表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第2章 港・信用・拠点

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/58

43.光翼の使い道

 敵揚陸艦に対する移乗攻撃は、即座に却下された。


「「「なんでにゃっ!?」」」


 ショックを受けて『信じてたのに』という顔をする猫耳幼児(拿捕班と整備班を兼任)たち。

 却下した本人であるベリル社長は、苦虫を噛み潰したような表情だ。


「突入口を開けるために攻撃したら、確実に母港を巻き込んじゃうの! 今治療中の人たちも死んじゃうの!」


 回線の向こうでは、キンと母猫耳たちが奥から出てきて生き残りの応急処置を開始している。

 槍や刀や剣を量産した後に退避しきれず軽く残骸に埋まっている下僕たちもいるんだが、復讐者たちの生き残りの方が明らかに重傷なので仕方がない。

 猫耳幼児たちは露骨にテンションが下がり、その場で「にゃあ」と鳴いた。


 深刻な顔でそれを見ていたスッスが口を開く。


「先輩。金を貸して欲しいっす」


 スッスは、こんな状況で冗談を言うような奴ではない。

 何故そんな要求をしたのか詳しく聞きたくはあるが、今は時間的余裕もない。

 だから俺は、俺個人の口座から動かせる額の全額を振り込んだ。


「じゅ、十分っす! デュプリケーター用の医薬品データを購入して今インストールしたっす!」


 声も光翼も激しく動揺してしまう額だったらしい。


 ブルネットが一瞬だけ目を細める。

 これは、後でじっくり話さないと拗ねられるな。


「スッス! ナイス!」


 ベリル社長が親指を立てた。

 画面に映し出されたキンが、立っているだけがやっとの生存者に対してデュプリケーターを向け、スイッチを入れる。


 見た目は『とても効きそうな傷薬』だ。

 ジェル状のそれが、死んでいてもおかしくないほど傷ついた体に付着し、異様な速度で吸い込まれる。

 顔色も、気配も、何もかもが急速に回復に向かう。


「先輩」


「スッス個人の借金にはしませんよ」


「地球人さんたちへの報酬の一部として、ベリル運送が全額負担しなきゃって話だよね、これ」


「いえ、それは嬉しいっすけどそれじゃないっす。あの揚陸艦の装甲、なんか薄くないっすか?」


 スッスがカタログデータを送信してくる。

 銀河通商のカタログではないのでずいぶんと雰囲気が違う。


 宇宙船の乗組員、特にパイロットの負担を軽視した装備や船が多い。

 特にパイロットの扱いが酷く、俺が乗ると1回の飛行で再起不能になりそうな船が大量にあった。


「宇宙船のオプション装備の項を見て下さいっす」


 あの装甲が載っていた。

 性能は凄まじいの一言だが、但し書きが小さな文字で大量にある。


「……本当に薄いですね」


「サルくん。薄いどころじゃないよ。性能はすごいけど少し痛んだ時点で終わりだよこれ! でもスッス、たぶんまだあれ経年劣化はほとんどないよ?」


 ベリルの目が『はやく本題に入れ』とスッスに言っている。


「えっと、だからっすね。自分、こんなことができるんっす」


 スッスが光の翼を広げる。

 俺の結婚式で加護を大盤振る舞いしたリゼーレとは違い、精一杯広げても片翼で3メートル程度。

 前後に動かすと、隣にある誰も座っていない席をすりぬけ、しかし光翼が気になって近付いていた猫耳幼児の頬を優しく撫でた。


「ふにゃっ!? ふわふわにゃ!?」


「あっ」


 俺は間抜けな声をもらした。

 透過した上で接触可能ということは……。


「銀河通商の中では宴会芸にしかならない能力っすけど、対策をしていない装甲なら内側に触れられるっす。これ、使えないっすか?」


 スッスは『たぶん駄目っすよね。でもひょっとして効果があるかもしれないっすから』という感じだが、俺もベリル社長も一瞬驚愕した後は『にちゃり』とした笑みを浮かべた。


「サルくん、急いで」


「拿捕班には減速するための推進剤を多めに持たせてください。可能な限り速度は落としますがぶつかるとパワードスーツが壊れます」


「あの、社長、先輩?」


 スッスが戸惑っているうちに事態は進むしベリル号も急加速するしすぐに急減速が始まる。

 タキオン砲でようやく撃ち合える距離から、肉眼に見える距離まで近付くのに1分間もかからない。


「「「にゃぁっ!」」」


「ちょっ、翼は掴まないで欲しいっす!」


 猫耳幼児たち(拿捕班)がスッスにパワードスーツを着せてハッチへ向かう。

 敵揚陸艦との距離が最も近付いたタイミングで、拿捕班はスッスを引き連れてベリル号から飛び降りた。


『無駄だ。第一陣を撃破した程度で反撃を試みるとは、舐められたものよ』


 金髪碧眼女は相変わらず自信たっぷりだ。

 実際、何か手段はあるのだと思う。

 俺の自力センサーも『要警戒』と感じている。


『自分、あの方とは違って頑丈じゃないっす! 護衛お願いするっすよ!』


『……は?』


 金髪碧眼女が呆然と目を見開いた。


 別の画面では、スッスが葉巻型の特大宇宙船の外壁に背中から密着している。

 さらに別の画面では、スッスの光翼が器用に掴んだ携帯カメラが船内の様子を映していて、もうひとつの光翼がキーボード風の入力装置に何かを打ち込んでいる。


『たぶんこれでいけると思うっす!』


 画面の中にパワードスーツ兵が現れる。

 顔がヘルメットで隠されていても分かるほどに大慌てで、しかしヒートソードで光翼を狙う技は実に見事だ。

 一瞬でカメラが破壊され、映像が途切れた。


『ここには敵がいるっす! 別のハッチを開けるっす! あっちっす!』


『『『にゃ!』』』


 無傷のスッスを抱え上げた猫耳パワードスーツたちが、高速で移動を開始する。

 彼女たちがいた場所では、ゆっくりと装甲が開いて出入り口と化す。

 そこで警戒するパワードスーツ兵は、持ち場を離れることができずにその場に留まる。


『これ、拿捕した後どうするっす? 敵としては強くても、味方としては長持ちしそうになくて不安っす』


『『『にゃぁっ』』』


『分かってるっす。今あけるっすよー』


 スッス本人の意識としては宴会芸なのかもしれないが、神々しく輝く光翼で現実に影響を与える姿は非常に印象的だ。

 装甲の盾を構えて敵揚陸艦に接近中だった地球人たちが、スッスを見て凄まじい衝撃を受けているのが分かる。


『……こちらは自爆が可能だ』


 この状況でも落ち着いた様子で話すことができるのは、金髪碧眼女の長所ではある。


「そう」


 ベリルは冷たい。

 自爆が事実だろうが嘘だろうが、確実に仕留めるという意思が、見るだけで分かる。


『ちょっとぉ!? 中に連れて行くのはなしっす!?』


 拿捕班はスッスのことを解錠装置と認識してしまったのかもしれない。

 そして、興奮しすぎて金髪碧眼女の話をまったく聞いていなかったのかもしれない。


 まったく何の躊躇もなく、敵揚陸艦に踏み込んだ。

 もしパワードスーツ兵や自動迎撃装置が配置されていたら、猫耳幼児は反射神経とパワードスーツを頼りに逃げるほか無かっただろう。

 しかし、動揺したパワードスーツ兵単独や、急造の雑なリモコン機銃しかないなら、猫耳幼児たちは簡単に突破できてしまう。


『おっちゃん! へんなよーきに人間入ってるにゃ!』


『非戦闘員はっけん! このひとたち半分以上機械にゃ!』


『てき! いったん後退にゃ!』


『引きずらないで欲しいっす! クラッキング用のプログラムを物理的に入れておくっす……』


 拿捕班の動きが予想の倍くらい早い。

 狭い船内通路でスラスターを吹かしているのに壁や天井にぶつかることが一度もなく(スッスは何度か光翼がぶつかっている)、傍若無人に前進と後退を繰り返す。


 金髪碧眼女を映した画面から、拿捕班の気合いの入った声が「にゃあ」と聞こえた。


『『『おっちゃん! 今ならいけるにゃ!』』』


「落ち着いてください。拿捕班の目的は拿捕による金稼ぎです。そんな奴を殺しても一銭にもなりませんし、殺す資格があるとしたら、我々の母港のために命を張って下さった方たちだけです」


 これは俺の本音ではあるが本音のすべてではない。

 命の取り合い、特に相手と至近距離での殺し合いなど、やらざるを得ないとしても地球人基準で成人してからでいい。


『『『にゃっ?』』』


「報酬を支払うためにはお金が必要で、お金のために拿捕が必要なんです。いつもどおり、安全に仕事をしましょう」


『『『ご安全に、にゃ!』』』


 猫耳幼児たちの顔から殺意が消える。

 代わりに、できるプロの顔になり、速度が数割増しになった。


『減速して欲しいっす!』


「『ご安全に』って、誰ですかそんな言葉を教えたの」


「あの惑星のアニメ? だったっけ。あの子たちはあの惑星の創作物を楽しんでいるみたいだから、その影響かも」


 ベリルが説明してくれているうちに、戦況に変化があった。

 拿捕班とスッスに引っかき回されて混乱した敵揚陸艦に、盾を構えた地球人と、治療を受けた後に宇宙服を着た復讐者たちが踏み込んだのだ。


『生かしておくべき者、破壊してはならない設備があれば教えて頂きたい』


 生き残りの中で最も地位の高い復讐者が端的に質問してくる。

 こちらが敵艦の情報をすべて渡すと、深く頭を下げてから自分が先頭になって突撃を開始した。


『すぐに地球人を撤退させろ! 我は強力なパワードスーツを確保している。我のみ生き残ってお前たちが全滅することになるぞ!』


「今、焦ったわね」


 ブルネットの声には殺意どころか敵意すら含まれていない。

 ただの害獣を目にしているかのような、事務的な冷たさだけがある。


「んー。ブラフとは思うけど自爆は怖いよ。拿捕できるものが少なくなったら報酬とか治療費とかがキツイかも」


 ベリルは既に戦後の心配を始めている。


「あの揚陸艦の護衛だった船を拿捕すればある程度補えると思います」


 金髪碧眼女が何か言っているようだが、俺は発言内容の要約をAIに命じた上で音量を下げている。

 俺より耳が良いブルネットとベリルは、しばらく焦りと怒りを滲ませる金髪碧眼女の声を聞いていたが、すぐに音量をゼロまで下げた。


「後は、涙滴型宇宙船18隻の拿捕に、今回参加してくれた地球人に対する本格的な治療に、他に何がありましたっけ?」


「サルくん。手分けしていこう。スッスたちが戻り次第、サルくんは猫の巣号を連れて拿捕へ向かって。僕は責任者として母港に残って地球人さんたちに応対する」


「了解です。金稼ぎはここからが本番ですね」


 既に戦闘は終わり、拘束と接収の段階へ移行した。

 俺たちベリル運送にとって、金髪碧眼女はもはや敵ではなく、『友好勢力である地球人』の獲物だ。


「いまもどったっす……。自爆装置っぽいのは全部ソフトウェア的に潰してきたっす」


「「「だっしゅつてーもぶっ壊したにゃ!」」」


「じゃあ作戦開始! 頑張ってね、サルくん!」


 颯爽と母港へ降り立つベリルは本当に格好良い。

 無意識に敬礼をしてしまった。


「サルさん。行きましょう」


「せんぱーい。宇宙船は一日12時間までっすからね」


「久しぶりの残業ですか。今回は特に手当が多くなりそうだ」


 恩に報いるためにも、自分たちの生活のためにも、遣り甲斐のある仕事が始まった。

◆ BERYL FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2 ※故障中

船体:3 / 跳躍:2 / 航続:3 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv2 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5 [衰弱Lv3]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]

キン   |白兵Lv2 [整備Lv2]※静養中

妹猫耳ズ |白兵Lv1 [整備Lv1]

新人船長ズ|船長Lv1 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv2 [信仰Lv2]

スッス  |操縦Lv2 [医療Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |学生Lv1 [衰弱Lv2]


◆ GUEST

復讐者たち|白兵Lv1 [士気Lv5]


◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:0 / 修理:0 / 居住:1 / 備蓄:0 / 兵装:1



◆ CAPTURE TARGET

◆ King of the Earth(1/1) ※搭載船は脱出艇。拿捕班により破壊済

船体:4 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:3


◆ Pawn of the Earth*18

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
護国だの英霊だのって表現は嫌いではあるが それでも復讐のために命を捨て ついでに猫耳たちも助けた復讐の鬼に敬礼
自称連中の恨みつらみに対する見積もりが甘すぎる… 命がけくらいで連中のタマとれるならみんなやるよね スッスの大活躍っぷりが清涼剤になる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ