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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第4章 揺り籠から墓場まで

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66.プロパガンダにはCMで反撃

「み゛ぁぁぁっ!」


 俺の朝は元気な泣き声で始まる。

 以前は部屋のにおいで判断していたが、今は娘の泣き声で、空腹かオムツかを判別可能だ。


「「「おはようございます」」」


 しかし娘の面倒を見る機会は少ない。

 メンバーを交代しながら最低5人は常駐している下僕(人類は猫耳の奉仕種族になるべきだと本心から考え、地表で布教までしている危険人物)たちが、俺より先に娘の面倒を見てくれているからだ。


「おはよう。たまには俺に任せてくれてもいいんですよ」


「先輩。そろそろドクターストップっすよ?」


 玄関から入ってきたスッスが、呆れた視線を俺に向けた。


「おはよう、スッス」


「おはようっす! この子、いつ見ても元気っす……」


 スッスが娘を見る目は優しいが、娘ではない相手に対する呆れの感情が濃い。


「健康が一番ですよ」


「その健康、強すぎる加護や祝福の副作用ともいえるっすよ?」


 勝手知ったる他人の家で、自動調理器を使い俺とスッスの食事を用意し、お盆で運んでくる。


「いつもすまんな」


 寝起きだからか、普段意識している『丁寧な口調』が雑になった。


「ほんとっすよ。先輩、食事に無頓着すぎるっす!」


 雑炊の中に肉や野菜や各種栄養をぶちこんだだけの料理は駄目らしい。

 俺とスッスは、味噌汁を始めとする和風朝食で栄養を摂取する。


「おはよー」


「「「にゃ」」」


 ベリル、キンに加えて、船長猫耳や拿捕猫耳も大部屋に集まってくる。

 ベリルやキンは居住区ができたときから入り浸ってるし、他の猫耳たちは直属の下僕に休暇を与えるときに泊まりに来ている。

 母親猫がまだ生きている奴は一緒に暮らせばいいと思うんだが、『もうそういう年齢じゃないにゃ』らしい。


「サル。醤油をとってくれにゃ」


「また治療するはめにならないでくださいよ」


「おっちゃんテレビつけていいー?」


「不毛なチャンネル争いをしないなら構いませんよ」


 なお、不毛で苛烈なチャンネル争いは即座に始まった。

 オムツ替えとミルクを終えた娘を起こさないよう小声で争っているのは、理性があると評価すべきだろう。


 俺は時間をかけてご飯を咀嚼して飲み込み、面積的な意味で巨大な掘りごたつを見渡す。

 以前は幼児だった猫耳はずいぶんと成長した。

 みな元気なのは非常に喜ばしい。

 そういえば、肌や髪の艶が増している猫耳たちが多い気がする。


「……ああ、治療が終わったからですか」


「おっちゃん、気づくの遅いよ!」


「すげー遠くの敵はよく見えても、近くの女の化粧に気づかないのがおっちゃんにゃ」


「失礼な。ブルネットの化粧や髪型には気づきますよ」


「サルくん、しょっちゅう気づいていない気がするんだけど」


 実に平和だ。

 それはそれとして、テレビ(として使用している大きな画面)には、よく分からないものが映っている。


『海賊といっても色々なんだ。地域を守るために戦って、不幸な行き違いで賞金をかけられ、海賊として扱われている海賊もいるんだ!』


 地球ではなく他星系からの放送だ。


「キン姉、そういうことあり得るの?」


 朝っぱらから分厚いステーキをナイフとフォークで食べていた拿捕猫耳が質問する。


「ねーとはいい切れねーけど、うちら(ベリル運送)みたいに賠償金払って海賊指定を回避するか、賞金をかけてきた相手(ほぼ海賊)をぶっ殺してなんとかするのが普通にゃ」


「キン姉もよく分からないんだ」


「技術屋のにゃーが知るわけねーにゃ。ブルネットに聞けブルネットに」


「ブルネットおばさん、最近見かけないよ? 赤ちゃんの面倒みてるのも下僕たちとおっちゃんだし」


「おめー、それ、ブルネットに聞かれたらひでーめにあうにゃ」


 ブルネットについては、育児も頑張っているとしか言えない。


「奥方さま、治療に専念してたらそろそろ終わってたはずなんっすけどね」


「そういえばブルネットお姉ちゃん、治療にすごく時間がかかってるよね。なんで?」


 スッスは一瞬だけ動きが止まり、許可を求めるように俺を上目遣いで見た。

 俺が頷いても、スッスは言いづらそうな表情で、口を開くまで時間がかかった。


「若返りとか美容とか、注文が山盛りなんっす。寿命延長だけならとっくに終わってたっす」


 深掘りしたらブルネットに敵意を向けられることに気づいたベリルが、顔色を悪くして何度も頭を上下に振っていた。


『ベリル運送がしていることは虐殺だ! 海賊退治の名目で無関係な人間を殺している! 本人たちはまだいい! 覚悟の上で海賊の汚名も甘受していた! だが、残された遺族は泣いているんだ!』


 食卓の音が激減した。

 熱い鉄板の上で肉が焦げる音だけが微かに聞こえる。


「えっと、ベリルお姉ちゃん?」


 拿捕猫耳がおずおずと聞く。

 ベリルの表情は、戦場にいるときのように厳しい。


「サルくん。意見をお願い」


「はい。戦闘開始前の『海賊であるかどうか』のチェックも、賞金を受け取る際の『海賊であったかどうか』のチェックも、少なくない金を払って徹底的に行っています。このテレビ番組の主張は事実無根です」


「地表じゃなくてちょっと離れた星系が超光速通信網に流している放送にゃ。時差は2日から3日だと思うにゃ」


 キンが補足してくれる。


「ひょっとしてこれ、プロパガンダって奴っすか? 戦争するつもりの相手にやる感じの」


 スッスの顔色もよくない。

 これまで武力のみで戦っていた相手が頭まで使い出したのだ。

 敵の力量が分からないのが、かなり怖い。


「……サルくん、僕は直接攻撃しかないと思ってる」


「はい。直接攻撃は常に用意しておくべきです」


 武力の有無で交渉の成功率は大きく変わる。

 俺は俺に都合の良い平和が大好きだから、武力は是非維持したいタイプだ。


「ですが、武力行使の前に、同じ手段でやり返すのもいいと思います」


 地表にはこの種の問題の専門家も住んでいる。

 俺は宇宙と地表の物価の違いを利用して、超高額の報酬を提示することで派手にやるつもりだった。



  ☆



『船長もベリル運送に殺された! 女を3桁バラして生体パーツに加工しただけなのに、ひどすぎる!』


 地表の俳優が演じる宇宙海賊のセリフである。

 自分の邪悪さを少しも自覚していない海賊を、見事なほどおぞましく演じていた。


 宇宙海賊の襲撃で多くの地球人が攫われ、それ以上の地球人が殺され、それより遙かに多くの地球人が心に傷を負った。

 この俳優も身内か知人を失っているはずだ。

 だからこそ、海賊を演じる姿には鬼気迫るものがあった。


『き、きやがったっ。ベリル運送がぁっ!』


 ここからは特殊メイクやCGも利用した映像だ。

 拿捕猫耳が海賊のアジトへ侵入し、華麗な戦いで殺さずに捕縛する。

 復讐心を理性で抑えている演技が(ほとんどがAIによる偽の表情だが)素晴らしい。


 拘束された海賊に『この犯罪は最高刑に相当します』というテロップが重ねて表示される。

 必要以上の暴力は振るわずに海賊を連行する拿捕猫耳たちは、まさにヒーローだ。


『ベリル運送は安全な輸送を提供します! 海賊が襲ってきてもこの通り! ご依頼の際の連絡先はこちらです!』


 最後のナレーションはベリルが地表で録音したものだ。

 少しぎこちなさはあるが、若々しく真面目さも感じられて、邪悪な海賊とは正反対の印象だ。


 このプロパガンダ要素が少し交じったCMが、地球を除く周辺星系に一斉に放送されていた。


「あわわ」


 ベリルが混乱している。


「この海賊、本物じゃなくて演技? マジにゃ?」


 キンも混乱している。


「「「すげーにゃ!」」」


 船長猫耳と拿捕猫耳は仲間の『活躍』場面を喜ぶと同時に、自分たちも出演したがっている。

 少なくとも、社内に対する海賊側のプロパガンダは無力化できたようだ。


『猿谷さん、政治経験でもあるんですか?』


 通信の向こうの星系管制が、性格の悪い同業者を見るような目で俺を見る。


「最初のあのプロパガンダ映像を見たとき、まるで漫画や映画のようだと思いまして。だったら地表で正反対のものを作ることもできるかな、と」


『実際できていますから反論できませんね。宣伝の効果も高いです。周辺星系でのベリル運送に対する好感度が上昇中ですよ』


『いくつか輸送依頼も届いているわ。拿捕と比べると報酬が安すぎるけど……』


 現在授乳中なので、ブルネットの映像はなしだ。


「サルくん。海賊の……あの映像を流した側の反応は?」


「同じ映像を繰り返し流しています。何度か『見』られないか試しましたが、あの映像に映っていた男は『見』えませんでした」


 自力センサーの性能が少し上がればできそうな感覚はあったが、無理をすると体調が崩れそうなので試みることもしなかった。


『ベリル。4隻目から6隻目の猫駆逐艦の最終調整が終わったにゃ。本当に2つ目の分遣艦隊を編成するにゃ? 海賊の高速船相手に逃げるばかりだと、分遣艦隊の士気が落ちるにゃ』


 1つ目の分遣艦隊は何度か海賊の高速船と遭遇した。

 遭遇したと言っても、下僕の自力センサーが捉えた直後に分遣艦隊が母港へ撤退しただけだ。


 当然、トラクタービームで船を引っ張る余裕はなかった。

 現時点で、拿捕を諦めることになったのが2回だ。


「確実に勝てる相手としか戦いたくないんですが、そんなに士気が落ちてますか?」


「当たり前にゃ」


「当たり前だよ」


 キンとベリルにジト目で突っ込まれた。


「……根拠はないのですが、嫌な予感がするんですよ」


 俺は海賊側のプロパガンダ映像を再生させる。

 迫真の演技をする男は黒髪で黒目だ。

 この映像以外で見覚えはないが、特徴だけ見れば日本人でもおかしくない外見だ。


『ハイレベルパイロットの勘は軽視できません。猿谷さんほど、特別に強力なパイロットの場合は特にです』


 星系管制がシリアス顔になっている。


「にゃー……。僕らにとって特に嫌な展開は、サルくんを捕まえるためにおびき寄せるつもり、とかかな?」


「それに加えて生体パーツを搭載した高速船が大量に待ち受けているとかかにゃ?」


『何を馬鹿なと言いたいところだけど、地球人『ガチャ』なんてものをやらかした企業が最近いたものね。……ベリルちゃん、私は軍拡の継続を主張するわ』


「拒否はしないけど、資金繰りがつらいにゃ」


 猫語が出てしまうほど、ベリル社長は金策に苦しんでいた。



  ☆



 ベリル運送と海賊のプロパガンダ合戦が続くなか、編成と訓練が終わった第2分遣艦隊が出発した。

 初飛行は攻撃艦隊が護衛につく。

 母港を守る船の数は十分でも、母港を守る高速船は先代ベリル号のみになった。


「正直、俺自身、杞憂で終わると思っていました」


 嫌な予感が頂点に達した俺の進言で、ベリル号のみが途中で反転。

 母港に到着した時点でエネルギーが枯渇寸前になるほど加速と減速を行った。

 整備にも普段より金がかかる無理な動きをした効果はあった。


「サルさま。海賊の高速船が6隻接近中です。特大船(船体:4)が1隻、大型船(船体:3)が2隻、小型船(船体:2)が3隻。すべて戦闘用の宇宙船です」


 自力センサーを使った下僕は、緊張を隠せない口調で報告してきた。

 こちらの高速船は、現在緊急で補給を受けているベリル号(船体:3)と、新入社員をカイパーベルトから母港へ戻し終えたばかりで、同じくエネルギー補給中の先代ベリル号のみだ。


「こちらサル。今から敵艦隊を『見』ます」


 情報が伝達される。

 俺が無意識でのみ把握している情報もすべて、母港全体で共有される。


 サイズの割には性能が低く、しかしその戦力は脅威だ。

 高速船なら、俺たちベリル運送が海賊を蹂躙してきた戦法のひとつを使えるからだ。


 普通なら母港全体が恐怖に襲われ、混乱が発生するはずだ。

 しかし実際には、少し発生していた混乱が完全におさまった。

 『この情報があるなら殺せる』と、みなが確信したんだ。


「「「迎撃攻撃の準備が整いました」」」


 下僕たちにヤる気がみなぎっている。

 海賊の高速艦隊を獲物としか感じていない。


「頼もしいですね」


「サルくんがいるからだよ。それじゃ、片付けちゃおっか!」


 最低限の補給を終えたベリル号と先代ベリル号が、母港から飛び立ち海賊艦隊へ突撃を開始した。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:3 防衛:4 遠征:5


◆ CAT CRUISER *2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]



◆ BERYL DETACHED FLEET *2

規模:2 防衛:2 遠征:5


◆ CAT CRUISER *1

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT DESTROYER *3

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ CREW

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

新人猫耳ズ|船長Lv1 [従順Lv2]

新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:7 遠征:8


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:2 *8 / 船体:1 *7


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3 [借金Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv2]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※治療中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|整備Lv1+[白兵Lv2]

船長猫耳ズ|船長Lv2 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv1 [衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1-[信仰Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1+[衰弱Lv2]

救助猫耳ズ|学生Lv1+[衰弱Lv1]

猫耳幼児ズ|学生Lv1 [猫語Lv1]

学生猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]

他種学生ズ|学生Lv1 [借金Lv1]


◆ GUEST

野良猫耳ズ|白兵Lv1-[衰弱Lv2]


◆ CAPTURED

小型武装輸送船 *4 ※動力源として使用中

大型輸送船 *1



◆ CAN BE PRODUCED ※特大デュプリケーターを長期レンタル中

船体:3 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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