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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第1章 地球人に人権がない銀河で

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5.殺意の株主総会

 元海賊船を母港の修理業者に預け、栗毛猫耳さんには孤児院へ子供たちを迎えに行ってもらう。

 残った俺とベリル社長は、本格的な補給も休憩も後回しにして、再度宇宙へ出撃した。


「残業だおらぁ!」


 星系に根を張る海賊に、社員2名の零細企業だけで戦いを挑むのは自殺行為だ。

 隠れた海賊船に、母港へ停泊中のベリル号を狙われたら、俺の操縦技術も全く役に立たない。


 だが忘れてはいけないことがある。


 敵は海賊だ。

 大勢に、強く、怨まれている。

 賞金など恨みの一部でしかなく、海賊の敵なら、それが海賊であっても力を貸してしまう高純度の恨みが数え切れないほどある。


「サルくん、あの採掘基地! 名義は普通の会社だけど、船も人も全部海賊だって!」


 前回の戦いでは砲手としての実力を証明したベリルが、今は通信士や情報処理担当としての能力を証明している。

 匿名で送信されてきた情報の真偽を評価し、星系内の通信から情報を拾い上げて、獲物の位置を特定したのだ。


「恨みってのは怖いですね」


 俺は、丁寧な操縦を心掛けることと、無関係な人間や組織には被害を与えないことを改めて心に誓う。


「海賊本人の情報だけじゃなくて家族の情報まで届いてるよ。サルくん、これって」


「社長。情報の送り主を探るのはナシでいきましょう。藪をつついて蛇を出すのはごめんです。あと、家族情報は使いません。やったらやり返されますしね」


 競合する宇宙海賊かもしれないし、政府や自治体に潜む復讐者かもしれない。

 その正体が何であっても、俺たちが探ろうとすれば敵対と判断される恐れがある。


「う、うん。分かった」


 ベリルが猫耳をぺたんとさせる。

 俺は怖がらせてしまったことを反省し、謝罪しようとしたがその前に採掘基地のハッチが爆発した。


『てめぇ! どうしてここが分かった!』


 ハッチの破片を押しのけ、海賊船が姿を現す。

 レーザー砲にはエネルギーはたっぷり供給されていて、いつ攻撃が始まってもおかしくない。

 俺たちが普通の宇宙船と乗組員なら、反応が遅れて一方的にレーザーで焼き切られていただろう。


 そんなことを、俺は急加速を続けるベリル号の中で考えていた。


「えーっと、会社の登録が消えた! 今のあの人たちは海賊だよ!」


「了解です社長。できれば採掘基地ごと手に入れたいんですが」


 光速の5パーセントから10パーセントの範囲で速度と進路を変化させながら、海賊船が隠れていた採掘基地を観察する。

 小さく、安普請で、あれに住むのは勘弁して欲しい物件だが、買えばベリル号の3割くらいの値段はする。


『ちょこまかとっ』


 海賊船がベリル号を見失う。

 俺は死角から接近しながら、ベリル社長に相談を持ちかける。


「降伏勧告、効くと思います?」


「効いたら罠だと思う!」


「了解です。交渉から武力行使に切り替えますね」


 俺は機関砲を射撃可能な状態にする。

 機関砲の性能は平凡かそれ以下なので、頼りになるのはベリル号本体の速度だ。


 気軽に光速の5パーセントや10パーセントの速度を出してはいるが、これはとんでもない速度だ。

 極々小さな物体でも、惑星の環境に致命的なダメージを与えることが可能だ。


「僕が狙おうか?」


「お心遣いだけ受け取ります。一度、この速度で操縦と攻撃を手分けして戦う訓練ができればいいんですが」


「本格的なシミュレーターは高額なサブスク必須だもんね……」


 採掘基地を巻き込まないよう、機関砲の弾の進路だけではなく、残骸と化した後の海賊船が向かうだろう方角も予測する。

 これが結構面倒くさいんだ。


「豊かな星系では使えない戦法かもしれません。残骸がかなり散らばりますし」


 十分に近付いてから、一度だけ撃ち、ベリル号の進路を変える。

 海賊船のシールドが機能すれば丁度いい感じのダメージになるかもと思ったのに、光速の5パーセントの弾はシールドもその中身も一撃で破壊する。

 残骸は、星系の外側へ消えていった。


「社長。あの採掘基地は?」


「壊すと罰金だから、警察に任せた方がいいと思う。……賞金、少ないね」


「ですね」


 振り込まれた賞金の額を見て、俺たちはため息を吐く。

 力と稼ぐ力は、別物だった。



  ☆



 母港が荒れていた。

 歓楽街区画では暴動が発生し、元海賊船が停泊している区画も武装した犯罪者が入り込んでいる。

 ベリル号が複数の海賊を殲滅した余波だ。


 栗毛猫耳さんが、自分自身の荷物の回収を後回しにして(結局回収できなかった)孤児たちを移動させたのは、まさに英断だった。


「「「ベリルねえちゃん!」」」


 ようやく母港に戻って顔を見せたベリルを、猫耳幼児たちが取り囲む。

 ベリルが不在中にあったことを笑顔で話すのを見れば、ベリルをどれだけ慕っているかよく分かる。


 なお、俺はもっと幼い猫耳幼児たちに押し倒されている。


「「「おっちゃんよわーい!」」」


 子供に限らず、一旦下に見た相手は雑に扱うものだ。

 幼児に触れられても嬉しくはない俺は、ひたすら忍耐の時間をすごしている。


「サルさん。何をされてるんです?」


 栗毛猫耳さんが一瞬呆れた表情をしてから、穏やかな態度で猫耳幼児たちの面倒を見る。

 俺の上からふたりの幼児が降りると、だいぶ楽になった。


「見ての通りです」


「仕事中の話をすれば一目置かれるでしょうに」


 栗毛猫耳さんは最初に会ったときよりも活動的な服装で、ベルトには銃らしきものがある。

 精悍な女戦士っぽい彼女に、馬鹿にはしていないが呆れている目で見下ろされると、妙に背筋が伸びた。


「子供相手に血生臭い話をするのもどうかと思いまして」


 宇宙海賊だけとはいえ、結構殺してしまったからな。

 俺は、子供に対しては、ただの体力不足のおっちゃんでいるつもりだ。


 猫耳幼児の数がふたりまで減ると、俺でも対抗可能になる。

 対抗といっても武力ではない。

 胸ポケットに刺さったままだったペンを手にとり、ペン回しをして注意を引きつけたのだ。

 これで少なくとも、押し倒されたりマットにされることはない、はずだ。


「サルくん?」


「おっちゃんそれなに!?」


「すごいにゃ!」


 俺から離れた猫耳幼児だけでなく、ベリルの近くにいた猫耳幼児まで寄ってくる。

 密集されて身動きがとれなくなり、相変わらずの高い体温に眠気が刺激される。

 俺のペンを巡る争奪戦が始まる前に、俺の意識は夢の中へ旅立っていった。



  ☆



「こいつ起きたにゃ」


 目覚めると、金毛金目の猫耳女がいた。

 外見年齢はベリルより上で栗毛猫耳さんの下なんだが、ガラが非常に悪い。

 今にも煙草を吹かしそう、という感じだ。


「サルくんごめん。あの子たちはしゃいじゃって」


「小型とはいえ船が家になったのにゃ。にゃーだってガキの頃ならはしゃいでたにゃ」


 金毛猫耳が、あの不味い『おかゆ』をカップから啜っている。

 音が非常に下品だ。

 麺をすする音なら全く気にしない俺が、ポーカーフェイスを保てなくなるレベルでひどい。


「んんっ」


 栗毛猫耳さんが咳払いする。

 穏やかに微笑んでいるように見えるが目が怖い。

 だらけていた金毛猫耳が直立不動になり、行儀良く椅子に座っていたベリルも姿勢を正す。

 厳しい姉と自由な妹たちだな、これは。


「これではいつまでたっても大事な話ができません。サルさん。司会をお願いできますか?」


 栗毛猫耳さんは、タブレットに似たものを俺に渡す。

 自動翻訳機が起動して文字が翻訳されると、俺が知るタブレットに限りなく近付いた。

 表示されている内容は……よし、把握した。


「はい。それでは、今から株主総会を始めます。司会は、ベリル運送社員であり、ベリル社長所有の生体パーツでもある私サルが担当します」


 猫耳3人が頷く。

 態度が悪い金毛猫耳も、猫耳幼児たちとは違って俺を舐めてはいない。

 あれだけ操縦できて、あれだけ宇宙海賊を殺せば、舐められはしないってことだ。


「ベリル運送の経営は相変わらずです。賞金で稼いだ金は固定費と修理費に消えています」


 ベリル社長だけがショックを受けて尻尾を膨らませている。

 対照的に、年上の猫耳2人は、落ち着いてはいるが殺意じみた真剣さで俺を見ている。


「続いて、ベリル運送の資産についてです。宇宙戦闘機のベリル号は、使用による消耗はありますが許容範囲です。拿捕した元海賊船は、輸送船としてなら使用可能です」


「待つにゃ。重武装タイプだと聞いたにゃ」


 金毛猫耳の全身にうっすらと古傷があり、体が比喩でなく肉食獣じみて引き締まっていることに、俺はそのとき初めて気付く。


「はい。武装はかなりの額で売れました。元海賊船には子供も乗りますから、船内環境と装甲の補修に資金が必要でした」


「にゃー……。そういう事情かぁ」


 金毛猫耳が『がくり』と肩を落とす。

 雰囲気は完全にアウトローでも、子供を大事にする意識はあるらしい。


「艦隊行動は可能かしら?」


 そう聞いてくる栗毛猫耳さんは、態度はこの中で1番マトモなのに、気配が飛び抜けて不穏だ。

 海賊を機関砲で殺したことで、倫理観のタガが外れかけているのかもしれない。


「可能ですが効率は良くないです。現在のベリル号には星系内戦闘に特化した調整をしています。航続距離を減らして機関砲を1門増設してるんです。戦闘機と輸送艦で、移動速度と航続距離が合いません」


 無理に一緒に行動すればエネルギーの無駄遣いになる。

 ベリル号を元の調整に戻すのは可能だが、結構な金がかかる。


「お姉ちゃん、キン姉。僕はこの星系で稼ぐつもり。僕、宇宙海賊、だいっきらいなの」


 ベリル社長が社長の顔をしていない。

 普通の株主総会なら非難されて当然の態度なんだろうが、ここにいる全員、程度の差はあっても海賊嫌いだ。

 出身惑星を大量の海賊に襲われた俺も、宇宙海賊は心底大嫌いだ。


「ふふっ」


「出資して正解だったにゃ」


 猫耳たちが牙を剥いて笑う。

 宇宙海賊と繋がりのある企業や役人がベリル運送に自重や取り引きを求める通信が大量に届いていたが、この場にいる全員、誰ひとり気にしていなかった。

◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT'S NEST

船体:2 / 跳躍:2 / 航続:2 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:1 / 兵装:0


◆ CREW

ベリル |船長Lv1 [借金Lv3]

サル  |操縦Lv3 [疲労Lv2]

栗毛猫耳|射撃Lv1 [借金Lv1]

金毛猫耳|白兵Lv1 [借金Lv2]

妹猫耳ズ|白兵Lv1 [未熟Lv3]

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