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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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58.完全勝利と支払い義務

「にゃ!」


 ベリルが命令を下す。

 よほど急いでいるらしく、俺の自動翻訳機では翻訳できない猫語を使っている。


『『『にゃっ!』』』


 船長猫耳たちは即座に従うが、猫語の響きから驚きの感情が感じられた。


 ベリル号と猫巡洋艦のシールドが激しく発光する。

 言うまでもなくケモ耳プラント艦隊からの攻撃だ。

 先手を取られた側がすぐに反撃するのは難しいはずなのに、タキオン粒子が超高速かつ高頻度で浴びせられている。


 敵艦隊の感情を『見』ても内容がチグハグだ。

 ひょっとしたら、高性能なAIや機械を使って反撃しているのかもしれない。


「遠距離戦に切り替える! サルくん、もっと情報!」


 俺の自力センサーから届けられている情報は、距離が離れるほど『何も分からない』状態に近付いている。

 星系内の反応が多すぎるのだ。


「星系内に船が多すぎてこれで精一杯です! 敵船を攻撃したときの残骸の予想進路が安全かどうかも分かりません!」


 普段の速度(光速の千倍以上)を出せば無関係な宇宙船と接触して大惨事を発生させる恐れまである。

 敵を攻撃した場合も、残骸が無関係な宇宙船や惑星に直撃して、膨大な死者を発生させるかもしれない。


「サルくんの意外な弱点だね! それなら!」


 ベリル号が加速する。

 4隻の猫巡洋艦が、ベリル社長と『にゃあにゃあ』言葉を交わしながらついてくる。

 3隻のレンタル船は、そこまで緻密な連携『は』できないが、3隻で別の班を作ってケモ耳プラント艦隊の進路と退路に『いつでも襲撃できる』位置と速度を保つ。


『ちょこまかとっ! だがケモ耳プラントが猫耳を長年生産してきたのを忘れたか? お前たち猫耳がどこまでできてどこまでできないか、全てお見通しよ!』


『『『にゃぁ?』』』


 猫耳船長たちが「何言ってんだこいつ」という顔になる。


「予想はできても驚かないよ。対応できるかどうかは別だけどね!」


 わずかな『安全地帯』を選んでベリル号と猫巡洋艦4隻が星系内を飛ぶ。


『あぶなっ!?』


『危険飛行をするなぁ!』


 多数の船(今回の企業間戦争とは無関係の宇宙船)から猛烈な抗議が届く。

 ベリルはびっくりして猫耳を伏せるが、操縦は落ち着いたまま加速していて、敵の探知範囲から逃れた。


「ケモ耳プラント艦隊の装備が良いですね。資金とコネがあるならタキオン砲を購入するのも容易ということでしょうか」


「サルくん。コネじゃなくて場所だと思う。僕らの母港がある星系やその周辺とは、ぜんぜん違うよ」


「確かに。広告の量が膨大ですし」


 猫耳のセキュリティホール対策で厳重なフィルターをかけているのに、ときどき貫通してくるほど広告の量がすごい。


『『『にゃ!』』』


「いつものように撃っちゃだめ! 他の人や星を巻き込むと、ベリル運送が賠償金で潰れちゃう!」


 猫巡洋艦からの提案を却下しながら、ベリル社長は小刻みな操作を繰り返して敵からのタキオン粒子を躱す。


『いつまでも逃げられるとっ』


「僕らはいつまでも戦闘できるよ? 天然食材まで食べてる猫耳と標準タイプの人間じゃ、持久力もぜんぜんちがうもん」


『ぬぅっ』


 苦々しげにうめくケモ耳プラント代表は、俺の目にはエルフに見える。

 それなりに顔はいいが、人間と同程度に俗っぽい。

 非常に俗っぽいスッスや星系管制の方が、まだ神秘的に感じる。


「社長も天然食材を食べていたんですか」


「あの子たちが目の前で食べてると我慢しづらくて……」


 銀河通商が密輸取り締まりを厳しくしたときが怖いな。

 舌が肥えた猫耳は、毎日の食費が激増してしまいそうだ。


『落ち着け! 猫耳どもは一度も攻撃してこない。口では偉そうなことを言っても、我らに恐れをなしているのだ!』


 ケモ耳プラント代表は好き勝手なことを言っている。


「社長、どうです?」


「できたら一度で仕留めたいんだよね。無関係の宇宙船を躱しながら追撃戦をするのは絶対大変だし」


 俺はベリルと会話しながら、自力センサーを全力で使っている。

 遠くの『障害物』は詳しく『見』ないようにして、ケモ耳プラント艦隊の8隻へ注意を向ける。


 代表が乗っているのは大型船……ベリル号や猫巡洋艦と同程度のサイズだ。

 複雑な形状の貴金属と、豪華なカットが施された宝石を組み合わせたような外見で、宇宙を背景にすると非常に目立つ。


「大きい船から、通信機能が強化された旗艦が1隻、砲撃戦特化の大型船が3隻、用途不明の小型船が4隻ですね」


 最後の4隻は本当に分からない。

 装甲もシールドも加速力も平凡以下だ。

 数合わせの安価で低性能の船なんだろうか。


「んー。わかんないからいつも通りダメージを与えて、まだ使えそうなら拿捕する方向で」


「了解です。……うん?」


 自力センサーではなく五感に違和感があった。

 それまで途切れなく送りつけられていた宣伝が消えている。


『辺境の船にはハッキング装置も対ハッキング装置も載せていないだろう? 我々には見えて、お前たちには何も見えない。これで、終わりだ!』


「えーっと……。とりあえず攻撃開始。目標は敵小型船3隻」


 ベリル社長が、特大タキオン砲で敵小型船1隻を狙い撃つ。

 猫巡洋艦4隻は2隻ずつに分かれ、それぞれ別の敵小型船1隻へタキオン粒子を浴びせる。


『馬鹿な! 超光速通信網から切り離したのだぞ!? 索敵用の生体パーツを使っていたとしても、この距離で分かるわけがない!』


 悲鳴同然の大声で、その意図はないのだろうが解説してくれた。

 俺たちに一方的に通信を届けているのだから、敵旗艦の能力は間違いなく非常に高い。


 だが俺たちは、超光速通信網抜きでも戦える。

 自力センサーと猫耳の身体能力の組み合わせで、戦えてしまうんだ。


『『『にゃぁ』』』


 猫耳船長たちがまた「何言ってんだこいつ」という顔になる。


「ひょっとして、銀河で流通している生体パーツって、下僕さんたち未満の能力だったり?」


「その可能性が高いようです」


 相変わらず超光速通信網からは切り離されている。

 それでも、敵小型船を仕留める際に、艦橋を狙わず攻撃する余裕まであった。


『足止めしろっ!』


 唯一残った敵小型船がベリル号に迫るが、ベリルは当然全力で後退する。

 装甲もシールドも紙同然なので、まぐれ当たりで撃沈されかねないからだ。


 猫巡洋艦が敵小型船とベリル号の間に割り込み、双方の攻撃が始まった。


『粘着弾!? 馬鹿にしおって!』


 ケモ耳プラント代表が吠えている。

 猫巡洋艦に粘着弾を10単位で撃ち込まれた敵小型船は、全力で加速しても速度が伸びなくなる。

 ただし攻撃は別だ。

 外見はトラクタービームに近いが気配が禍々しい『光』が、光速の千倍以上の速度で伸びて猫巡洋艦の1隻を貫いた。


『エンジンが変にゃ!』


 被弾した船の船長は無事で、最初は動揺していたがすぐに『わくわく』した顔になる。


『これすげーにゃ! エンジンだけ妨害されてるにゃ! デバフにゃ! 動きが面白いにゃ!』


 最近は地表のゲームにはまってしまった猫耳もいると、ブルネットが愚痴を吐いていたことを思い出した。


『仕留めろ!』


 ケモ耳プラント代表が号令する。

 タキオン砲を複数搭載した敵砲撃特化艦が、動きの鈍くなった(ように見える)猫巡洋艦を狙う。


『甘いにゃ!』


 カイパーベルトで散々訓練と失敗を繰り返した(そして失敗のたびに俺に救助された)船長猫耳は、不利な状況での操縦に慣れている。

 まるで見えているように(俺や下僕の自力センサーのお陰で情報は得ている)、器用にエンジンの出力を調節して、タキオン粒子を回避する。


「サルくん、これ、宝の山だよ! タキオン砲が最低8門だよ8門! 小型船もエンジン妨害装置積んでるし!」


「代表が乗っている船も良さそうですよ。運が良ければ、今後は銀河通商にハッキングを依頼する必要がなくなるかもしれません」


 ベリル号が後退し、猫巡洋艦が回避行動をとっている間も、他の船は戦い続けている。

 流れ弾が怖くて『アホみたいな速度を出してからタキオン粒子や粘着弾で狙撃』はできないが、既に同数未満になった相手に粘着弾を当てるのは簡単だ。

 いや、俺にとっては簡単ではないんだが、ベリルや猫耳船長にとっては簡単ということだ。


 エンジンが1つずつ粘着弾により封じ込められていく。

 命中率は8割を超えている。

 俺がやれば運が良くても4割だろう。


 敵小型船が粘着まみれになって『光』が出せなくなる。

 敵の砲撃特化3隻も、加減速に使えるエンジンが少なくなって、ほとんど慣性飛行しかできなくなる。


「社長、拿捕もいいですが、この星系ですと漁夫の利可能な勢力が多すぎます。ここは、可能なら交渉でもいくべきかと」


 俺は敵艦隊だけでなく敵パイロットまで『見』てから、ベリル社長に進言した。


「サルくん。あの代表の性格だと、死んでも負けを認めないんじゃないかな」


 俺が『見』てようやく分かったことを、船の動きと通信内容から読み取れるベリルが、本当に素晴らしい。


「同感です。ですから、他の船の船長を狙いましょう」


「……実は善人とか?」


 ベリルの目が『じっとり』している。

 猫耳を生産して文字通り道具として消費したり、地球人を『ガチャ』目的で生産した連中を、心底に憎んでいるようだ。

 俺も、奴らへの好感度はマイナスに振り切っているので気持ちは分かる。


「深く『見』れたわけではありませんが、代表の同類と思われます。ですが小物を何人か一時的に見逃すだけで、高級な装備が搭載されている船が拿捕できるとしたら……どうです?」


「……あくまで一時的なんだね?」


「はい。人権がない地球人への扱いは合法ですが、立場が低いとはいえ人権がある人類である猫耳への扱いは度を超しています。財産を奪って解放した後、その者の行状と現在いる場所を広く知らせれば、自業自得の結末になると思います」


 この銀河の地球人の扱いには心底腹が立つが、今はこれが現実だ。

 ベリルは少し考えてから、小さく頷いた。


「ここまで来るのにいっぱいお金使っちゃったし、母港まで戻るのにもいっぱいお金がかかるからね。サルくんの案でいこう!」


 許可が出た。

 相変わらず超光速通信網は使えないが、タキオン粒子の威力を下げて撃ち込めばモールス信号も可能だ。

 実際に使用するのはモールス信号ではなく、この銀河で広く知られている信号であり、簡単な交渉(この条件を受けないと殺すぞ)なら十分に可能だ。


『お前たち! 裏切るのか!?』


 残存するケモ耳プラント艦隊5隻のうち旗艦を除く4隻が、一斉に降伏信号を発した。

 敵旗艦の砲口が4隻へ向けられようとしたとき、猫巡洋艦が粘着弾を連射して、旗艦のタキオン砲を封じ込める。


「利害で結びついた相手ならそんなものでしょ?」


 ベリル社長はつまらなそうに言う。

 既に、ケモ耳プラント代表には、嬲る価値すら残っていない。


『こ、降伏する! 条件付き降伏だ! 今私を殺せば猫耳の設計図は手に入らないぞ!』


「サルくん受け取って。降伏を受け入れるかどうかは内容を確認してから考える。……他の船はさっきの条件通りの降伏でいいからね?」


 ごく自然に捕虜の扱いに差をつけ、分断している。

 まだ若いのにそんなことができるんだから、これからの成長が楽しみだ。


 俺もブルネットも子育てで忙しくなる。

 ベリルが成長すれば成長するほど、安心して子育てできるというわけだ。


「社長。スッスがいないので分かりません。一応AIは『本物かも?』と評価しています」


『本物だ! 嘘じゃない!』


 ケモ耳プラント代表が大声で騒ぐ。

 敵旗艦が戦闘能力を失ったためか、既に超光速通信網との接続は回復していて、回線越しに見ている出向社員たちが眉をひそめている。


『これだけのことをして生き延びられると思ってる?』


『考えるのは自由だ。社長も猿谷さんも甘い方ではないのにな』


『さすがにこれだけしちゃうとねー』


 この銀河における立場でも、人権の強さでも、猫耳よりはるかに強い光翼人間たちは、ケモ耳プラント代表への嫌悪を隠さない。


「んー。別にいいよ。嘘か本当かは僕の部下が調べるし、たぶん君、消されちゃうし」


 ベリルが代表に向ける目は、既に死んだ敵に向けるような目だ。

 何かに気付いたケモ耳プラント代表が、俺たちではなく旗艦の乗組員に怒鳴り散らす。


『ハッキングされただと!? どこから……出資者から? 馬鹿な!?』


 通信が途絶える。

 巨大な敵旗艦が内側から火を噴く。

 何かを巻き込むためではなく、敵旗艦とその中身という証拠を焼き尽くすために燃え盛る。


「サルくん。黒幕には逃げられちゃったかな?」


「猫耳や地球人に酷いことをした奴はぶっ殺すか捕虜にしました。今回はこれで満足しておきましょう」


 おそらく俺を狙った黒幕には、証拠隠滅されてしまった。

 それに腹は立つが、報復を考えている暇はない。

 銀河通商への支払いや、かなり近付いてきた出産予定日など、考えるべき事ややるべきことが大量にある。


「むー。腹立つ!」


「まあまあ。今はまだベリル運送で相手どるには強すぎる敵でしょうから、黒幕が手がかりを消して引いたのは、悪いことばかりじゃありませんよ。……黒幕が手を引いたのは、おそらく銀河通商がいるからです。今は、ベリル運送の強化に集中すべきです」


「それは、そうなんだけどさあ……」


 俺たちが話しているうちに拿捕猫耳の出撃準備が整う。

 ベリルが頷くと、拿捕猫耳が降伏した4隻へとりつき、捕虜の拘束と船の安全確認を行う。

 粘着弾の除去と曳航はその後だ。


「まずは支払いですね。次にキャッシュの確保。……買い叩かれないよう、交渉、頑張りましょう」


 タキオン砲を複数搭載した大型船3隻と、エンジン妨害装置を搭載した小型船は、どれもかなり高価そうに見える。

 しかし、銀河通商への支払いと当面の運転資金を賄える額で売れるかどうか、正直、かなり心配だ。


「通商にはかなり無理を聞いて貰ったからね。僕、今から憂鬱だよ」


 こうして、ケモ耳プラントとの戦争『は』ベリル運送の完全勝利で終わった。


「銀河通商の交渉はかなりえげつないですからね」


「サルくん。今だけは勝利にひたらせてくれても良いんだよ?」


 戦争以上の困難が、すぐそこに待ち受けていた。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:2 防衛:5 遠征:9


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT CRUISER *4

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3-[借金Lv5]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv1]※出張中

船長猫耳ズ|船長Lv2-[猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ RENTAL FLEET

◆ IMPERIAL STANDARD CRUISER *3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

光翼人間 |船長Lv1+[光翼Lv1]



◆ CAPTURED

拿捕船 *4 ※価値は「備蓄:6」相当。通商への支払い義務有



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:6 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:2 *4 / 船体:2(修理待ち) *4 / 船体:1 *7


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]

救助猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]

新人猫耳ズ|船長Lv1-[従順Lv2]

猫耳幼児ズ|学生Lv1-[猫語Lv1]



◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1


拿捕船 *10 ※価値は「備蓄:4」相当



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:2 / 備蓄:0 / 兵装:1

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