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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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54.地球人ガチャ

『ご覧ください! ベリル運送艦隊が、ケモ耳プラント艦隊の救助を行わず撤退していきます!』


 生放送のニュースは、ずいぶんと敵寄りだ。


「ケモ耳プラントに、マスコミに金を出す余裕があるとは思えないんですが」


 ニュースを基本的に信用しない俺は、ニュースの内容よりもその背景に興味がある。


「僕らを攻撃してくるなら艦隊でくればいいのに!」


 ベリル社長は『ぷんすこ』しながら操縦している。

 速度は光速の約3万倍だ。

 最初は俺の自力センサー経由の情報があっても怖がっていたが、最近では情報をしっかり確認しながら丁寧に操縦をして自信を積み重ねている。


「社長」


「ん。そろそろ減速を始めるね。……最近ブラン先輩と教科書読み直したんだけど、この船に限らず、銀河通商の船ってエネルギー効率良すぎない? すっごく減速や加速してるのに、母港から出撃して帰還するまで無補給でいけるんだけど」


「そういうものと理解するしかないと思います」


 俺の物理の知識は大学の教養課程までで更新が止まっている。

 通商の商品カタログを見ても『そういうもの』と受け止めているだけなので、技術面の助言はまったくできない。


「あれ? サルくん、なんかキン姉から通信要求。珍しいね」


「社長は操縦に集中してください。今日は別会社の新人3人と、戦利品の6隻まで引き連れていますからね。……キンさんからの通信は俺が受けますね」


「ん!」


 ベリルは操縦に集中する。

 鼻歌が聞こえてくるが、操縦は安定しているし周辺への警戒も問題なく行えている。

 注意をするほどでもないだろう。


「こちらベリル号、サルです。キンさんどうしました?」


『どうしましたじゃねーにゃ』


 心底疲れた顔でキンが言う。

 拿捕班をほとんど連れて行ったので、仕事が進まずストレスが溜まっているのかもしれない。


『新しい戦利品を6隻、どうやって修理するにゃ?』


「大破した船からパーツをとって、残り3隻を修理するとか?」


 俺は技術に詳しくないだけでなく修理にも詳しくないので、意見ではなく感想しか言えない。

 キンはため息をつく元気もなく、通信の向こうで頭を抱えた。


『人も設備も足りねーにゃ。でも、良い船があるのに修理もできずそのままってのは論外にゃ』


「あの技術レベルの船を修理するとなると、普通なら正規艦隊の造船所が必要っす。先代ベリル号とベリル号を修理できてるキンさんはとんでもないっすよ?」


 猛烈な速度で(主にブルネットに確認してもらうための)報告書を書いていたスッスが口をはさむ。


『毎回、神経をめちゃくちゃ酷使してなんとかやってただけにゃ。でももう無理にゃ。レンタル船の補給をして先代と今代の修理をするのも、正直きついにゃ』


「……キンさん。非常に言いづらいのですが、レンタル船は3隻とも被弾しています」


『にゃあ』


 限界に達したキンが、その場で丸くなって毛づくろいを始めた。



  ☆



「壮観ね」


 母港で合流したブルネットと一緒に、透明な壁を通して今回の戦利品を眺める。

 装甲を『殻剥き』された大型船が3隻と、全体の2割から3割が失われた大破した大型船が3隻の、合計6隻が並んでいる。


「6隻とも修理は可能なのでしょう? 現在の価値でも、サルさんを除くベリル運送の全資産より高額よ」


「俺個人としては異を唱えたいですが、ブルネットが言うなら金銭的にはその通りなのでしょう」


 じっとブルネットを見る。

 ブルネットが楽しそうに『くすり』と笑う。


「修理してあの子たちと下僕たちを乗せれば、価値は一桁増えるわ。今この6隻を手放すのは、馬鹿であると同時に、私たちに対する裏切りよ」


 微笑んでいても、殺意に近い気合いが感じられる。

 ふて寝を続けていたキンが『びくり』と体を震わせた。


「この6隻すべては無理でしょうが、修理した船はベリル号や先代ベリル号のように、俺たちにとっての主力艦になります。キンさんや拿捕班以外の人間に任せるのは、正直怖いですよ」


「現実的に考えると銀河通商に修理を依頼するしかないのでしょうけど、そこまで頼ってしまうと子会社化に向かって一直線の気がするのよね」


「同感です」


「でもできないことはできねーにゃ」


 キンには立ち上がる気力がないが、口を挟む程度の気力は戻ってきたようだ。


「サルさんが『分からないときは分かる人に聞くべき』と言ったことがあったわよね。例の地球人たちには頼れないかしら」


「もう頼ったにゃ。にゃーの方が宇宙船に詳しいんだから、超光速技術の保有を禁止されてる地球人に聞くんじゃねー、って言われたにゃ」


「それは確かに」


「隣接星系の開拓に参加している地球人なら制限が外れるらしいけど、例の人たちはまだ地球の地表にいるものね」


 俺もブルネットも即座に納得した。


 しかし困った。

 今回の戦利品を何隻か売り飛ばしても、本来の価値よりはるかに低価格でしか売れない。


 俺たちには金も時間も人材も不足している。

 余裕があるとしたら、修理が済んでいない戦利品の宇宙船と、もとは宇宙船だった残骸ジャンクパーツくらいだ。


(……ジャンクパーツ?)


 健康で充実した生活で忘れかけていたブラック労働時代の思い出が蘇る。

 どうしても必要なソフトを少なすぎる予算で動かすため、ジャンクパーツを調達してパソコンを組み立てていた記憶だ。


(ケース、サイズとメンテの難易度、ふむ)


 タブレットを取り出して残骸の在庫を表示する。


「修理しようとすれば大変なものばかりですが、比較的損傷の少ない箇所だけを使って整備区を作ることは可能ですか? 修理や組み立てがしやすくなるよう、たっぷりと余裕を持った間取りの整備区です」


「どういうことかしら、サルさん」


 整備に詳しくないブルネットは、不思議そうに俺とタブレットを見比べる。

 銀河通商関係者を除けばこの星系随一の技術者であるキンは、強烈な呆れと、同じくらい強烈な驚きの交じった表情で俺を見た。


「サル、そいつは、10の金ですむのに100の金を使うようなもんにゃ」


「俺は専門家ではないので、最終的にはキンさんの意見に従うつもりです。ただ、現在に限定すれば、余っている残骸を贅沢に使って、修理や整備が可能な場所を作るのが有効な気がするのです」


 キンが腕を組む。

 誤魔化すのでも威嚇するのでもなく、思考に集中するために自らの動きを制限したのだ。


「感覚的には論外なのに、計算『は』合ってるのが気持ち悪いにゃ」


 キンが作業着のポケットから自分のタブレットを取り出して計算し、その後、検算を繰り返している。


「いい材料を使えば気密もよくなるにゃ。作業できる空間が広いなら、腕がそれほどでもねー奴でも手伝えるようになる。……いけるにゃ?」


 口では「いける」と言っているのに、キンはまだ納得できていないようだ。


「キン。ケモ耳プラントは停戦交渉すら私たちに申し込んでないわ。追い込まれて混乱しているだけという可能性はあるけど、強力な増援の『あて』があるのかもしれないわよ?」


 ブルネットは落ち着いた口調と態度で、キンに静かに語りかける。


「理性と感情の板挟みにゃ……。んに゛ゃあ……」


 キンは何往復か転がってから、ゆっくりと体を起こす。


「なあサル。スッスが送ってきた報告書、アレ、マジにゃ?」


「高速船が必要という点では俺も同意見です。今は戦利品になっている船と戦ったとき、相手は高速での戦闘に慣れているだけでなく、戦い方も洗練されていました」


「……もったいねーけど、しかたねーかー」


 キンは、拿捕班に『緊急呼び出し』ではなく『今から6時間は絶対に寝てろ』という命令を送信する。

 6時間のうちに段取りを整えるつもりだ。


「先代ベリル号とレンタル船3隻を借りるにゃ。にゃーたち拿捕班だけじゃ足りねーから、トラクタービームを使うにゃ」


「レンタル艦隊には話を通しておくわ」


「その4隻が通常の配置から抜けると、別の星系を攻撃するのは難しいですね。防御中心の計画を立てて社長に提案します」


 会議と呼ぶには雑談要素が強い会話でベリル運送の方針が決まった。

 もちろんベリルが別の方針を選択すれば即座に撤回されるが、戦力増強はベリルが選択した大方針なので、まずそのまま受け入れられるはずだ。


「あなた。実は私、少しどきどきしているわ」


「俺もですよ。大量の残骸……ジャンクパーツを使った整備区がどうなるか、今から楽しみでたまりませんよ」


 これまでのベリル運送は、艦載機サイズの宇宙船を除いて、すべての船を母港の外で修理してきた。

 整備区が完成すれば、艦載機サイズの宇宙船も、巡洋艦サイズの大型宇宙船も、猫の巣号のような特大宇宙船まで、母港で修理や整備が可能になるかもしれない。


「母港が立派になるのは嬉しいものね」


 笑顔のブルネットに、俺も笑顔で頷いた。



  ☆



「記録映像を撮っていいですか? こんな馬鹿な工事、銀河レベルで珍しいですし」


 直接母港に顔を出した星系管制が、ジャージ姿のまま真顔で聞いている。


「だめ! お得意様の銀河通商でもうちの機密情報は渡せないよ。あと、馬鹿じゃないからね!」


 ベリル運送のトップとして、ベリルが断固として拒否する。


「これは星系管制でも第7営業艦隊第1分遣隊司令としてでもなく、大口出資者としての要求です」


「ぐぬぬ」


 ベリル社長の猫耳と尻尾がストレスでいっぱいいっぱいの反応だ。

 俺が咳払いをすると、まだ光翼が黒っぽい星系管制とベリル社長が同時に振り向く。

 ……このふたり、案外相性がいいのかもしれない。


「サルくん。今、何か僕を馬鹿にすること考えなかった?」


「そんなこと考えていませんよ。社長もスッスから規則正しい生活を推奨されているでしょう? 仮眠をとってもいいのでは」


「僕、そんなに顔色悪い?」


 ベリルは今、気合いと集中力が素晴らしいバランスで維持できている。

 艦隊戦でも経営判断でも、高度な判断を高速で下せるだろう。

 しかし、顔色は良くない。


「気合いで体調不良を抑え込んでいる気配が少しあります」


 地表でのブラック労働のときに、同僚が似たような感じになったのを何度か見た気がした。


「んー、じゃあこの場はサルくんにお願い! 撮影はいいけど情報管理はしっかりしてよね!」


 ベリルは星系管制に釘を刺してから、仮眠室がある方向へ足早に消えた。


「順調のようですね」


「ええ。そちらもそのようで」


 地球がある方向をちらりと『見』る。

 おそらく俺のような自力センサー持ちに対するジャミングのようなものが作動しているが、惑星全体の環境が安定しているのは分かる。


「猿谷さん、本格的に常人ではなくなってきてますね」


「あの方やスッスも似たようなことを言っていましたが、その翼を持っている人たちの独特の表現ですか?」


 俺が尋ねると、星系管制は瞬きした。


「ええまあ……。猿谷さん、『常人ではなくなったらどうなるか』とは聞かないんですね」


「猫耳や翼持ちがいる宇宙で常人がどうとか言われても正直……」


 俺の本音だ。


「家族や仲間に悪影響があるなら、ぜひ聞かせて欲しいですね」


「いえ、直接的な悪影響はないです。人材としての価値が上がった結果、面倒なことは起きるかもですが」


 星系管制の光翼の黒が薄れて、黒から灰色になった。


「なら、これまで通りですね」


 俺と星系管制はふたり並んで、透明な装甲の外を見る。

 そこでは、トラクタービームと拿捕班による、宇宙に巨大な整備区を組み立てていく一大スペクタクルが展開していた。


「猿谷さんとベリル運送はその通りですけど、地球人の立場は悪い方向へ変化するかもしれません」


 星系管制は揶揄でも取り引きでもなく、おそらく俺に対する飴のつもりで情報を口にする。


「猿谷さんという人材が現れたのは、ほとんどの存在にとって予想外でした。地球人は『強力な能力の持ち主が最近誕生した種族』になったわけでして」


「……地球人の立場が改善されるような気がしますが」


「地球人に人権がまだあれば、確実に改善されたと思います。今は、ほとんどの地球人の人権は銀河で認められていないので、『ガチャ』目的で『量産』される可能性があります。……ケモ耳プラントの猫耳用工場を少し改造して、海賊にさらわれた地球人を利用すれば、おそらく、『量産』できちゃいますよ」


「……嫌な世の中ですねえ」


 そんな『ガチャ』をする連中にとっては、俺とブルネットの子供も『ガチャ』1回分だろうな。

 心底むかつくぜ。


「地球艦隊と、復讐者の警備会社にも情報を共有しておきます。あのニュースに金を出していた連中が、『ガチャ』をする可能性はあるでしょうか?」


「さあ、そこまでは。もしそうだとしたら、もう『ガチャ』は始まっているかもしれません」


 その日のうちに整備区は組み上がり、与圧と酸素の供給が行われた。

 これからは、修理が必要な高速船が整備区へ運び込まれ、修理と改造が行われることになる。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:1 防衛:3 遠征:6


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2  ※工事に参加中

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3-[借金Lv4]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ RENTAL FLEET

◆ IMPERIAL STANDARD CRUISER *3  ※工事に参加中

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

光翼人間 |船長Lv1+[光翼Lv1]



◆ CAPTURED

◆ Armored Cruiser *6  ※3隻は中破。3隻は大破

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:3 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:3


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]

救助猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]


◆ GUEST

特攻猫耳ズ|船長Lv1-[従順Lv2]



◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:2 / 装甲:0 / 修理:3 / 居住:2 / 備蓄:1 / 兵装:1

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