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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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76.敵からタキオン砲を7門奪います

 ブラックマーケットの関係者は馬鹿ではない。

 倫理も法律も通用しない世界で『市場』を維持し続けるのは並大抵のことではなく、関係者の能力はかなり高いはずだ。


 なのに彼らは鶏肉に狂った。

 冷静に思考すれば明らかに罠なのに、ベリル運送からの取り引きの申し出に、すさまじい勢いで食いついたのだ。


「ただの鶏肉だと思うんですが」


 連中に売る鶏肉を試食した俺の感想だ。

 肉が厚くしっかりしていて脂もたっぷり。

 しかしデュプリケーターで作れる鶏肉もどきも近い味だし、ベリル運送の鶏肉と比べると、銀河通商のカートリッジを使った場合でも肉もどきは10分の1以下の価格だ。

 大儲けしている側の人間が言うのもどうかと思うが、こんなに高値で売れて、地方のブラックマーケットとはいえその経営陣の判断を誤らせるほどの味とは思えない。


「スッス。サルの舌は治療しねーにゃ?」


 これまで散々『試食』しているのに食べるたびに幸せそうな表情をするキンが、俺の表情を見て真顔でスッスに聞いた。


「何度検査しても先輩の舌は健康っす」


 スッスはナイフとフォークを上品に使い、調理された鶏肉の状態を確かめた上で口にする。

 音声をオフにすると、上品な光翼人間が優雅に軽食を味わっているように見えるのが不思議だ。


 ブルネットも十分に上品ではあるんだが、スッスと比較すると『付け焼き刃』の印象が少しだけある。

 俺やベリルはもっと『付け焼き刃』だ。

 俺は和食では厳しく躾られたが、本格的な洋食(特にカトラリーの使い方)は練習回数も実戦回数も数えるくらいなんだ。


 なお、キンは最初に会ってから今までずっと『雑』だ。

 実力と実績を兼ね備えたキンは、猫耳から強く憧れられる立場なので、憧れから『雑』さを真似る者が出てこないか心配だ。


「サルさんは、あの子と同じで、舌は敏感な方よね?」


「はい奥方さま。その通りなんっすけど、先輩も娘さんも鶏肉限定で味の違いが分かってないみたいっす。AIは『天然食の食べ過ぎで感覚が麻痺してるかも?』って推測をたててるっすけど、自分には判断できないっす」


「俺が地表にいた頃に食べていた鶏肉は、大量生産のブロイラーですよ?」


「本格的に研究すると面白いことが分かるかもっすね。自分はパイロットと医者で忙しいので研究は無理っす!」


 スッスは操縦技術を磨くために、超大企業から当時は零細企業のベリル運送に転職してきた変わり者だ。

 研究という時間のかかる仕事を命じれば、ストライキや、最悪の場合は転職すら有り得る。

 だからこれ以上の追求は難しい。


「ごっそさんにゃ。……ところでサル。そこのガキども、なんで落ち込んでるにゃ?」


 キンが指差す先には、『試食』というには多すぎる量をやけ食いしている船長猫耳たちがいた。


「第2攻撃艦隊の司令候補に選ばれなかったのがショックらしいです。猫語のオンオフがしっかりできるなら、候補ではあったのですが」


 艦隊司令ともなると、ベリル社長や俺とは別の場所で艦隊を率いることも多くなるはずだ。

 そうなると、猫耳の地位が低いこの銀河で、ベリル運送を代表して交渉を行う場面もあるはずだ。

 だから『猫語抜き』で話せる能力は、司令として必須の能力になる。 


「司令候補に選ばれたのはあいつだけか……。喜ぶべきなのに喜べねーにゃ」


 キンには司令猫耳への怒りはなく、人材不足への焦りがあった。

 そんなキンにブルネットが声をかける。


「キン。拿捕班と整備班も新人を入れる時期よ?」


「その新人を任せるつもりの奴が転属したんだにゃ。すげーつれーにゃ」


 育てた後輩を別部署に奪われた経験がある俺は、無言でキンに酒を奢ろうとして、ベリルとブルネットに怒られていた。



  ☆



「以上の理由で猫ボートの作戦への参加を提案します!」


 司令猫耳(正確にはその候補)は元気だ。

 拿捕班と整備班での引継ぎを終わらせ、司令としての訓練(船長としての訓練も含まれている)を進めながら、ブラックマーケット攻略戦についての建策までしている。


「鶏肉が入ったコンテナは猫ボートで牽引して、猫巡洋艦の船倉には地球人奪還社の陸戦隊?」


 ベリル社長は、提案の詳細データを確認しながら司令猫耳を真っ直ぐ見る。


「はい! 奪還社に相談して、前向きな返事をもらってます! 『地球人やその遺体がある可能性が高いので前向きに検討したい』とのことです!」


「うーん……。サルくん?」


 ベリル社長が頻繁に俺を頼るのは、ベリル運送という組織をひとりで動かすのが物理的な無理なだけで、ベリル社長が無能だからではない。


「はい。地球人奪還社の主力艦は速度が不足しているため本作戦には呼ばない予定でしたが、猫巡洋艦の船倉へ陸戦隊を乗せるのであれば有力な選択肢になります」


 俺の発言に、司令猫耳の表情が明るくなる。

 しかし俺の発言には続きがある。


「ただ、居住性が著しく低い猫ボートを、一時的とはいえ攻撃艦隊に加えるのはリスクが大きいです。特にパイロットの戦死リスクが深刻です」


 『対策は考えているのでしょう?』という思いを込めて、俺は司令猫耳を見た。


「はい! 僕の体力なら、戦闘を複数回した上で徹夜が可能と判断しています!」


 すごい自信家でもあったらしい。


「すごい自信家だね」


 ベリル社長も俺と同意見だ。


『『戦闘時の疲労の見積もりが甘い気がするにゃ』』


 純粋に心配しているのが9割、嫉妬が1割という雰囲気だ。

 司令猫耳の態度は変わらない。

 一瞬だけ尻尾が床を叩きそうになったが、床に触れる前に尻尾の動きを『冷静なときの動き』へ変更している。


 実に素晴らしい。

 俺があの年頃のときは、表情を取り繕うという考えすら持っていなかったからな。


「作戦決行の数日前から体調を整えるという条件で、猫ボートの作戦への参加に同意します」


 俺は援護射撃のつもりだったのに、司令猫耳がはじめて焦った表情になる。


「それじゃ勉強が遅れちゃう!」


「んー。この件はサルくんの意見を採用するよ。ブラックマーケットに奇襲攻撃をしかける可能性はあるから、司令猫耳は体調を維持しながら訓練を行うこと」


「……分かりました」


『『にゃ!』』


「煽るような子は昇進を遅らせちゃうよ? それじゃ僕はアポが取れ次第地球人奪還社に向かうから、後の準備はよろしく!」


 ベリルが一時的に留守にしても支障がないほど、ベリル運送は人材面でも充実してきていた。



  ☆



 ブラックマーケットを最初から襲撃する気はなかった。

 何度か鶏肉の取り引きをして、散々煽ってブラックマーケット側から開戦させるつもりだったんだ。


『『ぶにゃーっ!?』』


『こちら分遣艦隊! 全てのコンテナを放棄して撤退中です!』


 分遣艦隊の全員が無事なのは【見】えている。

 背後から迫るタキオン粒子にシールドも装甲もエンジンも破壊されて爆散する猫駆逐艦も【見】えるが、この船の避難も既に完了済みだ。


『高速輸送船1隻と猫駆逐艦2隻を喪失! 最後尾の猫巡洋艦がシールド喪失……今、敵射撃圏内を抜けました!』


 俺との意思疎通に関しては、司令猫耳は既に幹部級の実力者かもしれない。


「サルくん……。派手にやられちゃったね」


「相手に先に手を出させた上で乗組員への被害がゼロなのは理想的展開です。終戦条約でいくらぶんどれるか、非常に楽しみです」


 会話をしているうちにもう1隻猫駆逐艦がやられた。

 シールドも装甲も薄い猫駆逐艦は、射程と速度に優れたタキオン砲に弱いのだ。


『先輩。タキオン砲搭載の敵高速船は6隻。タキオン砲搭載の低速船が11隻っす。全部1門だけっすね』


「星系管制からの情報が正しいなら後7門かあ……。サルくん、どこにあると思う?」


「それはもちろん、ブラックマーケットの本会場です」


 攻撃艦隊が最大出力で減速する。

 光速の3万倍でブラックマーケットに近付きながら、各船4つのエンジンを進行方向へ全開にする。


『ベリル運送の主力艦隊だとぉっ!?』


『狂ってる。衝突したら最悪星系ごとっ』


 海賊が何か喚いているが聞く気も【見】る気もしない。


『こんな危険操縦、中央でしたら会社がまるごと海賊認定されるっすよ』


「スッス。ここはド田舎だよ? それにこの程度の操縦、星系内の光速戦闘と比べれば超イージーモードだよ」


『憧れのハイレベルパイロット生活が危険な操縦しまくり生活とは思わなかったすよ……』


 ベリルとスッスが平和な会話をしているうちに、ブラックマーケット本会場と、攻撃艦隊の4隻が、触れ合うような距離で相対速度がゼロになった。


「海賊どもの腐れた頭の中を【見】るのはきついですが……。タキオン砲7門の位置を特定しました」


 俺の言葉より早く、ケーブルを介して情報の受け渡しは完了している。

 3門のタキオン砲と1門の特大タキオン砲が、襲撃者を警戒『は』していたタキオン砲を、ブラックマーケット本会場から『切り飛ばし』た。


「社長。敵の防衛艦隊が混乱から回復するまで、最短で後50秒です。【見】るのはこれが限界です」


 俺は『エチケット袋』に派手に嘔吐した。


「了解! 悪いけど50秒後に攻撃艦隊の誘導お願い。猫巡洋艦はトラクタービームでタキオン砲回収が最優先! 地球人奪還社は無茶しないで!」


 すべての船とすべての乗組員が、俺の頭では追いつかない速度で動いている。


「全船撤退開始! トラクタービームは陸戦隊の回収を優先……よし、全員無事!」


 陸戦隊が『連れ帰った』地球人に無事な者は少ないが、それは今指摘すべきことではない。


「この体調では操縦は無理なので、操縦をよろしくお願いします……」


 7門のタキオン砲と、少数の地球人と、少なくない数の生体パーツを手に入れた俺たちは、一目散に母港へ逃げだす。

 ブラックマーケット側戦力が俺たちの母港に到達するのが早いか、俺たちがタキオン砲7門を戦力化するのが早いか、命がけのチキンレースが始まった。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *3 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3] ※衰弱進行寸前

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中



◆ BERYL DETACHED FLEET

規模:3 防衛:3 遠征:6 ※第1と第2をあわせた評価


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *8

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CAT TUGBOAT

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

司令猫耳 |司令Lv1-[拿捕Lv2]



◆ RESERVE

なし



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT *7

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2] ※猛勉強中

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1+[衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv2]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

船長候補 |船長Lv1-[衰弱Lv1]

新人学生ズ|市民Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1

通信系強化型低速大型船 *1



◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7)

権利:2 / 規模:3 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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