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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第3章 人権の値段

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50.忠実かつ優良なる猫耳たち

「社長。エネルギー残量は29パーセントです」


「宇宙港ひとつと艦隊ひとつを吹き飛ばしたらそうなっちゃうか」


 完全な不意打ちだったから、凄まじい効率で破壊できた。

 それでもこれだけのエネルギーが必要だった。


「敵の主戦力のエンジンだけ潰して逃げるっすか?」


「それもいいけど、もうちょっと工夫したいね。スッス、情報連結はできる?」


「しながら高加速は無理っすよ? 今の通信機の限界っす」


「宇宙船も宇宙船の装備も、上を見るときりがありませんね」


 俺は、この船に備え付けの銀河通商のカタログ(データとしてコンピューター内部にある)をちらりと見て、高性能通信機の価格に圧倒された。


「雑談はここまでだよ。今回は距離をとって飛びながら射撃で仕留めよう。射撃担当は猫の手号で……。サルくん、速度はどのくらいいけそう?」


「速度より加減速の頻度が重要だと思いますが、まあ千倍くらいで。正直、一撃離脱で終わらせないと、母港に戻るまでにトラブルが発生したら俺たち全員死ぬまで漂流コースですよ」


 エネルギー残量29パーセントとは、そういう状況だ。


『サルさま。敵艦隊がデブリの展開を開始しました』


 猫の巣号から下僕が報告してくる。

 俺も気付いてはいるが、こういう情報は複数の自力センサー持ちによるクロスチェックが理想だ。

 俺は感謝して情報を受け取り、既に収集した情報に『2人の自力センサーが確認』と追記した。


「情報ありがと。教本通りのデブリの撒き方だけど、撒かれる側としては厳しいね。一般的な接近ルートを使うと3割くらいの確率でぶつかっちゃう」


「信管つきの爆弾が混ざっていると6割程度になるかもしれませんね」


 俺は他人事のように言いながら『デブリを避けて通るならここ』という場所を念入りに『見る』。


「ミサイルらしきものが浮かんでいます。こちらが近付けばエンジンを点火する自動誘導型超光速ミサイルかもしれません」


「うわぁ……。あの人たち練度が高くない? ケモ耳プラントの母港より上だよ」


 ベリル社長はうんざりした表情で、しかし猫の巣号とベリル号に対する命令は的確だ。


「進路変更と加速をお願い」


『『『了解にゃ!』』』


「了解っす!」


 ほんのわずかな進路変更と、ほんのわずかな加速。

 それだけで敵艦隊による超光速戦闘への努力はすべて無意味になる。


「敵艦隊は40隻以上いるけど、僕らの母港に打撃を与える可能性のあるのは数隻だけだよ。……このまま減速せず射撃する。射撃担当は猫の手号。いける?」


 ベリル社長は静かに伝えている。


『『『もちろんにゃ! 粘着弾でエンジンを潰してやるにゃ!』』』


 船長猫耳たちはやる気十分だ。

 勢いよく発進するのではなく、エンジンを『ほんのちょっとだけ』使って、母艦である猫の巣号から100メートルほど離れる。


「うん。狙いは任せるけど弾は2割は残してね。……拿捕班は安全重視で。美味しい獲物がいても、いつもより危険を冒すのはなし。いいね?」


『『『にゃ!』』』


 拿捕猫耳たちから不満が消えて、集中力が研ぎ澄まされた顔になった。


「社長。敵艦隊の動きに変化はありません。こちらの進路変更に気付いていないと思われます」


「うん! 攻撃開始!」


 ベリルが即座に命令を下す。

 猫の手号は、多用途対空砲から粘着弾を連射する。

 もともと攻撃兵器ではないので、猫の手号から離れて行く速度は音速にも満たない。

 だが、ベリル運送の6隻からなる攻撃艦隊が速度を2割落とすだけで、光速の200倍で離れていった。


「独創的な狙いですね」


 俺ならエンジンの破壊か艦橋の破壊を狙う状況だが、猫の手号が狙っているのは『敵のエンジンに粘着弾を当ててエンジンを詰まらせること』だ。

 敵艦隊視点では光速の100倍程度あるので、粘着弾はシールドを破壊しても止まらず、エンジンにめり込んで故障させてしまうかもしれない。


「僕やブルネットお姉ちゃんなら絶対にしない射撃だけど、結構あたりそうだね」


「私もですが、確実に勝つのを優先して撃沈を狙う傾向がありますからね。勝つのが当然、勝ち方を選ぶのも当然と考える船長猫耳たちとは、どうしても違いますよ」


「うーん、それっていいことなのかな?」


「今後も勝ち続けるようにすれば、間違いなく『いいこと』になります」


 正しい、正しくないの問題ではない。

 俺たちが正しくするんだ。

 俺の意図を正確に察したらしいベリルが、一瞬だけ気合いを込めてから『にやり』と笑った。


「そうだね。ところで着弾まであと何秒?」


「今です」


 俺の自力センサーは超光速ではなく即時で『見』る。

 整った隊列の敵艦隊から、相対速度が光速の100倍で突っ込んできた粘着弾に『突き飛ばされ』て、4隻が隊列から追い出された。

 数秒で脱出艇や脱出カプセルが宇宙船から飛び出したのは、臆病を嗤うのではなく決断と損切りの早さを称賛すべきだと思う。


「特大船が4隻? 空母型が1、揚陸艦型が2、輸送艦型が1? 出来過ぎだよこれ!?」


 驚くベリルに、俺は小声で囁く。


「ベリル社長。ここは褒めてあげま……何してるんですかぁっ!」


 俺はベリルよりも大声で叫んでしまった。

 猫の手隊が、四隻そろって勝手に突撃を開始したのだ。

 加速性能はベリル号より下なので、その分をエネルギーで補う必要があるためエネルギー消費も激しい。


 敵船と速度と向きを揃えて移乗攻撃しようとすれば、母港に戻るためのエネルギーがなくなる……ちょっと待て、拿捕班が飛び出しやがった!

 拿捕班が、それぞれの猫の手号と敵船がすれ違う瞬間に飛び出し、そのまま移乗攻撃を仕掛けた?

 正気か!?


「あわわわ」


 ベリル社長は本当に「あわわわ」と言っている。

 猫耳も尻尾も眼球の動きも完全に混乱している。


『敵A、ぼうぎょかたい、りだつ!』


『敵B、いける、とつにゅう!』


『敵C、救助もとめてきてるから、抵抗してるやつもまとめて気絶させてから助けてやるにゃ!』


『敵D! なんか船に着地できちゃったからこのまま拿捕するよ!』


 拿捕班の得意げな声と得意顔が通信で送られてくる。

 敵艦隊の数的主力(今数えると38隻だった)との距離は結構ある。

 既に2隻の艦橋を掌握したので、このままなら残りの2隻も拿捕して戦場から離脱することも可能だろうが……。


「「なんて無茶を」」


 ベリルも俺も、顔色がひどくなって汗まみれだった。


「さすがっすね。自分も負けてられないっす」


 ベリル号の艦橋で冷静なのはスッスだけだ。

 冷静なだけで、考えがイカレているかもしれないのはノーコメントだ。


『猫の巣号のトラクタービームでかいしゅーされたよ!』


『敵Bだめだった、りだつ!』


『敵C、自爆装置とめられなかったから生き残りといっしょにりだつ!』


『おっちゃーん、拿捕したけど操縦よくわかんないから遠隔で操縦してー!』


 拿捕成功が1隻だけなのは構わない。

 他の特大船3隻は大破していたり自爆していたりで、俺たちの母港へたどりつけそうにないからな。


「全員無事でよかったです。本当に肝が冷えましたよ。操縦は担当しますので制御コードを……はい、受け取りました」


 特大の輸送船を猫の巣号と合流させる。

 猫の巣号は加速力は平凡だが航続距離(エネルギー容量)には優れ、しかも複数のトラクタービームを装備している。

 あちこちでEVAしている拿捕班を回収するのも、敵船の残骸から使えそうなパーツを回収するのも、慣れているだけでなく非常に効率良く進めている。


「社長。母港に戻ってからお説教しても構わないでしょうか」


「気持ちはすごく分かるけど、拿捕班はキン姉の担当だからキン姉に任せてあげて。サルくんは今回慰める係。いい?」


「……了解です。キンさんだとかなり厳しく叱りそうですし、母港に戻り次第、温かい料理でも用意しておきます」


「よろしく、サルくん。それじゃみんな、追いつかれる前に母港へ戻るよー!」


 ベリル号のエネルギー残量は18パーセント。

 この状態で戦闘すれば戦闘中にエネルギー切れになりそうなので、少し大回りして……俺の自力センサーを駆使して敵も障害物も避け、光速の数千倍で危なげなく母港へ帰還するのだった。



  ☆



 母港に戻った俺たちを出迎えたのは、キンだった。


「座れ」


 ガチギレしたキンは『にゃ』と言わない。


「「「にゃぁ」」」


 攻撃艦隊に参加した拿捕班全員が正座をしようとして、何人かがパワードスーツを着たままの正座に失敗して『ころん』と転んだ。


「サルは立ち去れ。甘くする場面じゃない」


 怒りを理性で押し込めた目を向けられ、俺は深く頭を下げてから居住区へ移動する。


「お疲れ様、あなた。今回も派手にやったわね」


 濃い茶色の髪が揺れる。

 体温の感じられる距離で止まったブルネットが、俺に常温の麦茶を渡した。


「ありがとうございます」


 熱くても冷たくても飲みづらいので本当にありがたい。

 天然食材の麦茶とデュプリケーター産の麦茶の味の違いが分からない俺だが、ブルネットの気持ちは嬉しいのでそのまま頂く。


「お姉ちゃん、会社の口座の残高がすごいことになってるんだけど……」


「宣戦布告された直後にケモ耳プラントの株を空売りしたの」


 地球なら違法性を疑われる行為だが、この銀河では合法だ。


「その割には少なくない? お姉ちゃんが以前したときは、元手は少なかったけど数倍じゃなくて何百倍も儲けてたよ?」


「お腹の子もいるのに必要以上のリスクを冒すわけないでしょう。レバレッジもかけていないし、ケモ耳プラントの母港壊滅のニュースが流れた時点で買い戻したわよ」


「でも、勝つのは確実なんだからもうちょっと粘ってもいいと思う。まだ通常時の半額だよ?」


 それは俺も思う。

 まだケモ耳プラントは複数の艦隊が健在ではあるが、母港を喪失した以上、時間経過で急激に戦力が低下する。

 ケモ耳プラントに有利な奇跡が複数起きたとしても、今より株価が上がる可能性はゼロといっていいはずだ。


「ベリルちゃん。私たちは艦隊戦の経験はあるけど、大規模な企業間戦争の経験はないのよ?」


 ブルネットの言葉に、俺は自分の判断の甘さに気付かされた。


「確かに。値動きが予測できない場面では撤退すべきでしょうね。これだけ資金があれば、拿捕した船を換金するまで資金ショートという事態は避けられそうですし」


 俺たちは規模に不相応な大戦力を持っているが、規模不相応に大きな固定費もある。

 銀河通商産の高価な材料カートリッジを使ったデュプリケーター産の食事や、銀河通商製のベリル号や先代ベリル号の運用コストは、とても大変な額なのだ。


「ん?」


 敵意と絶望と恐怖が交じったものを遠くに感じた。

 『見』ると、ケモ耳プラント艦隊がまだ遠くにいるはずの方向から、6機の艦載機が俺たちの母港へ接近中だった。


 座標を口頭で伝えるよりデータとして渡した方が早い。

 俺が会議室のケーブルを探そうとする『前』に、俺の気配から察したブルネットが、会議卓からケーブルを伸ばした。


「必要なのね?」


「はい」


 体に負担があるのは承知の上だ。

 自宅であり、妻子が住む母港を守るために、手段を選ぶつもりなどない。

 データを母港全体で共有すると、数秒で動きがあった。


『『『こちら先代ベリル号! 緊急発進するにゃ!』』』


 報告は事後報告であり、報告が届いたときには先代ベリル号は飛び立っていた。


『こいつらふらついてるにゃ』


『タキオン砲で一撃にゃ!』


『一撃して残骸が残ったら意味ないにゃ!』


 船長猫耳たちは騒がしく情報を伝えてくる。

 これなら母港の迎撃兵器との連携で撃破可能と俺が判断したとき、普段なら船長猫耳たちの報告を遮ることのない相手が、通信へ割り込んできた。


『『『サルさま、こちらを』』』


 下僕は、もとは海賊に攫われて生体パーツとして使われていた地球人だ。

 俺のようにケーブルを介してデータを送受信できる者もいて、その下僕から『敵船の半透明のキャノピーの下に見える光景』が送信されてきた。


「猫耳?」


 ベリルが呆然とつぶやく。


「自ら望んでいるようには見えないわね」


 ブルネットの言葉は冷たくもあるが、それ以上に苦々しい。

 元気で自信に満ちてやりたい放題の船長猫耳たちとは違い、ひとつ間違えば激しい折檻を受けると確信している子供のような、実際に子供にしか見えない猫耳が、小さな操縦席に押し込められている。

 その光景が、俺にあるものを連想させる。


「特攻……兵器」


 あまりのおぞましさに、俺は吐き気に襲われた。


「これがケモ耳プラントにとっての『忠実かつ優良なる猫耳たち』なんだ」


 ベリル社長の声は淡々としているのに、燃え上がるような憎悪と、それ以上の決意がある。


「サルくん。補給が終わってる旧ベリル号で出るよ」


 剥き出しになった白い牙が、室内の照明を反射して『きらり』と光る。


「自分も連れてってくれるんっすよね? 自分、専属パイロットで医者っすよ?」


 スッスは軽い態度だが、光翼が『ぎらり』と光っている。


「旧ベリル号は2人乗りですから、3人だとぎちぎちですよ? ……予備の宇宙服は装甲に貼り付けて運びましょう。救助対象は6機分ですからね」


 俺も負けてはいられない。

 気合いを込めて『にやり』と笑い、ブルネットに見送られて3人で走り出した。

◆ BERYL ATTACK FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:6


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT HAND *4

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CREW

ベリル  |船長Lv2+[財産Lv1]

サル   |操縦Lv5+[衰弱Lv3]

スッス  |操縦Lv2+[医療Lv1]

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]



◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:3


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4


◆ Pawn of the Earth *4  ※修理待ち

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2


◆ CREW

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]※妊娠中

キン   |整備Lv2+[白兵Lv2]※静養中

拿捕猫耳ズ|白兵Lv1+[整備Lv1]

船長猫耳ズ|船長Lv1+[猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv3-[信仰Lv2]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |市民Lv1 [衰弱Lv2]

ブラン  |市民Lv1 [衰弱Lv1]


◆ GUEST

救助猫耳ズ|求職Lv1 [衰弱Lv1]


◆ CAPTURED

◆ Small Stealth Ship

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:1


◆ Huge Transport Ship

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:5 / 兵装:1



◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:0 / 修理:0 / 居住:2 / 備蓄:0 / 兵装:1

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ケモ耳プラントのカスどもがよう… 許されない
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