していた結果だ。言っておくが上は激怒しているからな? 大人しく追徴金を払っておけ」


「……お知り合いで?」


 俺が聞くと、査察艦隊司令は恥ずかしげな表情になる。


「不本意ながら親類です。中央でやらかして行方をくらましたと思ったらこんな辺境で……。いえ、今の忘れてください。失礼しました」


「猿谷さーん!」


 星系管制が銀河帝国の陸戦隊に運ばれていく。

 査察艦隊司令は俺へ丁寧に頭を下げてから艦隊に戻り、ベリル運送には一切のダメージを与えず立ち去った。



  ☆



「サルくん、終わった?」


 隠れていたベリル社長が顔を出す。

 ブルネットとキンも、何故か同じように顔を出している。


「ええ。列強のお役人としては穏やかな方でしたよ」


 辺境の一企業など眼中にないだけかもしれないが、無意味に暴力的でないだけでも非常に理性的だと思う。

 本人の言う通り、ここは辺境なんだ。

 一方的に攻撃して命や財産を奪おうが、圧倒的な力さえあれば法的にも正当化できてしまう。


 地方ブラックマーケット相手に完全勝利したとはいえ、圧倒的というには全く足りない力しか持たない俺たちでは対抗不能な相手だ。


「役人は苦手にゃ」


 キンは好き嫌いが理由のように言っているが、キンは言語化しないだけで判断はする種類の人間だ。

 彼女から見て『直接会うのは避けるべき』と判断する何かがあったのだと思う。


「私は前職で色々やってしまったから、理由をつけて逮捕されるのも有り得たのよ」


 ブルネットの場合はもっと深刻だった。


「以前聞いた内容だと、問題なさそうでしたが」


「私も昨日まではそう思っていたわ。これを見て、サルさん」


 ブルネットがひとつの画面にオークションサイトを表示させる。

 俺たちが開催したことのあるオークションとも、地方ブラックマーケットのオークションとも雰囲気が違う。


「ブルネットお姉ちゃん、これ、銀河通商の?」


「銀河帝国の官公庁オークションよ。星系管制の、ベリル運送への出資分の一部が競売にかけられているわ」


「うわほんとだ」


「あいつ、脱税分の金を用意できなかったんですか」


 ベリルと俺が覗き込む。

 画面に映ったのは自動翻訳がされた後の映像であり、ベリル運送の1パーセントにあたる出資持分の出品ページが映っている。

 入札額が勢いよく増えてはいるが、見慣れない通貨の単位なので実際にどの程度の額になるのかはよく分からない。


「サル。やばくねーか?」


「配当金の総額の1パーセントを持っていかれるだけです。この程度の出資分なら、取得されても大きなことはできませんよ。落札者は星系管制と違ってベリル運送に再投資しないでしょうから、そこは残念ですが」


「サルさん。違うわ。額が問題なの」


 画面の表示が更新された。

 具体的には、俺たちが普段使っている通貨で評価された額で表示されるようになった。


「……高額すぎませんか? 特大デュプリケーターは無理ですが、大型のデュプリケーターなら買えてしまう額です」


「ねえお姉ちゃん。株式公開しちゃう?」


 ベリル社長の目が『金』の色に光っている気がした。


「やめろ」


「駄目」


 キンの声もブルネットの声もドスが効いていた。


「……なるほど、そういうことですか。人材の評価額ですね?」


「サルが5割、下僕連中が2割だと思うにゃ」


 俺たちはベリル運送の備品ではないが、ベリル運送が生活や人権の前提になっている者が多く、ベリル運送の価値には事実上俺たちの価値が含まれる。


「私たちの娘のことが知られていたらこの程度では済まないから……いえ、これだけ注目を浴びてしまったということは、知られるまでの時間がさらに短くなったとみるべきでしょうね」


 俺の顔面がぴくりと動く。

 胃袋のあたりが嫌な感じで動いている。

 俺や下僕たちの能力が広く知られるようになり危険が増したと、ブルネットが告げているのだ。


「……うん。だいたい分かった」


 ベリル社長が落ち着きを取り戻す。

 目は冷静で、しかし冷静なだけでなく、深い思考と高度な計算をしている気配がある。


「まだ力が足りないんだよ」


 目の前にいるのはベリルなのに、いつものベリルより気配が強い。


「敵を殺す力。敵をその気にさせない力。敵を増やさない力。ぜんぶ、僕らには足りないんだ」


 戦闘機サイズの宇宙船1隻から始まったベリル運送は、タキオン砲搭載高速船14隻を擁する、ひとかどの勢力に成り上がった。

 俺もブルネットもキンも、もちろんベリルもそのことを誇りにしてきた。


 だが、俺たちの目の前にいるベリルは、理性だけでなく心から『力不足』と断言している。


「僕は……ううん、僕ら全員、まだまだ甘かったんだ。ブラックマーケット関連企業から船をぶんどった後は限界まで賠償金を背負わせて終わりの予定だったでしょ? それって、有効活用できるはずの資源を、資源のまま売り払うことなんだよ」


 ベリルは一度大きく息を吸って、静かに続けた。


「地球艦隊と白翼人間を巻き込んで、もっと儲けよう。今の僕らならできるよ」


「……ベリルちゃん。いいえ、今はベリル社長と呼ばせてもらうわ。言いたいことは分かるけど、それはリスクが大きな選択よ」


「ちっ。にゃーには判断できねーにゃ。サルは分かるにゃ?」


「リスクはどの選択にもあります。ですが……」


 ベリルを真正面から見ると、ベリルがにこりと微笑んだ。

 自信過剰でも自暴自棄でもなく、自らの判断への自信と、決断する強い意思を感じる。


 俺は天を見上げた。

 天井やその向こうの装甲の向こうを【見】ても、あるのは巨大な銀河のみ。

 だが、零細社長だった頃のベリルにスカウトされる前と比べれば、俺の手でも少しの影響は与えられる気がした。


「……ブルネット」


 今さら怖気づけば、今までの努力を無駄にするだけで終わるかもしれない。

 もしかしたら、当初の予定通りに無理なく軍拡しても、生き残ることができるかもしれない。


 未来は予想はできても予知はできない。

 だから、現状維持でも方針変更でも、決断し続けるしかないのだ。


「もうっ、分かっているわよ。サルさんがベリルちゃんに賭ける前から、私もキンもベリルちゃんに賭けてるの。今さら賭けから降りはしないわよ。勝率も配当も、一番いい賭けですからね」


「あの、お姉ちゃん? 僕、一生懸命考えて行動してるから、賭けとは呼んでほしくないなって……」


 抗議するベリルは、いつものベリルに戻っている。

 だがもう俺もブルネットも止まらない。

 ベリルに背を押されたからな。


「賭けではあると思いますよ」


「サルくんまで!」


 むくれるベリルの前で、俺とブルネットは悪巧みを始める。


「こういう話は星系管制の得意分野なのですが……」


「その分利益を持っていくでしょう? ブラックマーケットの設備と合法部分を利用して……」


 置いていかれたベリルの肩にキンが優しく触れて、邪悪な会議の場からベリルを引き離すのだった。



  ☆



 その日のうちに2つの開拓星系へ急使(猫巡洋艦)が飛び、全権を委任された使者を連れて戻ってきた。

 白翼人間からなる銀河帝国開拓団からの使者と、地球艦隊から派遣された使者が、ブラックマーケット関連企業が持っていた利権に値段をつけていく。

 値段といっても金だけではない。

 ベリル運送に差し出せる技術や人材、それぞれの星系での通行権など様々だ。


「いいでしょう」


「仕方ありませんな」


 無傷の低速船47隻と、それほど離れていない星系にある元ブラックマーケットという商品は、開拓であらゆるものが必要な両者にとって魅力的すぎた。

 タキオン砲と高速船(どちらも俺が頑張って飛行して拿捕猫耳も頑張って回収した)を確保したベリル運送に、大量の資金と技術が流れ込むことになった。


「うーん、ひょっとして交渉失敗しちゃった?」


 なお、交渉担当はベリルだが、実際にはブルネットに指示されて交渉をする操り人形状態だった。


「大成功にゃ。この技術があれば猫巡洋艦も猫駆逐艦も、今のコストのままで性能向上が可能にゃ」


「代わりにパーツの安定供給を要求されていますが、受けて良かったのですか?」


「パイロットと船長の養成を考えると、いきなり量産は無理にゃ」


「猫巡洋艦12隻、猫駆逐艦20隻に、猫ボートが16隻を建造予定なんて無茶じゃないかなー」


 ベリルは疑わしげな態度だ。

 獲得したタキオン砲と猫駆逐艦の数が一致しないのは、一部を母港に搭載させる予定だからだ。


「タキオン砲の数は足りてるにゃ」


「これからはマグロとブリの出荷も始まります」


 その名を出した瞬間、ブルネットとベリルとキンだけでなく、警備の拿捕猫耳の尻尾も激しく動いた。

 怒りではなく喜びが原因だ。

 まだ育ちきっていない魚を試食したときの味を思い出したらしい。


「全ての船が完成すれば、タキオン砲搭載高速船だけで26隻になります。大戦力ですよ」


「銀河帝国とはいえ、査察部に負ける規模の艦隊だけどね」


「列強の一部と比較が可能な戦力を持つに至った、というわけですよ。とうとうここまできましたね」


「確かにそうね」


 俺とブルネットは心底楽しげに笑い合う。

 とても楽しい。


「サルくんとお姉ちゃん、楽しそう」


「こいつら星系管制なみに邪悪な笑いをしやがるにゃ。そういえばベリル。学校始めるって本当にゃ?」


「うん! 地球艦隊から依頼されたのもあるけど、そろそろ学園を再開しないと、将来的に社員が不足するでしょ? サルくんたちの子供が育つ前には用意しておかないとだし」


 我が子が産まれ、我が子が育ち、教育機関の立ち上げ準備が進み、複数星系にまたがる巨大な商圏と強力な艦隊を持つ職場が存在し、まだ猫耳は埋葬されていないとはいえ、公園区には墓地まである。

 まさに『揺り籠から墓場まで』だ。

 俺たちの母港は、新たな故郷となったのだ。


「……すげーにゃ。ここに、うまれてから死ぬまでの全部があるじゃねーか」


 キンは圧倒されたようにつぶやき、画面ごしに母港を見渡す。


「物語なら、新天地を得て歓喜する場面なのでしょうけど、実際にその場面になってみると維持費のことで頭がいっぱいね。軍拡後に維持費がどれだけ必要か考えると、今から頭が痛いわ」


「同感ですが、今は喜びましょう。苦労するのは明日の俺たちに任せて、ね」


 家族と仲間と共に、俺は死ぬまで前へ進む。

◆ SHIPBUILDING SCHEDULE ※重要パーツは確保済。生産には資源が必要

CAT CRUISER *12

CAT DESTROYER *20

CAT TUGBOAT *16



◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *3 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [財産Lv8]

サル   |操縦Lv6-[衰弱Lv3] ※疲労状態

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2 [白兵Lv2]



◆ BERYL DETACHED FLEET

規模:3 防衛:4 遠征:9 ※第1と第2をあわせた評価


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER MK2 *7 ※猫巡洋艦へ改造予定

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:4



◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2 [白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

司令猫耳 |司令Lv1-[拿捕Lv2]



◆ RESERVE

◆ CAT DESTROYER *1

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT *8

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv3 [白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2 [白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1+[衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv2]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

船長候補 |船長Lv1-[衰弱Lv1]

新人学生ズ|市民Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1

通信系強化型低速大型船 *1



◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7)

権利:2 / 規模:3 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3




これで第4章完結です!

次話から第5章「猫耳の国を作ります」が始まります。

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― 新着の感想 ―
初期からは考えられないくらい成長したなぁ
順調に発展していきますね~ 次章も楽しみにしています。
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