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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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51/61

51.6対2なら勝てるようになる

 光翼で前が見えない。


「せんぱいっ!? 動かないで欲しいっす!」


 動揺しているスッスの声が至近距離から聞こえて、船からの警告音や音声による情報伝達が非常に聞きづらい。


「やっぱ3人乗りは無理があったんじゃないかなー」


 ベリル社長の声は隣の席から聞こえる。

 体に感じる(船の慣性制御がわざと少し残している)加速度には問題がないので、社長がうまく操縦できているのだと思う。


「俺の膝にスッスを乗せたらぎりぎりなんとかできると思ったのですが」


「ひぅっ。耳元で囁かないで欲しいっす……」


 断じて囁いてなどいないが、反論すると誤解が激化しそうなのでひとまず黙っておく。


「サルくん、今日は操縦はこのまま僕がやるよ。自力センサーは大丈夫?」


「はい。ケーブルの接続先はありませんのでキーボードと口頭での伝達になってしまいますが」


 ベリル運送の船長猫耳と比べると『下手すぎる』6機は、俺の自力センサーがしっかりと捉えている。


「んにぃ……。密着してると、こうなるんすか……」


 スッスの体から力が抜けて、後頭部周辺の髪が俺の顔にあたる。

 光翼も俺の肩から腕を覆って、非常に邪魔だ。


 とはいえスッスを雑には扱えないし、雑に扱うつもりもない。

 俺はできる限りいい『椅子』であろうとして、それが何故かスッスを刺激してしまった。


「……あの、実はふたり、できてたりする? 猫耳的には一夫多妻も多夫多妻もオッケーだけど、ブルネットお姉ちゃんに話を通しておかないと危ないよ?」


 ベリルが気遣う態度になっている。

 俺が冷静に、スッスが慌てながら否定すると、ベリルは思考を戦闘に集中させた。


「サルくん、意見」


「前方の6機はどう見ても特攻兵器です。時限、近接、遠隔のどれでも爆発できるようにされていると見るべきです」


「ん。普通なら助けようとするのは無駄で危険なことだけど……よしきた」


 銀河通商から料金の引き落としとサービス開始の通知が届く。


「一度だけのハッキングでこの機体を新品で買える額なんだよね。あの惑星がある星系の近くじゃないとしてくれないし」


 ベリル社長は『とほほ』と肩を落とす間も、敵機から目は逸らさない。

 6機の動きが乱れる。

 ベリルはそれだけでは動かず、6機と後続の敵艦隊との通信が途絶したタイミングで、方向転換と加速を開始する。


「督戦隊らしき装備と配置の船が敵艦隊に先行しています。数は3。サイズは小型。艦載機にしか通用しない小型大砲が『見』えます」


「大砲? そんなもの当たるわけが……」


「社長。すべての船に自力センサー持ちが乗ってるうちらとは違うっす」


 旧ベリル号がかすかに揺れる。

 ほんの少しだけ横へずれることで、敵艦隊からの遠距離攻撃を躱したのだ。


「そういえばそうだったにゃ」


 つい猫語の訛りが出るほど衝撃だったらしい。

 ベリルは『こほん』と咳払いしてから、猫耳らしい、残像すら見えない速度でタキオン砲へ射撃命令を出した。


 タキオン粒子による攻撃は一瞬だ。

 6機の艦載機のうちの1機が……砕け散らない。

 右側の装甲だけが抉り取られて、透明なキャノピーとその下の猫耳は無事だった。


「みんな、ついてきてる?」


『『『もちろんにゃ!』』』


『『『拿捕班はいつでもいけるよ!』』』


 ここまで手出しを禁じられていた先代ベリル号から、船長猫耳たちと拿捕猫耳たちによる元気な返事が返ってくる。


「ハッキングの効果があるうちに全部撃ち落としちゃうから、中身だけ回収お願い!」


 旧ベリル号の4つのエンジンが、猛烈な頻度で噴射と逆噴射を開始する。

 何故なら旧ベリル号に搭載されたタキオン砲は固定式だからだ。


「機体が揺れて光翼が鼻に」


「せんぱいもう勘弁してくださいっす」


「声が色っぽいのが怖いんだけど! 1機目解体完了! 2機目開始!」


 タキオン砲の連射の影響でエネルギー残量は既に79パーセント。

 すべてのエンジンを潰された1機目が何もない方向へ慣性飛行して、途中で先代ベリル号のトラクターに捕獲された上で、問答無用で乗り込んできた拿捕班に猫耳を連れていかれた。


『馬鹿な、この距離で迎撃だと?』


 敵艦隊の通信が飛んでくる。

 もちろん、そんなものに応じている暇はない。


「右から2機、左上から3機!」


 キーボードへの入力がつらいので口頭で伝達する。


「了解サルくん!」


 俺が伝え終える前に、ベリルは回避を終えている。


「先に3機目! 4機目と5機目のエンジンも片側もらうよ!」


 タキオン砲が唸りをあげる。

 エネルギー残量が57パーセントまで低下する。

 3機目の全エンジンと、4機目の右側エンジン、5機目の左側エンジンの残骸が、戦場の外へ流れていく。


『『『にゃ!』』』


「任せる!」


 先代ベリル号が1機目の残骸を放棄。

 タキオン砲で2機目を牽制しながら3機目をトラクタービームで捕獲する。


 近距離の通信は回復したらしい2機目と6機目が、根本的な練度の不足が隠せない連携で旧ベリル号を挟み打ちにしようとする。


『『ここで倒さないと、私たちはっ』』


「知らないの? 戦場では強者が総取りなの。君たちの命も、未来も、尊厳もね!」


 闘争本能に目を輝かせて喋るベリル社長は、どう見ても悪役っぽい。


 俺は近距離の戦いは社長に任せ、俺自身は敵艦隊の動きをリアルタイムで把握し続ける。


「連中、特攻兵器を進路の安全確認のために使うつもりのようです。おそらく光速の数千倍を目指して加速を開始」


「任せた!」


「了解です。母港にデブリ網の展開を指示します」


 言葉を交わす間も戦闘は加速しながら先へ進む。

 船長として必要な技能をすべて修めたベリル社長が、おそらく栄養も訓練環境も足りていない猫耳パイロット相手に格の違いをみせつける。


『『うしろっ?』』


「抵抗しないなら助けてあげる」


 声はいつもと同じなのに、圧倒的な自信と実績が壮絶な色気とカリスマをもたらす。


『『っ!?』』


 2機目と6機目のパイロットが漏らした吐息に、既に敵意は存在しなかった。


「抵抗しても助けるんだけどね!」


『『えっ!?』』


 罠が怖いのでとりあえず戦闘力を奪うのは当然だ。

 ベリル社長はエンジンだけでなく兵器までピンポイント攻撃して吹き飛ばし、操縦室周辺だけ残った2機目と6機目が宇宙に漂った。


「社長。そろそろハッキングの効果が切れると連絡がありました」


「そこのふたり、脱出して! 宇宙服は投げ渡すから酸素が足りないならそこから吸って!」


「キャノピー開けて作業するっす! 先輩、絶対に動かないでくださいっす!」


 スッスが光翼を広げながらキャノピーを上げ、隙間から器用に身を乗り出して装甲から宇宙服を外して投擲していく。


「……力が強いですね」


「あの方みたいに生身で超光速移動はできないっすけど、これでも頑丈な種族っすから」


 俺から少し離れたスッスはいつも通り……というには、頬が少し赤く、肌がしっとりして見えた。


「あと2機!」


『『『こっちの救助は終わったにゃ!』』』


「片方よろしく!」


 エネルギー残量は既に33パーセント。

 近距離では十分に強力な対空レーザーを連射する4機目と5機目を同時に相手にするには苦しい状況だ。

 しかし圧倒的な加速力で飛来した先代ベリル号が、4機目をトラクタービームで捕獲して散々にふりまわす。

 4機目が対空レーザーで反撃しても、大型船としては薄いが艦載機基準では十分に分厚いシールドで防ぐ。


『そんな。6対2なのにっ』


 5機目から響いた悲痛な声に、ベリルが優しく返す。


「だいじょうぶ。君もうちでしっかり訓練すれば、6対2なら勝てるようになるから」


『ひっ』


 恐怖で動けなくなったパイロットを無視して、操縦席以外のすべてをタキオン砲で丁寧に吹き飛ばす。

 これでエネルギーが27パーセント。

 残った座席にワイヤーアンカー(結構前に再購入してとりつけた)を撃ちこんで、俺たちは先代ベリル号と6人の(強制的に)新人にしたパイロットを引き連れ、母港へ向かって飛ぶ。


『あなた。デブリの代わりに粘着弾を撒いたわ。座標のデータは必要?』


「可能性は低いですが傍受と通信の暗号が解読される恐れがあります。俺が『見』て避けます」


「あの、お姉ちゃん? 僕、船長で社長なんだけど、サルくんと相談して決めるの?」


 恐る恐る言うベリルからは、先程までのカリスマも迫力も感じられない。


『スッスを制止できなかったベリルちゃん? 私に何か御用かしら』


「な、なんでもないです……」


 なお、スッスは俺の膝の上で死んだふりをしている。


『あなた。帰ってから詳しい話、聞かせてくださいね』


「もちろんです」


 俺は必要なことをしただけと断言できる。

 それはそれとして、妻を不安にさせた可能性があるなら誠心誠意向き合うのが夫の義務だ。

 背後では、『特攻兵器で安全を確認したはずの空間』にあった粘着弾に光速の数百倍で接触したケモ耳プラント艦隊が、悲惨かつ壮大な大爆発を発生させていた。



  ☆



 ベリル運送で暮らす猫耳が、とても増えた。

 どれくらい増えたかというと、ベリル社長とブルネットとキンと孤児院関係者しかいなかった頃と比べて、倍以上だ。


「ちょっとちくっとするっすよー。はい防疫と遅効性の毒の除去終了! 次はそっちっす!」


「「「お風呂はこっちにゃ! 残念だけど檜の大浴場はまだ建設途中にゃ」」」


 密輸の常習犯である船長猫耳たちが、今日から客人になった(そして近いうちに社員になるだろう)6人を連れていく。

 態度が非常にデカい船長猫耳や、何の劣等感も感じていない他の猫耳を見て、6人は大きなカルチャーショックを受けているようだ。


「別に本名でなくていいから名前を申請してちょうだい。学歴の申請? 構わないけど、学歴に関係なく一通りの教育は受けてもらうわよ」


「「「こちらの世界へようこそ」」」


 地球から招聘した各分野の一流に日夜しごかれている母猫耳たちが、最初に会ったときとは別人の『過酷な研修を受けている社会人』の顔で、豪華客船で働いていた猫耳たちを手招きしている。


「おう、サル。救助作業はどうなったにゃ?」


 俺に気付いたキンが俺を呼び止めた。


「漂流中の宇宙船に籠城している連中以外は回収しました。母港に長く留めておくのも危険ですし、地球人が開拓中の星系の第1惑星に送り込みます」


 俺たちの母港を占領あるいは破壊するつもりだったケモ耳プラント艦隊は、光速の数百倍で粘着弾と正面衝突して甚大な被害を出した。

 衝突の瞬間に「やりすぎた」と俺たちが口走るほどの被害であり、まともな宇宙船など残っていない。

 一番マシな船で大破という惨状であり、修理はできるかもしれないが戦闘には使いたくない。


「そこから移動する金がないなら開拓民として働くことになるわけにゃ?」


「はい。ケモ耳プラントに要求する身代金より、母港の安全の方が大事ですから」


「安全なあ……。これから拡張する居住区はケモ耳プラント艦隊の残骸を使うとしても、装甲とか全然足りないにゃ?」


「足りないのは物と人のどちらでしょう?」


「物と人じゃにゃくて、物と人材にゃ。にゃーと今の拿捕班だけじゃ数が足りねーにゃ」


「数ヶ月後には人数不足は解消しそうですが、キンさんの求める技術があるかどうかは別問題ですからねえ……」


 それぞれ腕を組んで唸る。


「とりあえず食事に……いえ、宴会にしましょう」


「まだケモ耳プラントとの戦争は終わってないにゃ?」


「だからですよ。敵の本拠を叩いて、最初の攻撃は防ぎきったんです。適度に息抜きしないと、俺たちの精神がもちませんよ」


「にゃるほど」


 キンは納得して何度も頷く。

 そして、俺が気付くよりも早く、ブルネットの接近に気付いた。


「キンもいたのね。ちょうどいいわ」


 ブルネットが俺にタブレットを渡し、キンが横から覗き込む。

 表示されているのは、リアルタイムではないが超光速通信網経由で届けられる株価情報だ。

 一時は半減していたケモ耳プラントの株価が、以前の水準をほんの少し上回るまで上昇している。


「にゃ?」


 キンは理解できずに小首を傾げるだけだが、俺は強烈に嫌な予感に襲われる。


「ブルネット。株価上昇の理由は分かりますか」


「不明よ。銀河通商にも問い合わせたけど、高額の情報料を提示されたから買っていないわ」


 ブルネットの顔色も悪い。


「あくまで一般論ですが、有利な材料があるから株が買われて株価が上がります。……一番考えられるのは、ケモ耳プラントに援軍が現れたという展開でしょうか?」


「サル。ケモ耳プラントはもう終わりにゃ。工場には人がいっぱいいても、指揮できる人間や金や情報があった母港が吹き飛んだら、何もできねーにゃ?」


「はい。そのはずなんですが、株価がおかしいんですよ」


 俺は無意識に自力センサーを使う。

 母港の周辺に、俺たちに敵意を向けているものはいない。

 『見』る範囲を地球近くまで広げても同じだ。


(いや、まさか)


 嫌な予感が強くなる。

 ベリル運送で、最も高い値がつくとしたら、それは俺自身だ。


「俺を略奪か賠償でぶんどるつもりの勢力が参戦した、とか?」


 俺の言葉は思いつきでしかないはずなのに、ブルネットもキンも、表情をひきつらせていた。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:1 防衛:3 遠征:4


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4


◆ CREW

ベリル  |船長Lv3-[借金Lv3]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv3-[医療Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:5 遠征:3 ※サルがMK3に乗っていないため能力低下


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT HAND *4

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ Pawn of the Earth *4  ※修理待ち

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]※静養中

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]

救助猫耳ズ|学生Lv1 [衰弱Lv1]


◆ GUEST

特攻猫耳ズ|船長Lv1-[従順Lv2]



◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:0 / 修理:0 / 居住:2 / 備蓄:5 / 兵装:1

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