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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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69.安全を買う銀河帝国

 低速船のオークションが始まった。

 オークショナー(競売人)が司会進行するような本格的なオークションではなく、一定時間入札を受け付けるだけのオークションだ。


「サルくん。入札されないね?」


「小型船だけ出品したので価値はあるはずです」


 動きがないので、ベリルはリゼーレの相手に戻り、ブルネットは授乳だけ行ってから治療ポッドへ入り、キンと整備班は猫巡洋艦1隻の新造にとりかかる。

 俺は、船長猫耳と拿捕猫耳と新人猫耳(船長技能持ち)と下僕と新人下僕に仕事を割り振っていく。


「これだけ海賊を殺してもまた出るんですよね」


 分遣艦隊は、8割以上の確率で海賊船を拿捕してくる。

 小型船がほとんどで、損傷が激しいことも多く、既存船の修理のためのパーツ取りに使ったり、地球艦隊や地球人奪還社へ可能な限り高く(どちらも貧乏なのでたいした額にはならない)売ったりしている。

 基本的に、分遣艦隊が稼ぐ金は、母港と艦隊の維持費で消えている。


「海賊が現れる場所が、母港から遠い場所になってるじゃないっすか。光速の1万倍で往復できるって、すごいことなんっすよ?」


 成果は出ているし、ベリル運送の艦隊の性能なら狩り場には困らないと言いたいのだろう。


「それはそうですが、いつまで海賊の相手をすることになるか考えると、憂鬱になるんですよ」


「銀河全体にいるっす。たぶん、きりないっすよ」


 俺とスッスは、同時に疲れた息を吐いた。

 それから少しして、画面に変化があった。

 売り出している小型船(葉巻型の小型宇宙船)に入札があったのだ。

 最低価格ばかりだが、その最低価格も少額ではない。

 全部売れたら、資金ショートの恐れはかなり低下するはずだ。


「んん?」


 違和感があった。

 競売の対象は小型宇宙船が8隻だ。

 尖った性能は持ってない宇宙船で、キンと整備班が丁寧に修理と整備をしたので悪い船ではない。


「スッス。値動きが妙じゃないですか?」


 8隻とも価格がほぼ同じだ。

 似たような状況でのオークションの落札価格を確認すると、俺たちの8隻は『安すぎる』額で入札されている。


「そんなこと言われても、自分、オークションなんて経験ないっす」


「新しく身につけた自力センサーで、何か感じませんか」


「先輩こそ何か感じないんっすか? 自分の自力センサーは先輩みたいに器用じゃないっす。金銭目的の詐欺とかは分からないっす」


 スッスは背中の光翼を広げる。

 リゼーレの巨大な翼と比べると可愛らしいサイズだが、通信や感情を受け止めているかのように淡く点滅しているときがある。


「……なるほど?」


 案外、スッスは敵意の他にも感じ取っているのかもしれないと思った。


「社長。今、いいでしょうか?」


『こっちは今おわったところ。租借権を10年延ばす代わりにカイパーベルト全域の警備を押し付けられちゃった。最近は地球艦隊の採掘事業は開拓星系中心だから、僕らが母港周辺で手広くやっても利益がないのに……』


 地表に住む地球人の意見は様々だが、宇宙に出て否応なく現実を思い知らされた地球艦隊は冷静に『地球退去後の地球人』のことを考えている。

 だから母港で生産した物資が売れるし、だからカイパーベルトでの採掘をベリル運送の新人社員が中心でやるはめになっている。


『ベリル運送がこの惑星を購入してくれるなら、カイパーベルトの租借権ではなく所有権を差し上げますよ?』


 今日の星系管制は制服姿だ。

 言動はジャージ姿のときと変わらないのに、威圧感は今の方が強烈だ。


『予定売り出し価格が倍になってるんだけど!?』


『ベリル運送のおかげで、星系とその周辺の治安が改善されていますから。おかげで第7営業艦隊としても、私個人としても儲かっています』


 星系管制の性格はかなりクソよりではあるが、正直ではある。


『サルくん。こいつのことはどうでもいいからね。何か急用?』


「例のオークションの件です。データは有線かつ高強度の暗号で送りました」


 社長の現在地は母港の通信施設で、星系管制の現在地は地球の静止軌道上の巨大衛星だ。


『なるほど。談合で買い叩かれる寸前ですね』


 最初にコメントしたのは星系管制だ。

 いつもなら社長が賠償を求める場面だが、社長は賠償請求よりもデータの精査を優先した。


『そう悪い値段じゃないと思うけど?』


『今から本社とケツモチに連絡します。面白いことになりますよ』


 浮世離れと神聖さを感じさせるリゼーレとは逆に、世慣れと悪意を感じさせる星系管制が嬉々として何かを操作する。

 それから数秒後。

 小型宇宙船8隻の入札価格が、劇的に更新された。


「えっ」


『サルくん。オークションを任せてるAIが壊れちゃったの? なんか入札価格が10倍……今100倍こえちゃったよ!?』


「母国をケツモチ呼ばわりはどうかと思うっす」


『言い換えても事実は変わりませんよ。しかしこれはなかなかの額ですね。キャッシュとして受け取るより、同等の価値のあるものとの交換にした方が、節税になるかもしれません』


 星系管制はなんでもないことのように言っている。


(正直、わけが分かりませんね。こういう問題でも頼りになるブルネットは、今は起こすわけにはいきませんし……)


 迷っている間に8隻とも落札された。

 その額は異常なほどの高額で、俺はストレスに耐えられず、呼吸を大きく乱してしまった。

 そんな額でも、地球の予定売り出し価格の100分の1より小さな額だった。



  ☆



 落札の数日後。

 俺とブルネットの家は、休暇中だった整備班の突貫工事によって改造されていた。

 敷地は変わらず、特殊な設備もないが、天井の高さが最低でも倍になった。


【なるほど。そのようなことがあったのですね】


 理由はリゼーレだ。

 光翼をスッスのようなサイズにするのは窮屈らしく、馬鹿でかいサイズの光翼を出しっぱなしにしているんだ。


【にゃ】


 俺の娘が小さな手を伸ばす。

 ぷくぷくした指が魅力的すぎて困る。


「サルくん。その表情は止めたほうがいいと思う。ちょっと、その、気持ち悪いかも」


「失礼」


 手で顔の下半分を覆って表情を整えている間に、巨大な光翼が器用に向きと高さを変えて、娘に触られにいっていた。


【列強や上位存在の争いは、多くの被害をもたらします。長く生きている個人や家系ほど、生き残りのため努力を惜しみません。安全な星系へ進出するための予算は潤沢なはずです】


 8隻を落札したのは、光翼人間の人権を保証している列強国家そのものだった。

 落札直後から、この星系で即座に活動するため、現地企業であるベリル運送に『デュプリケーターや高性能AIの代理購入と船への取り付け』が依頼された。


「通商のえらいひとの入札をものともせず8隻とも購入っすか。金はあるところにはあるもんっすね」


 麦茶をリゼーレに渡すときのスッスは、畏怖と恐怖で、少し震えていた。


【ありがとうございます。……心地よい荒々しさです。次からは温度は沸騰寸前でお願いします】


「はいっす……」


 これもパワハラかもしれないと思った。


「キン姉。あの8隻、今になにしてるか分かる?」


 例の8隻は母港から姿を消している。

 ときどきカイパーベルトに現れて、高額の手数料を支払い採掘しているという情報が届いている。


「星系から少し離れた場所に何か作ってるにゃ。たぶん、馬鹿でかいビーコン?」


 地球も母港も位置は公開されている。

 ビーコンを作っても意味がない……いや、まさか。


「開拓団でも送り込むつもりですか?」


 理性は『あり得ない』と断定しているのに、俺の感覚は『あり得る』と感じている。


【はい。猿谷さまの出身惑星を買い取るほどの予算はつかないでしょうが、星系開拓の可能性を探るための船団は、既に出発していると思われます】


「サルくん。地球艦隊のひとたちが、開拓中の星系から追い出されちゃったりする?」


「そこは文明国としての理性を期待したいところですが、地球人のほとんどには人権がありませんから……」


 地球艦隊などが稼ぐことで人権を買い戻した地球人も現れてはいるが、その数は極小だ。

 宇宙人との交渉に必要だから、交渉担当者の人権を無理して買い戻している場合が多いらしい。


【猿谷さまたちが移住すれば消えてなくなる『安全な場所』です】


「なるほど。俺たちがここに定住するつもりなのはまだ知られていないはずだから、それでなんとか交渉しろと。ご助言ありがとうございます」


【ノーコメントです】


 リゼーレは完全にくつろいでいるように見えたが、娘が輝く羽を引っ張ろうとしているのを見て、シリアス顔になった。


【猿谷さま。ブルネットさん。この子の名前についてですが】


 ついに来た。

 俺もブルネットも内心緊張して、しかし笑顔の維持を心がける。


【銀河に咲き誇る花という意味を込めて、花子という名前を提案します】


 俺個人の趣味にはあう。

 つまり、ブルネットたち猫耳にとっては論外ということだ。

 明らかに機嫌を損ねたブルネットをどう宥めるか、立場の差に加えて巨大な恩まであるリゼーレ相手にどう断るか、俺は必死に考えた。


 が、俺の行動よりも、俺の娘の行動の方が早く、激烈だった。

 不機嫌そうに羽から手を離し、【ぷい】とリゼーレに背を向ける。

 そしてブルネットに顔を擦り付けてから、ブルネットの腕の中で寝息を立て始めた。


 リゼーレの顔は悲嘆で染まり、巨大な光翼が【へなへな】と力を失って、畳の上に広がった。



  ☆



 オークションで得たアホみたいな額の資金は、長期レンタル中だった特大デュプリケーターの買い取りに使われた。


「ちょ、長期的に見れば、これが一番、得だから」


 ベリルが激しく動揺していたのも無理はない。

 俺もブルネットもキンもスッスも、額が大きすぎて思考が半ば麻痺していたしな。


「おつかれ、ベリルちゃん。今日はゆっくり休んで」


「にゃぁ」


 娘が寝ている新生児用ベッドの隣で丸くなる。

 なお、リゼーレは銀河通商の陸戦隊に回収された。

 ショックで動かなかったので本当に楽だったと、陸戦隊の光翼人間から何度も感謝された。


「これで例の列強……銀河帝国でしたか。とにかく、新たに巨大な勢力がこの星系に現れるわけですか」


 俺の言葉に、スッスが肩をすくめた。


「1年や2年で何かが大きく変わるって話じゃないと思うっす。通商を通じた先輩のスカウトがうまくいかないから、間接的な利用に切り替えただけな気もするっす。そもそも、開拓ってとんでもなく時間かかるっす!」


「一番割をくうのが地球艦隊かもしれねーにゃ。金持ちが近くにいたら、必要な物資を全部買われてしまうかもしれねーにゃ。……ちょっと気の毒にゃ」


「そこまで面倒は見れないと言いたいけれど、事情の説明くらいはしてあげた方がいいかしら」


 スッスもキンもブルネットも、リゼーレが立ち去った後は緊張感が薄れている。

 リゼーレは物理的にも社会的にも強力すぎるから、仕方がないことだ。


「キン姉。特大デュプリケーターの調子はどう?」


 ベリルは『わくわく』している。


「おう。レンタルから正式に所有になったことで、いろいろ制限が外れたにゃ。高度な技術が必要なパーツは設計図を買わねーと作れねーのは以前と同じにゃ。でもデュプリケーターを直接いじれるのはでけーにゃ!」


 特大デュプリケーターの映像がリアルタイムで中継される。

 以前は小さく砕いた鉱石を投入していたのに、今は『雑に切っただけの』小惑星を直接突っ込めている。


 生産されるパーツに異常はない。

 今回生産されたトラクタービームは、スッス専用の猫巡洋艦にとりつけられる予定だ。


「タキオン砲の設計図があれば、猫巡洋艦を量産できるんっすけどね」


「強力な武器ですから、高額なだけでなく、その他の制限もきついと思いますよ。とはいえ……」


 元小惑星を食らい、必要なパーツと大量のゴミを吐き出す特大デュプリケーターに視線が釘付けだ。


「後は資源さえあれば宇宙船を量産可能です。船に乗せるためのメンバーも、地表と母港で育成中。あと少しです」


 あと少しで、爆発的な軍拡が可能になる。

 いざというとき娘を守るだけの戦力を持つ日が、一気に近付くんだ。


「サル。焦るんじゃねーにゃ。大量に採掘するなら採掘専用船も必要にゃ。猫巡洋艦と猫駆逐艦を量産するなら、いずれは指揮用の船も必要にゃ。……勢いだけで突っ走ったらコケちまうにゃ?」


「……確かに。注意してくださり、ありがとうございます」


 俺は頭を下げると同時に、自分自身に『焦りは禁物』と内心で言い聞かせるのだった。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:4 遠征:5


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]



◆ BERYL DETACHED FLEET *2

規模:2 防衛:2 遠征:5


◆ CAT CRUISER *1

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *3

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人猫耳ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT CRUISER ※スッス専用・建造中

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:1 *7


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [借金Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]※疲労状態

スッス  |操縦Lv3 [医療Lv2]

ブルネット|射撃Lv2+[事務Lv2]※治療中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1 [衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1+[衰弱Lv2]

救助猫耳ズ|学生Lv1+[衰弱Lv1]

猫耳幼児ズ|学生Lv1 [猫語Lv1]

学生猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]

他種学生ズ|学生Lv1 [借金Lv1]


◆ GUEST

野良猫耳ズ|白兵Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1


◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:2 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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