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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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74.置き配を狙う海賊たち

 『置き配』の位置と到着時刻は当然のように海賊に流出する。

 金になるからだ。

 買い主が秘密保持を徹底しても、安い賃金で過酷な労働を強いられている労働者が、情報を金に換えてしまうのだ。


『ベリル運送は無敵じゃあねえ! ここで一気に仕留めるぞ!』


 海賊が大量のデブリを撒いて分遣艦隊を待ち受ける。

 デブリとの衝突でもベリル運送の艦隊は全滅しないと、ある意味信頼しているのかもしれない。

 なお、配置も配置の意図も、俺の自力センサーで【見】えている。


「社長。ここは全員で仕留めましょう」


 俺はベリル号の中で強く進言する。

 海賊というだけで許し難い相手だが、ベリル運送を舐めている海賊となると徹底的に潰して、拿捕で換金したい相手だ。


「サルくん。ここは分遣艦隊の子たちに任せてあげようよ」


 俺とベリル社長が乗っているベリル号は、鶏肉運搬中の分遣艦隊から見てかなり『後方』にいる。

 特大タキオン砲でぎりぎり支援可能な距離であり、援護を考えるならもう少し近づいておきたい。


「ですが……」


「任せないと育たないって言ってたの、僕じゃなくてサルくんだよ?」


『『にゃ!』』


『先輩。一本とられたっすね』


 船長猫耳ふたりとスッスから通信が届く。

 3人とも、それぞれ操縦しているのは攻撃艦隊の猫巡洋艦であり、主な任務はベリル号の護衛だ。


『下僕の自力センサーは通常モードへ切り替えるのにゃ! これ以上海賊の思考を【見】る必要はないにゃ!』


『進路変更完了にゃ! 全員射撃準備にゃ!』


 攻撃艦隊ではなく、分遣艦隊から通信が聞こえている。

 同格の船長がふたりいれば揉めそうなものだが、ベリル運送が小規模な頃は『同じ船の船長を時間交代でしていた』ふたりだから息は非常に合っている。


『『にゃぁっ!』』


 自動翻訳機を通しても言葉として認識できないのに、何を意図して言ったかは俺でもはっきり分かる。

 『全艦射撃開始。ぶっ殺せ』だ。


「社長!」


「残骸の予測進路は星系に向かっていない、と思う」


 ベリル社長は素早く計算を終えて応えてくれた。

 そうしているうちに分遣艦隊が光速の1万倍まで減速。

 光速の1.5万倍の砲弾の群れとタキオン粒子が、デブリが撒かれていない方向から海賊艦隊に降り注いだ。


『どこから』


『こっちが見えてい』


 海賊の通信が次々に途切れる。

 高速戦闘での相対速度はとんでもない値になるのが当然で、一度被弾すればシールドも装甲も関係なく打ち砕かれて死ぬのも当たり前だ。


『馬鹿な! こんな速度でっ、デブリを撒け、早くっ!』


 焦りながらも冷静に指揮をとる海賊もいたが、高速の11隻による一斉射撃は非常に強烈だ。

 かなり頑丈な戦闘用デブリの群れも、調子の悪さを運用で補っていたタキオン砲2門による防御射撃も突破し、圧倒的な運動エネルギーを持つ砲弾が10隻以上の海賊船をまとめて吹き飛ばした。


「社長。残りの海賊船は19隻です。ステルス船の反応はありません」


 分遣艦隊の射撃が当たったときには、既に分遣艦隊は凄まじい距離を移動している。

 生き残りの海賊船19隻は、どこを狙えば敵(ベリル運送分遣艦隊)に届くか知る方法を持っていない。


「ん。ありがとサルくん。あの子たち、一度反転して海賊に打撃を与えようとするかな?」


「予定の配達時間まで余裕がありません。このまま『置き配』作業へ移るようです」


 コンテナを積めるサイズの船倉があるのは2隻だけだ。

 猫巡洋艦が船倉を解放。

 拿捕猫耳が『小さなコンテナ』を1個ずつ外へ放り出す。


『進路とタイミング、どちらもばっちりっす! 邪魔がなければ『置き配』が指定の時刻に指定の場所へ届くっす! ……速度は光速の1万倍で危険っすけど』


「問題なしだよスッス。速度については買い主も同意してるからね。速度のせいで希望価格の5割くらいになっちゃったけど」


「社長。自力センサーがない企業でも、ここまで進路とタイミングと速度が予定通りなら問題なく……とまではいきませんが6割程度はキャッチできるはずです」


 小さなコンテナが星系に近付き、人が住んでいる惑星の近くにいる宇宙船が活発に動き出す。


『あくまで通行料だ! 全体の5分の1だけ、4つを確保するんだ!』


 聞き覚えのある、聞きたくなかった声と人間を【見】てしまった。

 黒髪の、いかれた思考を持つ海賊だ。


「野郎、ここで出てくるか。……失礼。どうにも嫌な奴が【見】えてしまいまして」


 俺が謝っているうちに、俺の延髄のケーブルを通して情報共有は完了する。


『げえっ!? あいつまだ生きてたっすか!』


「海賊、フロント企業、半ば海賊の勢力に影響力を持ってるみたい。買い主が抗議してるけど……口、うまいなあ。戦闘にせずに言いくるめてる」


 ベリル社長も不愉快な表情と尻尾の動きになっている。


「社長。奴が『置き配』の略奪をしている今なら、仮に奴の勢力が大きくても、大打撃を与えられると思います」


 俺は大急ぎで襲撃計画を立案中だ。


「サルくん。気持ちはすっごく分かるけど、分遣艦隊は配達を成功させたから、現時点であいつを殺す優先度は低いよ。契約上、僕らは『置き配』をした後の盗難や略奪には責任を負わないしね」


「すみません。では……」


「うん。近くにいる海賊の生き残りから、2隻か3隻摘まんでいこう。いい船ある?」


『だったら小型の高速輸送船と、通信系が強化されてるっぽい低速大型船がお勧めっす!』


 俺の自力センサーに頼らなくてもスッスが【見】て即座に判断できる距離に、十数隻の海賊船が生き残っている。


「いいね! それじゃ、攻撃艦隊で久々の拿捕、いこう!」


「「「おーっ!」」」


 船の数と装甲で負けていても、自力センサーと速度で圧倒している俺たちなら、相手に知覚されない距離から一方的に攻撃可能だ。

 目当ての船以外はエンジンを破壊して漂流させ、目当ての2隻は逃げだしたタイミングでエンジンを適度に破壊して一時停止に追い込む。


「船を置いて逃げるなら追わないよ?」


『てめぇらが初めて船を失った戦いで、同業者がほとんど皆殺しになったの、知ってるんだぞ!』


 小型の海賊船から超高速の通信が届く。

 通信機材の相場を確認した拿捕猫耳たちの尻尾が、上機嫌に揺れる。


「信じないなら別にいいよ? 撃破して賞金だけもらって、別の船を拿捕するだけだし」


 ベリル社長の発言を聞いた海賊たちが、海賊同士で非常に醜い言い争いを始める。

 『死ね』という言葉すら上品に聞こえる、子供には聞かせたくない内容だ。

 時間稼ぎの可能性もあるが、この時間を有効活用しているのはこちらも同じだ。


『『『おっちゃん。配置についたよ』』』


 攻撃艦隊に乗っている拿捕猫耳たちは、特に手練れの拿捕猫耳で、それ以上に稼ぐ気持ちが強い。

 既にスッスの猫巡洋艦に集合して、準備は万全だ。


「敵船Aと敵船Bを【見】た結果を送ります。あくまで皆さんの安全が最優先です。以前に星系内で派手に殺した後ですから殺しは避けたいですが、優先順位を間違えないようにお願いします」


『『『了解!』』』


 2門のタキオン砲と1門の特大タキオン砲で威嚇することで海賊の注意を引きつけ、スッスの猫巡洋艦が敵船A(小型の高速輸送船)と敵船B(通信系が強化された低速大型船)の至近を通過する。

 敵船の構造だけでなく、乗組員の人間関係から現在の精神状態まで把握している拿捕猫耳たちは、計画した俺が驚くほどあっさりと移乗攻撃を成功させて艦橋を制圧する。


「サルくん、顔色悪いけど、まだいける?」


「はい。海賊を【見】すぎて精神的ダメージが深刻ですが、母港までならもちます」


 いわゆる『エチケット袋』を口元にあてる。

 海賊がこれまでしてきた悪行も【見】てしまい、嫌悪と怒りで判断が狂いそうだ。


『『『おっちゃん。やっちゃう?』』』


 このデータは意識して共有から外しているのに、拿捕猫耳たちは俺の表情から察してしまったようだ。

 大出力レーザーガンを、いつでも撃てる状態で、拘束済みの海賊につきつけている。


「ベリル社長の命令次第ですよ。まあ、個人的にはベリル運送の評判と資産に繋がる方がいいですね」


 この海賊どもが海賊を続けるなら、いずれ必ず殺す。

 だから『今』見逃すのは、俺にとって許容可能な範囲内だ。


『『『おっちゃん。そんな顔で言うと海賊がびびって自暴自棄になっちゃうよ』』』


「うんうん。最近のサルくん、殺気が漏れがちだから気を付けてね?」


 ベリル運送の全員が、海賊の命を大事に思っていない。

 今回生かしたまま解放するつもりなのも、前回の『敗戦』で大量に海賊を殺した際についた『残酷』という評判を和らげるためだ。

 そのことを察した海賊たちが、気絶しそうな顔色で命乞いを始めていた。



  ☆



 攻撃艦隊は2隻を拿捕してから加速して分遣艦隊と合流。

 そのまま母港へ帰還した。

 ベリル運送の15隻に被弾の跡はない。

 拿捕した2隻はそれなりに壊れているが、修理は可能なはずだ。


「「次は第1と第2で別のところに配達したいにゃ!」」


 デブリーフィングのため集まった、本来は分遣艦隊司令である船長猫耳たちが提案する。


「んー。サルくん、意見」


「危ないと感じたら即撤退を徹底できるのであれば、私は賛成します」


「それじゃ僕も賛成。次に連れてく新人船長は君たちが選んでね。相性とか疲労具合とか注意して、絶対に全員つれて帰ることができるようにすること! いい?」


「「はいにゃ!」」


 船長猫耳たちは元気に返事をして退出していった。


「ブルネットお姉ちゃん、『置き配』の状況は?」


「例の黒髪海賊以外の海賊も乱入して、買い主の手に渡ったコンテナは半分だけね。半分しか正規の市場に出ないから、鶏肉の高騰は続いているわ」


「鶏肉が高く売れるのはいいと思うんだけど、お姉ちゃんは違う意見なんだよね?」


 ベリルは、育児疲れではない原因で深刻な顔のブルネットを見る。


「不健全な値段は不健全な状況を引き起こすわ。食料生産プラントでの鶏肉生産量も増えてきているし、多少値段を下げた上で大量に売りさばきたいところなのだけど」


「攻撃艦隊も配送に使いますか? 猫巡洋艦が3隻ありますから、分遣艦隊すべてと比べても1.5倍運べます」


「……魅力的だけど、できれば避けたいわ。攻撃艦隊がいつでも分遣艦隊の増援に向かえるという態勢を、できるだけ保ちたいの」


 俺の提案を、ブルネットが申し訳なさそうに却下した。


「それは確かに。覚悟が決まった海賊なら、それほど速くない船でも高速戦闘が可能でしょうから」


「うーん、でもお金……」


 俺とブルネットとベリルが結論を出せずに悩んでいると、作業着姿のキンがやって来た。


「おう、全員いるにゃ。猫駆逐艦を2隻仕上げたから報告に来たにゃ」


 素晴らしく早い。

 キンと整備班の能力とやる気は信頼しているが、かなり無理をしているのかもしれない。


「キン姉! 今回拿捕してきた小型高速輸送船の修理、急いでお願いできるかな?」


 ベリルの提案を聞き、俺とブルネットは期待の目をキンへ向けた。


「ベリルおめー、にゃーが何連勤か知ってるにゃ? まあやるけどにゃ。今が大事な場面ってのはにゃーにも分かるにゃ」


 俺は深々と、ブルネットとベリルは軽く頭を下げる。

 キンは『気にすんにゃ』という雰囲気で手をひらひら振ってから、戦利品を係留している港湾区へ向かっていく。


「拿捕班もそろそろ増員が必要ですね。ブルネット、そろそろいいのではないでしょうか」


「教育は進んでいるけど、古参の猫耳とは能力差が大きいわよ? ブランちゃんはよくやってくれているけど、それ以外は、少しね」


「お姉ちゃん。あの子たちの母親たちなら、かなり長期間訓練したからそろそろ大丈夫じゃないかな?」


 ベリル社長は、この場に身内だけしかいないせいか、社長ではなく妹の態度になっている。


「まだ軽い治療しかしていないから体力に不安があるのよ。でも、そうね。良い機会だから整備班の増員を、キンと相談しながら進めるわ。サルさんは新造する猫駆逐艦に乗せる子を選抜して。……それでいい? ベリルちゃん」


「うん!」


「承知しました」


 戦闘の方がよほど簡単だと断言できる、人事の仕事が始まる。


「採用に昇進……。地表での会社員生活の、よくない記憶が」


 海賊の中身を【見】たときよりも、俺は強いストレスに襲われていた。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *3 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中



◆ BERYL DETACHED FLEET

規模:3 防衛:3 遠征:6 ※第1と第2をあわせた評価


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *9

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]



◆ RESERVE

◆ CAT DESTROYER *2

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT *8

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2] ※猛勉強中

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1+[衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv2]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

新人学生ズ|市民Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1

小型高速輸送船 *1 ※修理中

通信系強化型低速大型船 *1



◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7)

権利:2 / 規模:3 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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