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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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75.欲しいものは敵が持っている

 ベリル運送の累計戦死者はゼロだ。

 しかもベリル運送は、海賊や企業相手に戦闘を繰り返しているのに『ゼロ』。

 その上、鶏肉生産で膨大な利益をあげ、急速な軍拡を進めている。


 これは、とてつもなく魅力的な『就職先』だ。

 船長を目指す者の数と熱意は、俺の予想をはるかに上回っていた。


「以上が船長職への志願者です」


 白毛猫耳のブランは非常に礼儀正しいだけでなく、俺に対してへりくだっている。


「俺への態度はもっと雑で構いませんよ」


 俺はタブレットに表示されているデータに圧倒されている。

 1つの大規模教育機関の在学生がほぼそのまま新入社員になったので志願者の数が多いのは覚悟していたが、実際の志願者の数は予測の5倍以上だったのだ。


「ご命令であればそのようにいたします。ですが、わたくしの立場で経営陣の方に不遜な態度をとりますと、未熟な社員が心得違いをする恐れがあります」


 ブランは礼儀正しいだけでなく必要な提案を恐れない。

 俺が地表で働いていた頃に当てはめると、俺をあっという間に追い抜いて出世するエリートか、あるいは煙たがられて転落する人間になる。


「ありがとう。助言に感謝します。……すみませんが茶を手配してください。これは、気合いを入れないと頭に入りません」


 ベリル社長が一時的に貸してくれた人材であるブラン秘書官は、俺の好みの温度の麦茶(正規輸入品)だけでなく、指を汚さず食べられる茶菓子も用意してくれた。

 タブレットには、志願者が作成した志願書だけでなく、ベリル運送に入社してからの行動や能力評価などが分かり易くまとめられて表示されている。

 ベリル運送のAIに任せたときより明らかに出来が良い。

 確認してみると、当然のようにブランの仕事だった。


(欲しいですね)


 もちろん人材としてだ。

 考えた瞬間、ベリルに「盗っちゃだめ!」と言われた気がして、ブルネットからは寒気のする笑顔を向けられた気がして、俺は「欲しい」という言葉を口に出せなかった。


 珍しい音が部屋全体に響く。

 俺が執務室として使っているこの部屋はベリル号の内部にある。

 普段は『正規の乗組員なら』許可なしで入れるので、この『来客を知らせる音』を聞くのは、最初に試しに動作させたとき以来かもしれない。


「失礼します!」


 俺が許可を出すと、顔馴染みが姿を現す。

 俺はつい『猫耳幼児』と認識してしまいそうになるが、出会った当時の『猫耳幼児』ではなく、引き締まった顔つきの『拿捕猫耳』だ。

 当時は庇護対象だった存在が頼もしい仲間になったのは、実に感慨深い。


「志願書を持って来ました!」


「……はい?」


 物理とデータで志願書を渡された。

 内容に問題はなし。

 拿捕班と整備班のトップであるキンからの許可も出ている。

 ただし『手放したくねーにゃ』というキンの怨念が感じられる許可内容だ。

 船長に採用されても兼任可とか、いつでも戻ってきてOKとかの条件が大量についている。


「あの、おっちゃん? 体調悪いならスッスを呼ぶ?」


「い、いえ、体調は問題ありません」


 俺は動揺を隠せない。

 拿捕ビジネスの根幹である拿捕の専門家であり、船の修理や建造や居住区の拡張など、絶対に信頼できる相手にしか任せられない仕事もしているのが拿捕猫耳だ。

 そのうちのひとりとはいえ、別部門への異動希望というのは大事件だ。


(いや待て。これは、考えてみれば当たり前の展開だ。これまで必要に迫られて仕事をしてくれていた子供が、将来を考えて働き方を変えていくのは当然……では、あるんだが)


 とても辛い。

 だが、苦楽を共にしてきた仲間の願いには是非協力したい。


「よろしければこちらへどうぞ」


「ありがとう! おっちゃんのところって、いつもこの飲み物だよね」


 ブランによってソファーに案内された拿捕猫耳が、茶と菓子を食べ始める。

 その態度は堂々としたものだ。

 古参だから威張っているのではない。

 この態度でも『控えめな態度』といえるほど、優れた技術と実績を持っているだけだ。


「種類を増やすとコストが上がるんですよ。……それにしても」


 目の前の拿捕猫耳と、そのデータを見比べる。

 シミュレーターと猫の爪号(艦載機)での操縦経験あり。

 移乗攻撃への参加は10回以上で稼いだ金も膨大。

 整備の知識と実績も、銀河通商ほど大きな企業は無理だが中小企業ならどこでも正社員として採用確実なレベルだ。


「猫駆逐艦の船長にはできません」


「なんでにゃ!? あつっ」


 拿捕猫耳は温い麦茶をこぼしかける。

 確実に合格する自信があったのに不合格になれば、猫語が出てしまうほど驚くのも当然だ。


「あなたの能力だと、猫駆逐艦の船長候補として使うのは人材の無駄遣いになってしまうんですよ。あなた、ベリル運送の外との付き合いもあるでしょう? しかも、整備を含む広範囲の知識もある」


「下僕のねーちゃんのおかげだよ?」


「下僕にやる気を出させたのも、下僕の献身にこたえたのもあなたです」


 俺が静かに応えると、拿捕猫耳が口を閉じ、誇らしげに胸を張った。


「艦隊司令候補としての訓練、受ける気あります?」


「第3分遣艦隊?」


 拿捕猫耳が小首を傾げた。

 船長猫耳たちの中から分遣艦隊司令が選ばれると思っていたのだろう。


「いえ、第2攻撃艦隊です。最低8隻の猫巡洋艦で構成するつもりの、現時点では計画段階の艦隊ですよ」


「……おっちゃん、僕、拿捕班だよ?」


 『冗談で言ってるなら超悪趣味だよ!』という目を向けられてしまった。

 一人称が『僕』なのは、ベリル社長に対する憧れがあるからかもしれない。


「艦隊司令の適性持ちが少ないんですよ。あなたには船長の実務経験はないですが適性はある。教養も十分。あとは経験を積むだけです」


 拿捕班からも整備班からも離れてしまうので、キンから心底恨まれそうだが、気にしないことにする。

 いくら努力しても才能がないとどうにもならない職というのは存在する。

 絶対に信用できる仲間の中に、必要な才能の持ち主がいたというのは、非常な幸運なのだ。


「おっちゃん。僕、第2攻撃艦隊の司令になれるならなりたいよ? でも、2番目の主力艦隊なら、おっちゃんが司令をするのが筋じゃないかな?」


 拿捕猫耳(今からは司令猫耳(候補))の言うとおりではある。

 俺にも司令適性はあるし、実績もベリル社長からの信頼も十分にある。


「自力センサーをフル稼働させながら艦隊指揮は無理ですよ」


 単純に、艦隊司令としてより索敵担当(生体パーツあるいは自力センサー)としての価値が高すぎるので、『艦隊司令として使うのはもったいない』のだ。


「というわけで、これからお願いしますね。シミュレーターは俺と同レベルで優先使用可能にしておきます。司令として身につけるべき知識については、専属の下僕に資料を渡しておきますので直接説明を受けて下さい。……しばらくハードな日々になりますから、頑張ってくださいね」


「うん! 任せて!」


 次代の幹部が、自信と野心と少しの緊張が混じった顔で宣言した。


「では最初の訓練兼仕事です。私が『志願者』の中から最低限以上の適性を持つ者を選びますから、その中から『訓練すれば猫駆逐艦を任せられる人材』と『今のまま猫駆逐艦を任せられる人材』を選んでください。今日中にこれだけお願いしますね」


 司令猫耳のタブレットに、半数の『志願者』のデータを送信する。

 その数の多さと、ひとりあたりのデータ量の多さに気付いた司令猫耳が、ちょっと涙目になって「にゃあ」と鳴いた。



  ☆



 俺と司令猫耳が『志願者』の中から選抜を進め、割合としては極少数の、人数としては3桁に迫る船長候補の訓練が始まった。

 シミュレーターを数台増やすことになり、整備班の主力のひとりを奪われたキンがすごい表情で搬入と導入を行ったりもした。


「適性持ちがこれほどいたのですか」


 通信ではなく直接母港にやって来た星系管制が、ジャージ姿のまま『商品を見る目』でシミュレーターを見下ろしている。

 分遣艦隊と比べると動きが鈍いが、本格的な訓練が始まってこれなら十分だ。

 猫の爪号での実機演習(高速戦闘に慣れるための演習)を何度か経験すれば、ある程度は解消されるだろうしな。


「パイロット適性持ちは、基準に満たない者しかいませんでしたよ」


 俺は肩をすくめた。

 パイロットが地球人(それも猫耳の奉仕種族になりたい連中)に頼りきりというのは正直怖い。

 ストを起こされた時点で詰むし、俺や猫耳に条件(地球人への布教に協力させられるとか)を突きつけられたら、俺やスッスだけでは自力センサーが足りないから受け入れるしかない。


「ベリル運送の人材の使い方が贅沢なだけですよ。列強でも、1個艦隊に複数のハイレベルパイロットを揃えるのに苦労していますから」


 星系管制の発言を聞いて、俺の胃が痛くなった。


「……ベリル運送に所属する自力センサー持ちの情報が、外部に漏れないよう工作しています?」


「はい。猿谷さんたちも、うっかり情報を公開しないよう気を付けて下さいね」


 借りを放置すると支配される。

 だから何らかの形で返す必要があるのだが、とても嫌な予感がある。


 星系管制は微笑みながら、大口出資者の立場で俺に要請を送りつけてきた。

 『俺個人のみ閲覧可能』な設定だったが、俺は仲間に隠し事をする気はないのでそのままブルネットたちと情報を共有した。


『はあ!? ブラックマーケットと取り引きぃ!?』


 星系管制が嫌いなので俺に対応を任せていたベリルが、通信で乱入してきた。


『あんたなに考えてんのよ! うち(ベリル運送)と連中ブラックマーケット、直接交戦していないだけで関係最悪だよ!? 確実に襲われるよ!』


 ベリルの猫耳は後ろに寝ていて、尻尾が猛烈な勢いで床を叩く音も聞こえる。

 完全に激怒していた。


「ブラックマーケットと直接ではなく、ブラックマーケットの運営者のフロント企業です」


 星系管制は澄ました表情だが、背中の光翼が邪悪な黒さになっている。


『同じことだよ!』


「はい。ベリル運送という宿敵が、鶏肉という魅力的な商品の生産手段を取り扱っていると直接確認したら、襲いたくてたまらないでしょうね?」


 星系管制の意図を察し、俺の胃痛が激しくなる。


「ブラックマーケット側から宣戦布告させるつもりですか。狙いは?」


「最近のベリル運送、拿捕ビジネスがあまりできていないでしょう?」


「いずれは武力によらない収入に切り替えていく必要があるので、喜ばしいことです」


 俺は建前で反論する。

 いずれは拿捕ビジネスをやめる気なのは嘘ではないが、早くても20年くらいは後だと思っている。

 宇宙は巨大で、海賊も絶対に殺しきれない数いるからな。


「……ブラックマーケットに、タキオン砲が大量入荷されたという情報があります」


 星系管制の発言に、俺もベリルも絶句した。


「地方のブラックマーケットの資金力では、購入が厳しい数と品質です。そこまで無理して買い集めたということは……」


『狙いは僕たちだね』


 ベリルは歯を剥き出しにして殺意をあらわにする。


 ベリルは海賊を憎んでいる。

 嫌いな星系管制に対しては口で文句は言うがいやがらせなどは絶対にしないし契約も遵守する。

 しかし、憎んでいる海賊に対しては、まったく容赦はない。

 故買屋としてその上前をはねるブラックマーケットに向ける憎悪も、海賊と同じかそれ以上だ。


「猫巡洋艦量産のためにタキオン砲を手に入れる、良い機会だと思いますよ?」


『サルくん』


「タキオン砲があれば猫巡洋艦を作れます。戦力拡大も、配送効率向上も、一気に解決可能です」


 悪魔のささやきに、俺もベリルも耐えることはできなかった。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *3 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

司令猫耳 |司令Lv1-[拿捕Lv2]



◆ BERYL DETACHED FLEET

規模:3 防衛:3 遠征:6 ※第1と第2をあわせた評価


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *9

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CAT TRANSPORT SHIP ※元海賊船。整備班が修理した

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:1 / 船倉:2 / 兵装:0


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]



◆ RESERVE

◆ CAT DESTROYER *2

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT *8

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2] ※猛勉強中

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1+[衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv2]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

船長候補 |船長Lv1-[衰弱Lv1]

新人学生ズ|市民Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1

通信系強化型低速大型船 *1



◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7)

権利:2 / 規模:3 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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星系管制のなんと邪悪なことか ジャージ姿なのが信じられない
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