↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/103

72.鶏と魚で軍拡します

 あれから5ヶ月。

 娘がはいはいを始め、何でも口に含んで味を確かめるようになった頃。

 ブルネットの治療がついに完了した。


「おかえり、ブルネット」


「ただいま、あなた」


 治療の最終段階には10日以上治療ポッドにこもる必要があったので、直接顔をあわせるのは久しぶりだ。

 互いに歩み寄り、静かに抱きしめあう。

 無事に治療が終わって、本当によかった。


「あの、あのあの、本当にブルネットお姉ちゃん?」


「おいサル。それ、ほんとにブルネットにゃ? においがまったく違うにゃ!」


 ベリルが混乱し、キンが鋭い目でブルネットを凝視する。

 護衛でもある拿捕猫耳たちは、微量ではあるが殺意を表に出してしまったキンを止めるべきなのに、キンへの尊敬『ではなく』ブルネットの変貌のせいで動けない。


「奥方さま、だから言ったんっす。いきなり変えすぎっす」


 スッスが肩をすくめるが光翼は動かない。

 自力センサーに目覚めてからは、光翼をパッシブセンサーのように使って無意識に情報を集めているようだ。

 実際に危ないことになっているので、今は情報収集をしなくてもいいと思うけどな。


「そう?」


 ブルネットは、治療前と変わらない色の髪をかき上げる。

 その仕草は治療前と変わらないはずなのに、印象は違う。


 すべてが若い。

 肌は化粧していないのにみずみずしく、目のまわりには『くすみ』が存在しない。

 拿捕猫耳たちがしきりに鼻をむずむずさせているので、おそらく体臭もかなり変わっている。

 内臓も若返っているのかもしれない。


「キンさん。ブルネットの性格なら大幅に若返ると分かっていたでしょう」


「あなた?」


「んんっ」


 かなり強く睨まれて、俺は慌てて咳払いをした。

 親しき仲にも礼儀ありというべきか、口は災いの元というべきか、妻が相手だからこそ気を抜きすぎてはいけない。


「いやそうじゃなくてにゃ。顔ちがうにゃ!」


 キンが大声を出す。

 ベリルも拿捕猫耳たちも、何度も頷く。


 俺とブルネットは顔を見合わせ、「あっ」と揃って声をあげた。


「そう言えば言ってなかったっけ? 私、前職で徹底的に整形されてたのよ」


「定期的に整形してバランスが崩れるのを防ぐというのも不健康ですしね。ああ、この顔を選んだのはブルネットですよ」


 治療の開始前は『苦労を重ねた美貌の猫耳(30歳寸前)』だったブルネットが、今では『性格のキツさと情の濃さが内面からにじみ出ている健康的な猫耳(20代前半)』になっている。


「お姉ちゃんもサルさんも、いいの? 赤ちゃんが混乱しない?」


 ベリルは真剣に悩んでいる。

 スッスが通信を繋げて娘の顔が映り、ブルネットに対して『いつものブルネットを見る目』を向けた。

 それに気付いたベリルは安堵し、ブルネットは当然という顔をしている。


「サルの親も混乱するんじゃねーか? いやそれ以前に、ブルネットが整形だってこと、いつから知ってたにゃ?」


「最初の方からですよ。付き合い始めて1週間くらいしてからですね。ふたりきりのときに真剣な顔で告げられたので、もっとエグい話題かと思って怖かったですよ」


「もう。あのときは私も緊張してたのよ? サルさんが私の容姿にも惹かれてたのは分かっていたし」


 顔が違うのに、いつもの表情が以前よりも似合っている。

 今の顔は『幼少時から十分な栄養と休息をとった上で成長できたときの顔』なので、遺伝子レベルでブルネットにとって自然だからかもしれない。


「顔以上に、ベリル社長や猫耳の子供たちを育ててきた根性に惹かれてましたからね。まあ、当時の容姿『も』好みだったのは否定しませんよ」


 むずむずする。

 2人目以降を作るには、育てるための金はともかく守るための金が十分ではないので、我慢するのが辛い。


「サル。ブルネットも。子育て中なのに昔の猫耳みたいに所構わず盛るんじゃねーにゃ」


「失礼ね」


「失礼な」


 ブルネットと俺が抗議するが、キンだけでなくベリルも拿捕猫耳も、この件については俺たち夫婦のことを信頼していないようだった。



  ☆



「出発は少しお待ちください。現在母港周辺が混み合っています」


 ベリル社長の秘書官である白毛猫耳が丁寧に案内する。

 母港とその周辺のデータは最初から俺たちのもとへ届いてはいるが、渋滞がいつおさまるかの予想や、いつまでに出発すれば予定通りかを具体的に示してくれるのは有り難い。


「サルくん。船、増えたよね」


「増えたのは猫ボート7隻だけなんですが、母港とカイパーベルトを頻繁に往復する船ですからね」


 猫ボートが牽引してきた小さめの小惑星が特大デュプリケーターに『食われ』て、代わりに巨大なパーツと、使用されなかったものが排出される。

 最近地表での教育を修了した元学生の社員たちが、防御を優先したパワードスーツを着て、パーツの運搬と『使用されなかったもの』の排除を手分けして行う。


「あと8隻は作りたかったにゃ」


「キン。しかたがないでしょう? 白翼人間の注文に応え続けるためには、現状だと人材が足りないわ」


 ブルネットたち三姉妹だけでなく、主だった猫耳たちは差別主義者相手の商売に納得してくれた。

 納得せざるを得ないほど、予測される仕事の規模と報酬が巨大だったんだ。


「しかたねーから、拿捕班と一緒に勉強は進めてるにゃ。しっかし、まだ半年も経っていないのに、地球艦隊より早く開拓を進めてるにゃ。ドンビキにゃ」


「無人星系の所有権の買い取りから始めたのに、もうテラフォーミングが始まってるもんね」


 地球艦隊が開拓している、地球人が地球から(何らかの手段で地球という超絶高価な惑星を買い取らない限り)移住することになる星系は、地表都市の建設こそ始まっているが、テラフォーミングなどは何世代先になるか分からない。


「猫ボートで資源を集めて、特大デュプリケーターでパーツを量産して、それを白翼人間に引き渡すだけで大儲けだもんね。サルくんが言ってたように、我慢するだけの価値はあったよ!」


「社長。釈迦に説法でしょうが、今の利益は特需による一時的なものです。娘を守り切るための軍拡と、軍拡した艦隊や母港の設備を維持できるだけの固定収入を得る必要があります」


 猫巡洋艦換算で32隻の戦力と、それを支えるための固定収入が、最低限必要だ。

 娘のことがばれていない現段階でも、ベリル運送と敵対していると思われる勢力すべてを滅ぼすには、そのくらいの戦力『は』欲しい。


「サルくんがまた無茶言ってる……」


 ベリルは肩を落とす。

 それは本音でもあるが、ただの愚痴でもある。

 これまで、普通に考えれば不可能なはずのことを成し遂げて来たのが俺たちだ。

 今回もなんとかする覚悟と自信はある。

 クソほど苦労するという確信もあるがな。


「そういえばベリル。艦載機離着艦施設を増やしたけど、あれ、金の無駄じゃねーか? 猫の爪号(艦載機)はぜんぶカスタム化したけど、カスタム化しても高速戦闘では無力にゃ」


「キン姉。あれはもう、戦闘用じゃなくて演習用だから、あのままでいいんだよ。猫ボートや猫駆逐艦に乗りたい人が訓練するのにちょうどいい加速力だからね!」


 得意げに言うベリルに、キンは目を釣り上げる。


「一度カスタム化したものを改造するのはすげー面倒にゃ! 居住区の増設や商業区の新設もやらねーといけねーのに、これ以上仕事増やすにゃ!」


「にゃあ……」


 猫語で誤魔化そうとしたベリルが、キンに連れて行かれる。


「すまねーけど、挨拶に行くのはサルとブルネット……と赤ん坊だけにしてくれにゃ」


「護衛は連れていきますよ?」


 俺が声をかけると、キンが微妙な表情になる。


「本当に護衛にゃ?」


 行き先は地表にある俺の実家なので、バカンス気分の拿捕猫耳は多い。

 すまし顔をしていたが、尻尾は上機嫌に振られていた。



  ☆



 護衛(バカンス希望者)の数が多いので、昔懐かしい猫の巣号を使って実家の上空100メートルで停止させる。


「「「ここは我々が」」」


 俺の実家というより実家を中心に広がる宿泊施設を守る陸戦隊(全員が第7営業艦隊の光翼人間だ)が、俺を含む全員を慣れた様子で地表まで運んでくれた。

 陸戦隊(というより空陸対応歩兵)に特に厳重に守られた娘の周囲から、【ぱたぱた】という翼の音が聞こえた気もする。

 なお、途中でほとんどの猫耳が嬉々として飛び降りて、器用に着地していた。


「「んなっ!?」」


 出迎えた親父とお袋が絶句した。

 大幅に若返ったブルネットが娘を抱いている姿は、地表の常識ではかなり衝撃的なはずだ。


「お前っ! 子供を産んでくれた女を捨てやがったのか!」


「ブルネットさん、それはいくらなんでも若作りすぎない?」


「えっ、ブルネットさん? この子が?」


 頭痛をこらえるお袋の横で、親父があたふたしている。


「お義母様。お義父様。この程度の治療は宇宙では普通ですわ」


 平然と言うブルネットの後ろでは、スッスが何かを言いたそうにしている。

 【見】るまでもなく『びっくりするほど金をかけた治療』と思っているのが分かる。

 猫耳特有のセキュリティホールを念入りに潰したのにも金がかかってはいるが、それ以外の方が圧倒的に金がかかっている。

 ベリル運送の大口出資者のひとりであると同時に、ベリル運送の主要な人材のひとりであるブルネットだから払える額だ。


 親父もお袋もまだ言いたいことが山ほどある様子だが、ふたりの意識と視線は娘に向かう。

 初孫に満面の笑みを浮かべる……と俺は予想していたんだが、ふたりとも困った表情になっていた。


「びっくりするほど顔が息子似ね」


「女の子なんだからブルネットさんに似た方がよかったと思うがなあ。前は美人すぎて大変そうだが、今ならちょうどいい感じで……」


 迂闊な発言をした親父の脇腹に、お袋の肘が深く入る。

 陸戦隊に運ばれていく親父に、スッスが付き添っていった。



  ☆



「うちの馬鹿がごめんなさい」


 お袋が深々と頭を下げた。

 親父のやらかしなので、俺もブルネットに頭を下げている。


「率直に言ってくださるのはありがたいです。それに、お義父様に悪意がないのは分かっていますから」


「「悪意がないのが最悪なんです」」


 お袋と俺は口を揃えて、沈痛な表情で頭をより深く下げた。


 それから数分。

 あっさり回復した親父は茶と軽食の準備のため駆け回り、お袋は幸せな表情で孫娘を抱いていた。


「んー、最高! この子のためにも頑張らないとね!」


 お袋が親父を睨む。

 親父は下っ端じみた態度で、俺たちにデータを渡した。


「これが、食料生産事業ですか」


 ブルネットが親父とお袋が持ち込んだ計画書を精査する。


「ニワトリと、マグロと、ブリですか。率直に言って、驚くほど単純で……洗練されています」


 ブルネットの態度が、夫の実家を訪れた妻のものから、ベリル運送の首脳陣のそれに切り替わる。


「おそらく、地球艦隊で実験した技術ですね。地球艦隊が食料生産事業を独占しない理由を、伺ってもよいでしょうか?」


 気の弱い人間ならそのまま従ってしまいそうな『圧』があり、お袋も少し気圧されている。


「食料生産事業にまわすだけの水がない、という話は聞いたわ」


「ありがとうございます。サルさん、この話にはのっていいと思うわ。売り上げから数パーセント分の技術使用料をとられることになるけど、成功すれば長期に渡る財源になり得るわ」


「ブルネットが言うならその通りなのでしょうが、デュプリケーターで作る肉もどきや魚もどきがありますから、あまり高値では売れないのでは?」


 俺の言葉にブルネットとお袋が呆れ、娘が寝息を立て始めた。


「この子はもう……。昔っから、凝った料理を作っても気付きもしないで」


「サルさん。この件は私に任せてちょうだい。まず成功はするし、運が良ければ遠くの星系に輸出しても事業が成り立つほど人気になるはずよ。水はカイパーベルト産でも、卵はこの惑星産だから」


 自信と確信に満ちたブルネットに、俺は全面協力を誓う。

 なお、キンと地表の技術者が協力して『食料生産プラント』を完成させるまで20日。

 稼働開始後40日で最初の鶏が出荷され、それに予想より1桁上の値段がつくことになる。


「デュプリケーター産と味の違いは分かりませんが、輸出の際の護衛が分遣艦隊ひとつでは足りないのは分かりました。居住区の増築は中断して、軍備最優先にしましょう」


 鶏と魚をめぐる血で血を洗う戦いが、すぐそこまで迫っていた。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *3 ※1隻はスッス専用

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [財産Lv2]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中



◆ BERYL DETACHED FLEET *2

規模:2 防衛:2 遠征:5


◆ CAT CRUISER *1

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *3

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人船長ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT *8

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|事務Lv2+[射撃Lv3]

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2] ※猛勉強中

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2] ※猛勉強中

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1 [衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1 [信仰Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv2 [衰弱Lv2]

市民猫耳ズ|市民Lv1+[衰弱Lv1]

他種市民ズ|市民Lv1 [借金Lv1]

新人学生ズ|市民Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1


◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(7/7) ※艦載機離着艦施設を増強

権利:2 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
飯がうまいことは良いことだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。