67.海賊だって生きているんだ!
「タキオン粒子はなし! ぜんぶ砲弾っす! 速度は光速の2千倍!」
スッスの報告が妙に早い。
俺が自力センサーで捕捉して、ケーブルで宇宙船に入力し、それでようやく知ることができるはずなのに。
「僕は敵の攻撃を撃ち落とすのに専念する! サルくん、スッス、あとよろしく!」
「「了解!」」
俺とスッスは即座に権限委譲を受け入れた。
「砲撃の半分以上が特大船(船体:4)からっす! 大砲いっぱいでトゲトゲっす!」
「独特な形状ではありますね」
ベリル号と先代ベリル号がタキオン粒子を連射する。
敵の砲弾の『破壊』は目指していない。
低威力の攻撃を端に当てて、敵弾の進路を『少しずらす』ことを狙っている。
「スッス、そろそろ進路変更を。正面から撃ち合えば、敵弾をすべて無効化する前にこちらのエネルギーが尽きます」
俺が操縦までしていては、自力センサーでの偵察が間に合わない。
「了解っす!」
スッスは逃げるのではなく、敵弾を迎撃しやすい位置へ移動する。
俺もベリル社長も、スッスとはかなりの時間を一緒に戦ってきた。
社長は阿吽の呼吸でスッスの操縦に合わせて敵への迎撃を続行。
一部の迎撃は、敵の攻撃ではなく、敵の特大船の艦橋へ向かった。
(なんだと?)
狙いは完璧だったのに、シールドの範囲を小さくした大型船(船体:3)2隻が盾になる。
特大船の装甲を貫いて艦橋を焼き尽くすだけのエネルギーが込められていたのに、1隻のシールドを貫くだけでエネルギーの8割が消費され、残り2割で装甲の一部が砕け散ったが、大型船内部までは届かない。
「敵大型船に攻撃兵器がない可能性大!」
一瞬『見』ただけで船の性能を把握できてしまうほど、海賊たちは自らの船の防御力『のみ』を誇っていた。
「面倒っ」
社長が叫ぶ。
ベリル号から極小のタキオン粒子が、装甲が砕けて無防備な箇所に当たって敵大型船を貫通する。
いくつかのエンジンが停止し、敵大型船が変な方向へ加速を開始。
光速の2千倍を出したまま何もない方向へ消えていく。
あれでは、よほどの幸運がないと救助はされないはずだ。
『にゃ!』
見本があれば普段以上のことができる。
船長猫耳はスッス並の見事な回避(実行しているのは下僕だが命令したのは船長猫耳だ)ともう1隻の敵大型船への攻撃を同時に実行。
特大タキオン砲搭載のベリル号が2撃で漂流させた船と同型の船を、タキオン砲による3連射で撃沈させることに成功した。
だが、それは敵の予想の範囲だったかもしれない。
ベリル号と先代ベリル号で仕留めきれなかった弾幕が、俺たちの母港めがけて進み続けている。
その狙いは正確だ。
強力な加速が可能な宇宙船と、移動はとても大変でしかも低速な母港では、当てるための難易度が違いすぎた。
『久しぶりの実戦ね』
ブルネットの声と殺意が戦場に響いた。
母港の動力源と直結したタキオン砲が、艦載のタキオン砲とは違ってエネルギー効率が劇的に下がってしまうほど『膨大すぎる』エネルギーを注がれる。
そして、壮絶なエネルギーを持つタキオン粒子を『ぶっ放す』。
このタキオン粒子の速度は光速をわずかに超える程度で、超光速戦闘では『止まっているようなもの』だ。
この使用法のタキオン粒子は、デブリ網と役割が同じだ。
遠距離からの超高速戦闘を完全に防げはしないが邪魔にはなる。
圧倒的な攻撃力の前には無力なのも同じではあるが、母港の動力源から最大出力を注いだタキオン粒子の攻撃力は、光速の2万倍の攻撃にも対抗可能なほど強力だ。
『母港への衝突コース』に乗っていた砲弾の弾幕と、低速タキオン粒子が正面衝突する。
空間が悲鳴をあげるような衝撃が発生して砲弾が砕け散り、砕けた砲弾の欠片があちこちに飛ぶ。
その1つだけでも母港を破壊するには十分で、惑星も当たりどころによっては致命傷かもしれない。
『狙う必要はないわ。指示された範囲への攻撃を続けなさい』
ブルネットからの命令は簡潔だ。
母港から出撃して母港周辺への展開を完了した、ベリル号や先代ベリル号や猫巡洋艦や猫駆逐艦ほどの加速力や航続力のない低速船が、後先を考えない迎撃攻撃を開始する。
母港近くでの衝突はなく、地球に向かう進路上で何回か衝突と爆発が発生した。
放っておいても銀河通商第7営業艦隊が防御しただろうが、これで地球への危険は皆無だ。
『ブルネット。弾の無駄遣いじゃねーか?』
『タキオン砲に頼りすぎるのは危険よ。無理な設定で動かしているでしょう?』
『そりゃまー、戦闘が終わったら徹底的に整備しねーと次の戦いで何がおきてもおかしくねーにゃ』
ふたりの声から緊張感が消えている。
敵の初撃を防いだだけでなく、敵艦隊の進路が『母港への衝突コース』から『母港の近くを通り過ぎて撤退するコース』に変わったからだ。
特大船が光速の2千倍で母港に突っ込んでくるなら極めて危険だが、砲弾だけならどうにでもできる自信があった。
「今謝れば全財産を取り上げるだけですませてあげるよ!」
敵船によびかけるベリルは笑顔だ。
しかし、通信に映っていない猫耳と尻尾は非常に獰猛だ。
『それはこちらのセリフだ! 海賊だって生きているんだ! 殺したら殺されるだけだ!』
俺は黒髪の男を『見』る。
心の底から、自分たち海賊が正しいと信じているように『見』えた。
「先輩、顔色悪いっすよ」
「わけの分からないものを見てしまって混乱しているんですよ」
手短に『見』たものを伝えると、スッスの表情も光翼も数秒の間、停止した。
スッスを『見』る気はないが、俺と同じように黒髪男を気持ち悪く思っているのが分かる。
「スッス!」
「っす!」
ベリルに叱責されたスッスが操縦を再開する。
一度相対速度をゼロにしてしまえば、特大船が放つ砲弾は亜光速にも満たない。
スッスは軽々と回避して、敵特大船の後ろにぴたりとつけようとした。
「忠誠心だと?」
海賊の小型船3隻を『見』て、俺は眉間にしわを寄せた。
ベリル号に自分が乗る船をぶつけてでも特大船を守ろうとする海賊に、混じり気のない忠誠心を『見』てしまったからだ。
『ボスはやらせねえ!』
『これ以上、ベリル運送の好きにさせるかよっ!』
『船長のかたきぃ!』
通信で悲壮な覚悟の声が届き、俺とベリルが失笑した。
「なにそれギャグ?」
「好き好んで海賊をしている連中が言うとこれほど滑稽とは。記録して別の海賊をおちょくるときに使いましょう」
『お前たち、どこまで外道なんだ!』
激昂する男は、細部までじっくり観察すると若くも見える。
肌も髪も『地球で攫われてからの過酷な生活で傷んだ』ように感じられるのに、俺の自力センサーはうっすらとだが『疑惑』と『脅威』を警告している。
「今の言動を降伏勧告拒否と判断するよ。これより艦橋の破壊を開始する!」
ベリルの発言は事実上の皆殺し宣言だ。
海賊を殺すことは、俺も大賛成だ。
だが……。
「社長。俺たちが拿捕を狙うことまで計算した罠が仕掛けられている気がします。拿捕班の投入は普段より遅らせてください」
「ん」
声と同時に了承の信号が届く。
おそらくベリル自身も怪しさを感じていたから、俺の進言が即座に受け入れられたのだろう。
『ボス、脱出を!』
『すまない。仇はとる!』
特大船が加速を始める。
ベリル号と比べれば加速力は貧弱で、このまま加速しても光速の1万倍に到達するまで数分かかりそうだ。
しかし、この戦場にいる味方側の高速船は、そろそろエネルギー切れだ。
出撃時点でエネルギーが満タンの半分以下だったから仕方がない。
『『『にゃ! に゛ゃ! に゛ゃぁっ!』』』
この場にいないはずの猫耳の声が響いた。
攻撃艦隊、第1分遣艦隊、第2分遣艦隊の3艦隊合計10隻が、猛烈な加速で戦場の端(俺の自力センサーで感知できるぎりぎりの距離)に現れたのだ。
船長猫耳たちの髪は逆立ち尻尾も荒れ狂っている。
妻と子がいる母港を狙われて殺意満々なのは俺も同じだが、個人によって態度の出方はかなり違う。
(逃がす気はありませんよ)
逃走中の特大船『ではなく』、その進行方向を『見』る。
普段『見』る距離より離れているので疲れが激しく、しかし疲労した甲斐はあった。
「高速船。おそらくタキオン砲装備の大型船が4隻います。周辺にデブリ網が展開済み。真っ直ぐに追うと、敵の特大船は通り抜けて、俺たちの船はひっかかるよう展開されています」
ベリルから、歯ぎしりの音が一瞬聞こえた。
この状況で追跡すればこちらにも被害が出る。
ベリルは涙まで浮かべて、追撃しないよう命令を出す。
『ここは通さねーぞ!』
『鹵獲するつもりなら来やがれ! ぶっ殺してやるよ!』
『へへっ。これで船長への義理が……ボス? え、なんで?』
唐突に、戦場に残っていた海賊の小型船3隻が内側から爆発する。
拿捕班が近づいていれば、あるいは中に侵入していれば多数の被害が出たはずだ。
『ベリル姉! たぶん時限式の爆弾!』
『直前に敵特大船から信号が届いてた。遠隔起爆可能な爆弾かも!』
拿捕班からの報告に、ベリル号の艦橋は『うわあ』という感じの、醜いものを直視してしまったような雰囲気になる。
「サルくん。逃げた海賊って、正義づらしてるわりに、やってること海賊だね」
「同感です。……社長。分遣艦隊と攻撃艦隊に、逃走中の敵船を攻撃させてください」
「それは構わないけど、これだけ距離が離れるとタキオン砲でも威力が弱くなるよ?」
「それで構いません。敵に『ベリル運送を追い詰めた』なんてふざけた主張をさせないために、可能な限り痛めつけたいんです。6隻中5隻を失って残る1隻もぼろぼろなら、勝利を主張しても信じる奴は少ないでしょうから」
「いいね! やろう!」
分遣艦隊と攻撃艦隊のタキオン砲『だけでなく』、母港のタキオン砲も敵特大船に対する攻撃を開始する。
タキオン粒子が命中してもシールドが揺れる程度ではあるが、それが何度も続けばシールドが割れて装甲もダメージを受ける。
俺の自力センサーの範囲から逃れる直前には、減速にも使うはずのエンジン複数が破壊され、特大船本体から大きな火花が散っていた。
☆
母港へ戻った俺たちは、休む間もなく話し合いを始めた。
「今回は儲けなしかにゃ? 賞金首は少額のやつばっかだし、戦闘後の整備で大赤字にゃ」
落ち込むキンに、俺は笑顔で声をかける。
「とんでもない! 今回の利益はかなり大きいですよ。3艦隊が外へ出ている状況で奇襲されたのに無傷で撃退ですよ? 損得勘定ができる海賊なら、2度と俺たちの母港を襲う気にはなりませんよ」
正確に表現すると『俺の娘の能力と性質を知るまでは』というただし書きがつくんだが、それでも『不意を打たれても無傷で撃退』という評判は大きな資産になる。
「それは素晴らしいことだけど、防衛戦でも低速船があまり役に立たなかったのは問題だわ。遠征には不向きだし、維持し続けるのにもコストがかかる。ベリルちゃん、サルさん、何か案はないかしら」
「サルくん、意見!」
「それはちょっと、俺の手には余ります。どこかに高く売りつけることができればよいのですが……」
海賊狩りと拿捕ビジネスが得意な俺たちベリル運送は、普通の商売は正直苦手だった。
◆ BERYL ATTACK FLEET
規模:3 防衛:4 遠征:5
◆ CAT CRUISER *2
船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4
◆ CREW
船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]
拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]
◆ BERYL DETACHED FLEET *2
規模:2 防衛:2 遠征:5
◆ CAT CRUISER *1
船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4
◆ CAT DESTROYER *3
船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3
◆ CREW
船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]
拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]
猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]
新人猫耳ズ|船長Lv1 [従順Lv2]
新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]
◆ BERYL DEFENSE FLEET
規模:3 防衛:7 遠征:8
◆ BERYL THE GREAT MK3
船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5
◆ BERYL THE GREAT MK2
船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4
◆ OTHER SHIPS
船体:4 *1 / 船体:2 *8 / 船体:1 *7
◆ CREW
ベリル |船長Lv3 [借金Lv1]
サル |操縦Lv5+[衰弱Lv3]※疲労状態
スッス |操縦Lv3 [医療Lv2]
ブルネット|射撃Lv2+[事務Lv2]※治療中
キン |整備Lv2+[白兵Lv2]
拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]
船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]
猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]
ブラン |秘書Lv1 [衰弱Lv1]
新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]
◆ CREW IN TRAINING
母猫耳ズ |市民Lv1+[衰弱Lv2]
救助猫耳ズ|学生Lv1+[衰弱Lv1]
猫耳幼児ズ|学生Lv1 [猫語Lv1]
学生猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]
他種学生ズ|学生Lv1 [借金Lv1]
◆ GUEST
野良猫耳ズ|白兵Lv1-[衰弱Lv2]
◆ CAPTURED
小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中
大型輸送船 *1
◆ CAN BE PRODUCED ※特大デュプリケーターを長期レンタル中
船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3
◆ BERYL HOME PORT(3/3)
権利:1 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3
◆ Pirate Fleet
◆ Huge Pirate Ship
船体:4 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:3 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:3 ※旧式に見える。大破寸前
◆ CREW
黒髪の男 |船長Lv3+ [操縦Lv3]




