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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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52.光速一万倍の企業戦争

「分からないときは分かる人に聞くべきだと思うんです」


 臨時の宴会場と化した公園区で、俺は赤身肉の焼肉を皿に載せながら言う。


「星系管制に借りを作るのは嫌!」


 ベリルは口のまわりを脂でべったりさせている。

 小綺麗な服の上からエプロンを装着したブランが、甲斐甲斐しくベリルの口を拭いたり新しく焼肉を運んできたりしている。


「サルさん。この件に関しては私もベリルちゃんと同意見よ。感情ではなく、これ以上銀河通商の影響力が強くなると困るという理由からだけど」


「はい。社長の意見もブルネットの意見も100パーセント正しいと思います」


 キンの空のジョッキに、何故かこの場所にある『地表で著名なビール』を注ぐ。

 ブルネットとベリルにはソフトドリンク、俺にはわざわざ作ってもらった常温の麦茶だ。


「つまりどういうことにゃ?」


 けふっ、と脂と酒くさい息を吐いてから、キンがジョッキを傾ける。


「自称連中が母港を襲ってきたとき、最初に警告してくれた地球人がいたでしょう?」


「ああ、あのときの!」


 ベリル社長が一瞬で機嫌を直す。

 あの警告がなければ母港を守りきれなかったので、警告をした人間に対する好感度は高い。


「情報の分析を依頼して、最初に返ってきた分析『だけ』が正しかったというあれね。あれで、地球人全体を信用することはやめようということになったと思うけど」


 ブルネットは、俺が地球出身であることに配慮して、普段の厳しい言い方は避けてくれている。


「にゃーのダチに直接依頼するにゃ?」


 キンの食事は止まらない。


「はい。可能ならベリル号に乗せて偵察に同行してもらいたいです。確か、子供の頃に読んだ本に将校斥候という単語があった気がしますし、銀河通商に大金を払ったり大きな借りを作ったりするより、かなりマシではないかと思いまして」


 俺たちに挨拶したがっている新入社員や、俺たちに『かまえー』という視線を向けてくる船長猫耳や拿捕猫耳も多いが、今は対策を話し合うのが最優先だ。


「ベリル号に乗せるの?」


「リスクはあるわね」


「生の情報に触れるのはでけーはずにゃ」


 俺を含めて悩みはしたが、最終的には『とりあえず一度試してみよう』ということになった。



  ☆



 地球の軍人たちへの依頼から、彼らを乗せた偵察飛行、母港への帰還まで、6時間で終わらせた。


「「「ありがとうございました!」」」


「「「ありがとうございましたにゃ!」」」


 持ち場を離れられないメンバーを除いた全員で地球人を見送る。

 俺がベリル号で『ケモ耳プラントの工場』の近くまで飛んで『見』て帰ってくるだけの飛行だったが、得られたものは予想外に多かった。


「「「ふつーのおばちゃんとおっさんだったにゃ!」」」


 飛行に同行していた船長猫耳たちが失礼なことを言う。


「あの仕事ぶりを見てそんなこと言うなら、一度再学習だね」


 にっこり笑うベリル社長が怖い。

 逃げたらもっと怖くなると分かっている船長猫耳たちは、本人たちは『こっそり』のつもりで、社長に対する盾にするつもりで俺の後ろに隠れようとする。


「しかし、俺たちより限られた情報しか持っていないはずなのに、よくここまで分かりますね」


 俺はタブレットを持ち上げる。

 出発する前は『ケモ耳プラントの工場』の位置と『ケモ耳プラントの残存艦隊』の数と位置しか分からなかったのに、今では艦隊の構成や使用目的の推測まで『みっちり』書き込まれている。

 開戦直後と比べて2倍、株価が回復する直前と比べて4倍の戦力に膨れ上がっていた。


「この情報が枝葉末節というのだから、やはり軍事の専門家は欲しいわ」


 速度の優位があれば現在の戦力でも十分。問題は技術で追いつかれたときだと、彼らは強く主張していた。


「ブルネットお姉ちゃん。いきなりは無理だよ。でも、うん。欲しいよね」


 ベリル社長が目配せする。

 拿捕猫耳が音もなく忍び寄り、船長猫耳たちが抵抗もできずに捕獲される。


「「「ふとーたいほにゃ!」」」


「妙な言葉をどこから覚えてくるのですかね……」


「さあ? 僕はこの子たちに『失礼』しないよう言い聞かせるから、サルくんとお姉ちゃんは手配をよろしくね!」


 ベリルを先頭に、船長猫耳を担いだ拿捕猫耳が出発する。

 俺とブルネットは目をあわせて、小さく、楽しそうに笑った。



  ☆



 銀河通商に通信要求をすると、ほとんど待たされることなく通信が繋がった。


『猿谷さんからの連絡とは珍しいですね』


 星系管制の口調は普段のままだが服装が制服だ。

 背中の光翼は静かに輝き、直感的にどちらが上かを視覚から叩き込んでくる。

 それを理解しているから、俺は要件だけを話す。


「十字架型の大型宇宙船を購入したいのです」


 ゆっくりと上下していた光翼が不自然に停止した。

 星系管制の表情は変わらず、しかし俺の自力センサーは大きめの動揺を捉えている。

 どうやら、意識すれば人の感情まで『見』えるようになったらしい。


『今のベリル運送の財務状況では大変な負担になりますよ? 他の艦種であればお安くできますが』


「光速の一万倍以上で戦闘可能な宇宙船を増やすつもりです。今だとベリル号と先代ベリル号の2隻しかないですから」


『……とてもお安くできますが』


 星系管制が表面上も焦りを隠せなくなる。

 俺は、地球の軍人たちの受け売りを口にする。


「今後は光速の一万倍超えの戦闘が増えると予測しています。資産をある程度手放してでも、超光速船を増やす予定です」


『……ちくしょう』


 星系管制が肩を落とす。

 光翼に至っては『へなへな』と力が抜けて床まで垂れる。


『誰が猿谷さんに入れ知恵したんです。ええ言われなくても分かります。地表にまだ人材がいたんですね。気付かないなら子会社化までいけたのに』


 『どっこいしょ』と力を入れ直し、星系管制が俺を改めて見る。

 制服なのにジャージ姿なみに気合いが抜けている。


『で、何隻必要です?』


「理想は現役パイロットの人数分ですが、最低限2隻は欲しいです。合計4隻なら二手に別れることもできますし」


『無茶を言いますね。猿谷さんが身売りすれば10隻以上買えますけど、猿谷さん以外を全部売り払っても2隻分には足りませんよ』


 デリカシーは皆無だが率直なので、俺は星系管制のことは嫌いではない。


「私は身売りするつもりはないですし、それはあなたもご存知でしょう。まだ交渉を続けているということは、あなたが欲しいものが、俺以外にもベリル運送にあるのでしょう?」


 無茶を言っている自覚はあるので、できる限り譲歩するつもりはある。


『そうですね。そちらでスッスと名乗っている人間と同一の待遇で、第7営業艦隊から3人の出向を受け入れて頂ければ、3隻レンタルしますよ?』


「それは物理的に無理です。スッスの訓練にもかなり時間を……いやあなた、なんて顔をしてるんですか」


 光翼人間は顔が良くて雰囲気が神秘的なので、嫉妬や怒りの表情を浮かべると非常に迫力があった。


『失礼しました。自称スッスに出し抜かれたことにショックを受けただけです』


 光翼が黒くなったまま戻っていないことにも気づいたが、怖いので指摘しないでおく。


『猿谷さん。ベリル運送のおかれた状況、どの程度把握していますか?』


「把握はしていませんが、予想なら。ケモ耳プラントより上で、銀河通商より下の企業が、俺を狙って戦力を送り込んできている恐れがあります」


『恐れではなく事実です。銀河通商よりは小規模ですが、第7営業艦隊単独で相手取るのは厳しい企業も動いています。……この規模の企業なら、猿谷さんを得るために会社を賭けることも有り得ます』


 星系管制は宇宙船のデータを送信してきた。

 十字架型ではなく、球形の装甲の隙間から砲口やエンジンが覗いている独特な形状の船だ。

 つい先程、俺たちが偵察したときに『見』た船でもある。


「あなた。この船、データが正しいなら先代ベリル号とほぼ同性能よ」


 ここまで無言でいたブルネットが俺に囁く。

 先代ベリル号と同性能なら、銀河通商第7営業艦隊を構成する船とも戦闘力では同程度ということだ。

 俺が星系管制を見る目に、疑いの色が交じってしまった。


『誤解です、とは言い切れません。我々銀河通商が使用している船は売り物でもあります。他の営業艦隊が販売した船が使用されている可能性は常にあります』


 星系管制の説明を聞きながら、俺とブルネットは協力して偵察結果を再検証する。

 球形の大型宇宙船の数は8隻。

 正面から戦っても強い船だが、この8隻が通商破壊などの嫌がらせをベリル運送に対して行ったときの被害は、おそらくベリル運送にとって致命的なものになる。


 おそらく先遣隊だけでこれが8隻か。

 これは、かなり厳しい。


「十字架型が3隻欲しくなりますね」


『今、猿谷さんが戦死や拉致されたらこちらの予定も滅茶苦茶になります。名目をでっち上げて3隻レンタルしますが、レンタル料は必要ですからね?』


 星系管制から宇宙船とパイロットのデータが送られてくる。

 宇宙船の方は予想通りの性能で、パイロットの方は予想未満だった。


「俺が地球脱出時に見たパイロットではないですね」


『彼らは第7営業艦隊の本隊にいますよ。出向させる3人を鍛えて頂ければ、その分レンタル料は勉強しますので、よろしくお願いしますね?』


 最初からこれが狙いだった気がするが、それを口にしない理性が俺にもブルネットにもあった。



  ☆



 数日後。

 ケモ耳プラントの最後の拠点である工場を、俺たちは光が届くまで数分かかる距離から見下ろしていた。


『ケモ耳プラントの大艦隊が進撃を開始しました! 噂のベリル運送はどう迎撃するのでしょうか!?』


 無責任なアナウンサーの声が超光速通信網に流れている。

 どんな文明も根っこは変わらないんだなと思いながら、俺はケモ耳プラントの大艦隊を『見』る。


「数は情報通りです。船ごとの性能は分かりません」


 外見が特徴的ならある程度予測はできるんだが、一般的な外見の宇宙船なら分からない。


「うん! スッス、情報連結は?」


「レンタルの3隻も連結済みっす」


「連結してこれかあ……。分かった。スッスは操縦に専念して」


「了解っす!」


 ベリル号と先代ベリル号は補給もパイロットの健康も万全だが、レンタルという名目で加わった3隻だけは、艦隊との連携が明らかに遅れている。


「腕鈍ったんじゃないっすか?」


『抜け駆けした奴がよく言う!』


 1隻目の船長が、我慢しきれずスッスに文句の通信を送って来た。


「礼儀はどうでもいいけど命令には従ってね。契約上許された命令しかしないけど、相手は大戦力なんだから」


 ベリルと、先代ベリル号の船長猫耳たちが、データと猫語でやりとりしながらエンジンとタキオン砲を使用する。


「一旦離脱!」


『『『にゃ!』』』


 十数秒間かけてタキオン砲が吐き出したタキオン粒子が、ひとつの塊として直進する。

 レンタル艦隊の3隻からのタキオン粒子は、ひとつの塊にまとまりきれず、とても細くとても長い棒状だ。

 どちらも狙いは、ケモ耳プラントの大艦隊の中央なんだが、後者が少しずれている。


『『『にゃっ?』』』


 船長猫耳たちが猫語で疑問を口にする。


「工場を破壊しても降伏するか分からないからね。まず、乗っている人数が少ない艦隊からだよ。それに……」


 大艦隊から8つの球が飛び出した。

 こちらのタキオン粒子が、下僕の自力センサーなら検知できるぎりぎりの距離まで近付いた瞬間だった。


「へえ」


 ベリルが牙を剥き出しにして好戦的な笑みを浮かべる。

 8隻の球型宇宙船が、狙いの精度だけならベリル社長に匹敵する正確さで、こちらが放ったタキオン粒子を狙い撃ったのだ。


「相殺、できるものなのですか?」


 激突によるエネルギー変化が激しすぎて、俺の自力センサーでもよく分からない。


「よく狙えば『弾く』ことはできるよ。エネルギー効率最悪だし、躱すなら確実に成功するから、僕はわざわざ『弾く』ことはしないけどね」


 タキオン粒子が何もない方向へ消えていく。

 いずれにせよ、ベリル号と先代ベリル号の射撃は敵8隻により防がれた。

 少し遅れて、レンタル艦隊の射撃も、ケモ耳プラント艦隊が協力して展開したシールドにより防がれてしまう。


「位置を変えるよ!」


 ベリル号を先頭に、俺たちは加速する。

 球形の8隻はランダムな回避行動をとっているが、こちらを追ってこない。

 俺たちがどこにいるのか分からないのかもしれない。


「2回目の攻撃開始。撃ち終わったら即座に僕についてくること!」


 再度の攻撃が行われる。

 今度は、ケモ耳プラント艦隊の先頭と最後尾に向けて一撃ずつだ。

 それぞれのエネルギー量は最初の3分の1にしている。

 二手に分かれる方が短時間で迎撃できるのに、8隻の球形宇宙船は艦隊の先頭に向かってから最後尾へ向かうという無駄をする。


「敵艦隊には、自力センサー持ちがひとりしかいないのかもしれませんね」


「実は複数人いる可能性はあるけど、実戦でしかける罠としては危険過ぎると思う。……サルくん、このまま攻める?」


「レンタル艦隊との連携と、レンタル艦隊の練度に不安があります。大勝利してもレンタル艦隊が全滅だと賠償金でベリル運送が破産しますので、ここは一旦母港まで戻ってぎりぎりまで訓練するのも手かと」


 癒着を疑われるような(戦力の大きさの割には)低価格でレンタルされているとはいえ、十字架型大型船とそのパイロットが失われたときの賠償金は膨大だ。


「んぐっ。そうだよね……」


 ベリル社長の好戦的な気分が一瞬で鎮火する。


「あの丸っこい船だけ追ってくるなら、敵の本隊から十分離れた場所で迎え撃つ手も使えます」


「もう、分かったから。撤退するよ!」


『『『にゃ!』』』


『『『了解しました!』』』


 実績と実力を兼ね備えたベリルに、出向してきた銀河通商のパイロットたちも異を唱えなかった。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:1 防衛:3 遠征:6


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3-[借金Lv3]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ RENTAL FLEET

◆ IMPERIAL STANDARD CRUISER *3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CREW

光翼人間 |船長Lv1+[光翼Lv1]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:3


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT HAND *4

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ Pawn of the Earth *4  ※修理待ち

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]

救助猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]


◆ GUEST

特攻猫耳ズ|船長Lv1-[従順Lv2]



◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:0 / 修理:0 / 居住:2 / 備蓄:5 / 兵装:1

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