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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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59.人権の値段

「サルくん、ケモ耳プラントの全部は奪わないの?」


 俺が示した終戦案を見て、ベリルは少し不満そうだった。


「ケモ耳プラントの借金まで手に入れてしまう恐れがあります。俺たちが知らない商慣行があるかもしれませんし、巧妙で性格が悪い文面の契約書を見抜くのは難しいです」


 俺たちが乗っている船は高性能ではあるが、あくまで戦闘用の宇宙船であり、搭載されているAIも戦闘向けだ。

 ケモ耳プラントの『レンタルオフィス』から引き出した情報をAIに読ませて検討させても、『判断に責任は負えない』とか『専門家に依頼してください』というただし書きがしつこいほど添えられた回答が返される。


「じゃあその内容でいいよ。……戦争って、勝ってもあんまり儲からないよね。拿捕は別だけど」


 ベリル社長が了承の手続きをしてから、ケモ耳プラント側で最も権限の強い生き残りに契約書を送信する。

 ケモ耳プラントの生き残りは拿捕猫耳に拘束されているので、拒否しようがない。


「ケモ耳プラント側の同意を確認しました。これで、ケモ耳プラントに残っていたキャッシュすべてと、拿捕した宇宙船の所有権が正式にベリル運送のものになります」


 ベリル運送の大幹部であるブルネット(一応キンも大幹部だが性格も能力も向いていない)がすべき手続きだが、この場にいないので俺がするしかない。

 能力的には猫巡洋艦に乗っている下僕連中ならできるはずなんだが、仕えている主や猫耳幼児以外に対してはかなり雑なので、信用しづらいんだ。


「うん! これで一段落だね。最大の問題は、今からだけど」


 通信要求が届く。

 要求に応じる前の時点で、デフォルメ化された光翼に星が2つ刻まれたエンブレムが輝いていた。



  ☆



 通信要求に応じ、エネルギー補給の提案を受けてから数分後。

 十字架『ではなく』十字の形をした大型船の大群が、俺たちの艦隊を他から隔離するように包囲した。


「これでも敵意はないようです。俺の自力センサーが正常ならですが」


「サルくんの能力もたまにはミスするかもしれないけど、この価格は……」


 ベリル社長は、軍事力ではなく補給費用の割引率に屈した。


 その後の扱いは丁寧だった。

 各船への補給は非常に手際が良く、船長猫耳に直接対応した光翼人間も偉ぶることがない。

 できればこのタイミングで仮眠をとりたいところだが、さらなる割り引きを提示された上で招かれたら断りづらい。


 俺とベリル、そして護衛として数名の拿捕猫耳を連れて、特別厳重に守られている船へ向かった。



  ☆



「銀河通商第2営業艦隊へようこそ。わたくしが総司令の――と申します」


 光翼が高速かつアクロバティックに動かされ明滅までする。

 これは光翼人間にとっての名乗りだが、自動翻訳機の翻訳対象外だ。


 光翼人間が、俺ではなくベリルに握手を求めてくる。

 仮に俺に握手を求めていたら、俺もベリルも立場上反発せざるを得なかった。

 銀河通商にとっては俺が有用な駒であり、ベリル運送はその添え物でしかないのは、俺もベリルも察している。

 『世の中そんなもの』とは思うが、舐められたら相手が強くても反発くらいはしないともっと舐められてしまうのが現実だからだ。


「ベリル運送社長のベリルです。母港への帰還までお世話になります」


「帰還までとは言わず、末永くお付き合いできればと思っておりますよ」


 総司令は、俺が知っている光翼人間とは印象が大きく異なる。

 第7営業は世話役(上位存在)から下っスッスはもとはこれまで性別不詳の人間離れした美形ばかり(外見年齢は高校生くらい)だったが、この総司令は明らかに女性だ。

 外見年齢はスッスたちより上のような気もするが、俺にはまったく自信がない。


(困りますね)


 色気がすごすぎるからだ。

 星系管制が真面目なときに着る制服(略綬らしきものは倍くらい多い)を着ていて肌の露出もほとんどないのに、気を抜くと思考が性欲に支配されそうな気がする。


「猿谷さま。わたくしのことは、どうかコランダムとお呼びください」


 俺が握手に応じたら、即座に両手で包みこまれ……るだけでなく光翼で左右から包みこまれた。

 触れるか触れないかの絶妙の距離で光翼からの光を浴びせられ、至近距離から『楚々として』微笑まれると、ブルネット以外に対して徹底して自制してきた『欲』が疼いてしまった。


「離れてくださーい。サルくん既婚者、あなた部外者。オーケー?」


 ベリル社長の態度は完全に冷え切っている。

 自称コランダムに対してだけでなく、俺に対してもだ。

 俺を後ろへ運び出した拿捕猫耳たちは『おっちゃんにも男の駄目なところがあるんだ』という顔をしていた。 


「現時点で部外者であることは認めます」


 総司令は、翼と手の位置をもとに戻す。

 こちらは派手に動いたのに、泰然としている。


「ですが、わたくしとの付き合いを回避するのは困難です。医療分野において、我々第2営業艦隊を上回る技術を持つ勢力は極少数です」


「ベリル運送にも医者はいるよ!」


「その医者が元第7営業艦隊所属のパイロットであれば、可及的すみやかに高度医療知識の脳への焼き付けを行うよう勧めてください」


 総司令は穏やかで、威圧や脅迫の気配は皆無なのに『本当のことを語っている』印象しかしない。

 俺とベリルがお互いを見る。

 どちらも顔に『嫌な予感がする』と書いてあった。


「治療あるいは寿命延長を行う際、施術対象の能力が上がるほどに難易度も上がります。猿谷さんの場合は、現状でも私が本社の設備を使ってようやくといったところです。平均的な猫耳を治療する場合でも、そのパイロットに現状のまま任せるには不安があります」


 『見』て真偽を確かめたくなるが我慢する。

 相手は高度な技術を持つ勢力の高官だ。

 俺が『見』たことに気づく可能性は、かなりある。


「金に余裕ができるまでは、だましだましやってくつもりです。それより、猫耳のセキュリティホール対策について意見を頂けないでしょうか。自力で調べるにせよ、技術と知識を持つ方に調査や対策を依頼するにせよ、我々には知識が足りないのです」


 口車でこちらを買い叩こうという気配があれば、『見』て必要な情報だけ得れば良い。

 こちらを馬鹿にするだけなら、聞き流せば良い。

 俺は、軽い感じで考えていた。


「いけません、だましだましなど!」


 総司令が光翼を大きく羽ばたかせて距離をつめてくる。

 意表をつかれた拿捕猫耳たちは反応が遅れてしまう。


「あなたがこの銀河にうまれたのがどれほどの奇跡であるのか、よく理解してください」


 非人間的ともいえる美貌と、うっかり『見』てしまった純粋な思いの組み合わせが、スレてしまった俺の心を強く照らす。

 ブルネットと子供の存在を強く意識し直して、どうにか踏みとどまった。


「ん、んんっ、お気遣いに、感謝します」


「ええ、ええ! 分かってくださればよいのです。猫耳の治療については……何ですか? 売りものであるならわたくしの資産で支払いを……職権乱用? くっ」


 コランダム総司令は、心底悔しそうな表情で、自身の部下に連れ去られた。

 その途中で「いずれまた!」と大声で言いながら、こちらに大きなデータを送信していた。



  ☆



 帰路はとても空気が悪かった。


「社長」


「何かな? やっぱり普通の男みたいに浮気もののサルくん」


『『『にゃぁ』』』


 ベリル以下の猫耳たちからの当たりが強い。

 正直、ちょっと泣きそうだ。


『『『サルさま。後で猫耳の方々に説得はしますけれど、今回の一件は我々としても座視できません』』』


 下僕連中にも大きな釘を刺された。

 連中が俺に配慮してくれるのは『俺が猫耳に役に立つから』だということを、改めて思い知らされた。


 ともかく、銀河通商第7営業艦隊から預かっている紹介状と、同第2営業艦隊からつけてもらった護衛(マジで裏の意味のない護衛だ)の効果は絶大だった。

 なお、紹介状にも護衛にも、料金が割り引きされる効果は一切ない。


「もう少しで母港が見えますよ」


 俺たちの艦隊は戦利品を曳航していない。

 ケモ耳プラントから奪った、『都会』でないと買えない高級なパーツが多数載っていた船は支払いに消えた。

 残ったのは、母港に搭載するためのタキオン砲が少しだけで、猫巡洋艦の船倉におさまっている。


「ん!」


『『『にゃ!』』』


 ベリルも猫耳もそわそわし始める。

 俺も似たようなものだ。

 他人の敷地で、他人の戦力に守られて眠っても、真に心安らぐ眠りは得られない。


 母港から通信要求が届く。

 うきうきしているベリルが真っ先に通信に出ようとして、発信者の名前を見て猫耳をぺたりと伏せた。


「銀河通商って超光速通信の中でも特に速い通信ができるし、ブルネットお姉ちゃん、サルくんの浮気、もう知っちゃってるかも」


『『『ブルネットおばちゃん、頼りにはなるけどマジこわいにゃ』』』


 ケモ耳プラント艦隊を蹂躙した猫耳たちが、心底怯えていた。


「こちらベリル号。サルです」


 なお、俺は一刻でも早くブルネットの声を聞きたいので躊躇せず通信に出た。


「サルさん」


 画面にブルネットが映る。

 その瞳孔が完全に開いている。

 俺がうかつなことを言えば、大きな悲劇が起きそうな気配まで感じる。


「ぴっ」


『『『にゃぁ』』』


 ベリルと猫耳たちが怯えている。

 俺はすべてを理解した上で、ブルネットの視線を目を逸らさず受け止める。

 そのまま何があったか話そうとしたのだが、俺が話しだすよりブルネットが安堵の息を吐いて椅子に背中を預ける方が早かった。


『よかった。サルさんが籠絡されていない』


「いえ、反応してしまったのは事実ですし、それはブルネットに謝罪しなくては」


 俺の言葉に、ブルネットはまったく怒らない。

 俺には、それが怖い。

 嫉妬されたいわけではないが、ブルネットにとって、俺は嫉妬する価値がないのかと一瞬思ってしまったんだ。


 俺が何を言うべきか必死に考えていると、見慣れた通信要求とハッキングによる強制接続がほぼ同時に起こった。


『猿谷さん、無事ですか』


 普段は傍若無人な星系管制がシリアス顔だ。


『第2営業艦隊といえばあの妖怪の本拠地です。人格は無事ですか? 遺伝子を採取されてしまいましたか?』


 何が何だか分からない。

 星系管制の内心を『見』るともっと混乱してしまいそうだと感じて、俺はとりあえず疑問をすべて一旦保留にして、すべての船へ帰投航路を送り、母港へ向かった。



  ☆



「あー、はい。だいたい理解したっす」


 ケモ耳プラントの工場とその周辺での治療を終わらせて戻ってきたスッスにより、誤解はとけた。


「銀河通商第2営業艦隊は人材ガチ勢っす。通商のハイレベルパイロットは、ほぼ全員第2営業艦隊がスカウトしたか養成したかっす。先輩に対する反応は、かなり理性的っすよ」


「本当にそう? あの人がサルくんに向ける目、普通じゃなかったよ?」


 ベリルはちらちら俺を……正確には俺にぴったり張り付いて寝息をたてているブルネットを見ている。

 少し腹が目立ってきたのが、幸せでもある心配でもあった。


「そりゃそうなるっす。先輩の自力センサーの性能、正直わけわかんないレベルの性能っすから。しかも本人は無改造……延髄からケーブル繋いでるけどそれ以外無改造の天然ものっす。筋金入りの純血主義者が婿として狙うレベルの相手っすよ」


 本当に寝ているはずのブルネットの耳が、ぴくりと動いた。

 俺はブルネットの顔色から寝不足の気配を感じて、安心して眠れるように全力を尽くす。

 具体的には話をそっちのけで背中に優しく触れながら子守唄だ。


「サル。今は会議中にゃ」


「うっす」


 キンに注意された俺は子守唄を中断し、触れるだけにした。


「あれは妖怪です。確認できているだけで1000年は今の職にいます。立場以上の影響力を持ち、欲しいものは必ず手に入れようとする、極めつけの危険人物ですよ」


 大口出資者(通商としてではなく個人で出資している)として会議に参加している星系管制は、コランダム総司令を強く警戒している。


「年下好きの恋多き方って噂は聞いたことあるっすけど……。自分が知ってる限りじゃずっと独り身のはずっすよ?」


「死に別れてから100年以上喪に服す、いにしえの慣習に従っているだけです。特に800年前は酷かったですよ。あれが原因で星間戦争が2つ起きましたから」


 頭痛をこらえる星系管制からは、外見年齢より1桁以上生きている気配がした。


「あの、みなさん、もう少し小声で……」


 俺が注意しても議論は止まらず、ブルネットが目を覚ましてしまった。


「サルさんを他の女が狙うのは覚悟の上よ。ベリルちゃん、あとでサルさんに失礼をしたことを謝罪すること。あの子たちにも言い聞かせるのよ」


「にゃ!」


 微笑んでいるのに甘さが皆無のブルネットに言われ、ベリルが猛烈な勢いで首を上下に振る。


「覚悟はしていたけど、正直、覚悟が甘かったわ。スッス、それと星系管制。サルさんの引き抜き対策に有効な手段はあるかしら。権力や権威がある人種や組織の立場で『やられると嫌な策』を教えて頂戴」


「人権っす」


「人権です」


 回答は即座かつ同時だ。


「人権のあるなしは、法的には、物であるか人であるかの違いっす。守りやすさが全然違うっす。ベリル運送と紐づいてる今の先輩の立場、ちょっと優秀程度の人材なら人権を安く維持できるいい立場っすけど、先輩級の人材だとでっかい隙を全銀河にさらしているようなもんっす!」


 スッスは、人権保証の強化を強く主張する。


「名目上はともかく、実際には人権にも種類と強弱があります。たとえば我々(光翼人間)は、列強国家ひとつと複数の上位存在に人権を保証されています。犯罪や戦争に巻き込まれて死ぬ程度なら関係ありませんが、物に対するような扱いをされたら、かなりの確率で列強と上位存在が介入してきます。……それでも数年に一度介入案件が発生するんですけどね」


 星系管制は人権について詳しく説明してから、具体的な話へ移る。


「気は進みませんが、第2営業艦隊を巻き込むことも可能です。今はリゼーレ様個人とベリル運送だけが、猿谷さんの人権を保証している状況です。第7と第2にも、組織として保証させるのです。猿谷さんの価値が今より広く知られてしまうでしょうが、猿谷さんの安全は大きく向上するはずです」


「……それ、いくらかかるの? サルくんが身売りしないと払えない額を請求されるなら、僕は頷けないよ」


 ベリル社長は断固として主張する。


「5年後に移籍とか、奥方さまとお子さんを連れてきていいとか条件はつくかもっすけど、ベリル運送全体は無理だと思うっす」


「人権の取得も維持も大変なことです。ベリル運送が通商の子会社や協力会社になったとしても、人権までは面倒を見切れないと思って下さい」


 非常事態と判断して、スッスと星系管制を『見』る。

 どちらも、本心から言っていた。


「……俺がいなくなるとベリル運送の戦力は激減します。特に超光速での戦闘で危険になります。俺たち3人だけ無事で嫁さんの実家が壊滅なんてことになれば、俺は一生後悔してしまいますよ」


「あなた」


 ブルネットは感激などしていない。

 俺は、冗談めかした表情で指を立てて自分の唇へ当てる。

 妻に姉妹を見捨てる判断など、させるつもりはない。


「それに、ベリル社長に頑張ってもらって、ベリル運送を強くすれば問題は解決します。そうでしょう?」


「そうだけど、すぐには無理だよ……」


「さすが先輩と社長っす!」


 俺たちならいける。

 いや、俺たちがでかくなって人権の問題など踏み倒してやる。


 そんな前向きな気分を、自力センサーからの警告が吹き飛ばした。

 今存在する危険ではなく、数年後に、俺の命より大事なものを巻き込む危険を、確実なものとして感じる。


(命より大事なものは、ブルネットと……)


 まだお腹の中にいる我が子に目を向ける。

 警告がますます強くなる。

 音声としては聞こえなくても、気になって仕方がない。


「スッス。仮にですが、俺とブルネットの子が、今の俺と同じくらいの能力……いえ、今の俺と同等になり得る才能を持って生まれたら、保護にはどの程度の戦力や人権が必要ですか?」


「先輩。今から親馬鹿っすか? 先輩は才能がクリティカルで表に出たケースっす。お子さんには才能が表に出ないのも普通っす! 

実際、ハイレベルパイロットの子供がハイレベルパイロットになれるのは10分の1くらいっす!」


【えっ】


 聞きたかった声で、絶対に聞きたくない内容が聞こえた。

 光翼人間たちの背筋が伸び、崇拝対象が間近にいるときのような態度になる。


「に、にぶんのいちの、才能を持って生まれたりするでしょうか?」


 俺も動揺している。

 声が震えてまともな発音になっていない。

 しばらく待っても、返事はなかった。


「それとも、今の俺?」


 反応はない。


「ま、まさか、俺以上の、自力センサーの才能が?」


【……はい】


 深く息を吸う音と、とても大きなため息の音が、人数分発生した。


【才能は才能です。鍛えなければ能力にはなりません】


 相変わらず【発音】は平坦だ。

 しかし動揺の気配を強く感じる。


「あの、リゼーレ様。今の先輩以上になれるかもって才能、人権とか全部無視して銀河通商レベルの大企業が攻めてくるだけの価値があるっす」


「通商の人間としては即座に本社に通報すべきなんですが、ベリル運送の大口出資者としては黙っておく一択です。もし万一、自力センサーが血で受け継がれるなら、時間経過で銀河の勢力が激変しますよ」


【あっ】


 どうやら、本格的にとんでもないことになりそうだ。


「先輩。先輩と奥方さまのお子さん、人権とか全部無視して列強国家が攻めてくるだけの価値があるっす」


 スッスの顔は真っ青で、背中の光翼は断末魔じみて痙攣している。


 混沌とした状態で、しかしブルネットは気丈に立ち向かう。


「リゼーレさま。我が子にも加護を与えて下さったことには心から感謝いたします。誠に申し訳ないのですが、我が子の才能を平凡なものに変えていただくことは可能でしょうか?」


【あの、今から加護を弱めると健康に深刻な害が……ごめんなさい】


 ブルネットも頭を抱えた。

 俺は、一度だけ深呼吸して、ブルネットをそっと抱きしめる。


 考えろ、俺。

 一番大事なのは妻と子で、自分自身を守れる力を持たない子供が優先だ。


 強力すぎる才能と血統を持って産まれてくる子を守る方法は何がある?

 銀河の底辺扱いされる猫耳の血が半分流れている子供が、無事に生きて人間として死ねる可能性はどれだけある?


 そんな子が長生きできる可能性は低い。

 まともな人生を送れる可能性も低い。


 なら、俺がすべきで、俺がやりたいことは、ただひとつだ。


「勝てばいいんです勝てば」


 俺は笑う。

 剥き出しにした歯を見せて笑う。


「子供の幸せな人生に邪魔な奴はぜんぶぶっ殺せばいいんです」


 子供に、有効に機能する人権を買い与えられない不甲斐ない父親ではあるが、やれることはすべてやる。


 ブルネットは静かに頷いてくれた。

 スッスは野心に目を光らせ、俺に要求するつもりの特訓プランを書き始めている。

 星系管制も野心に燃えているが、たぶん金とか権力方面の野心だと思う。


「僕、そろそろ『あがり』でいいと思ってたんだよ? お姉ちゃんたちと孤児院のみんなで、立派な母港に住むってすごくいい『あがり』だよ?」


「にゃーも同じだけど、ここまでサルに世話になっといて今さら知らんぷりはできねーにゃ」


「そうだけど愚痴くらい言わせてよキン姉!」


 ベリルとキンはつきあってくれるようだ。

 とても有り難い。


『『『にゃ!』』』


『『『盗聴たいへんごめんなさい。その分がんばる!』』』


『『『猫耳と地球人の子を守って銀河を相手に大立ち回りですか。素晴らしい!』』』


 船長猫耳と拿捕猫耳と下僕連中もやる気十分だ。


「社長、号令をお願いします」


 俺はできるだけ普段の表情に近づけて、ベリルに頼み込む。


「ベリルちゃん、お願いね」


 ブルネットは目が笑っていない。


「ちくしょー、やってやる、やってやるぞーっ!」


 ベリルのやけくそな叫びが、新たな始まりの合図になった。



 俺たちベリル運送に、銀河に覇を唱えるつもりはない。

 ただ、うまれてくる新しい命を守るために必要なら、どこまでも成り上がる覚悟がある。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:2 防衛:5 遠征:9


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *4

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3-[借金Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv2-[猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ RENTAL FLEET

◆ IMPERIAL STANDARD CRUISER *3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

光翼人間 |船長Lv1+[光翼Lv1]



◆ FRIENDLY FLEET

◆ IMPERIAL STANDARD CRUISER MK3 ※第2営業艦隊のからの護衛

船体:3 / 跳躍:5 / 航続:4 / 装甲:3 / 居住:3 / 船倉:3 / 兵装:4


◆ CREW

光翼人間 |船長Lv3[光翼Lv3]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:6 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:2 *4 / 船体:2(修理待ち) *4 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]

救助猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]

新人猫耳ズ|船長Lv1-[従順Lv2]

猫耳幼児ズ|学生Lv1-[猫語Lv1]



◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1


拿捕船 *10 ※価値は「備蓄:4」相当



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:2 / 備蓄:0 / 兵装:1



これで第3章完結です!

次話から第4章「揺り籠から墓場まで」が始まります。

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