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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第2章 港・信用・拠点

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41.復讐者たち

「「「粘着弾いっせー射撃にゃ!」」」


 猫の爪号6機からなる編隊が、タイミングをあわせて射撃を開始する。

 下僕たちが自力センサーで『見』た情報をもとに、どう避けても当たる形で弾幕を張ったのだ。


「弾着まで後20分です。撃った直後に移動するのが素晴らしいですね」


 この銀河にはタキオン砲というインチキじみた超光速兵器が存在する。

 敵がどれだけ遠くにいても、回避とシールドを忘れないのが長生きするためのコツだ。


「戦闘ばかり得意になるのも問題だよ」


 ベリルは母港と通信している。

 どうにもうまくいっていない気配と表情だ。


「サルくん。敵船の攻撃が母港に届くまで後何分?」


「敵船に搭載された兵器次第です。タキオン砲が搭載されていれば、今この瞬間に攻撃が始まる可能性があります。……距離が距離ですから、母港はもちろん猫の爪号に当たっても軽微な損傷で済むと思います」


「サルくんありがと。まだ時間はある、かあ……」


「社長。何か問題が起こったっすか?」


 スッスが単刀直入に聞く。

 ベリルは少し迷ったようだが、今は感情より解決と考えたらしく端的に答えた。


「母港からの避難が進んでいないんだ。母港はできる限り装甲で覆っているけど、超光速で弾やミサイルを撃ち込まれたら回避は無理だし防御しきれないからね。母港の放棄じゃなくて一時避難と伝えたんだけど……」


 俺は自力センサーと操縦と並行して、通信ログをちらりと見た。

 ベリルに反発というより泣き落としをしているのが母猫耳たちだ。


「えっ。なんでっすか? どれだけ防御されてる基地でも万一はあるっすよ?」


「初めて得た安住の地だからだよ。僕だって好きで避難を勧めてるわけじゃないもん」


 ベリルは普段通りの言葉遣いをしようとして失敗している。

 表情に至っては大失敗だ。

 今にも泣き出しそうで、それに気付いた俺とスッスの表情が固まった。


「まずい」


「連中、ここまで読んでたっすか? これじゃ前提が変わって来るっす!」


「社長、深呼吸して下さい」


 俺はスッスに静かにするよう目配せしながら、ベリルをなんとか落ち着かせようとする。

 が、普段は軽いところはあっても判断が早くて正確なベリル社長が、今では中身が見た目通りの気弱少女になってしまっている。


「ごめんサルくん。僕も、僕自身がこうなるなんて、思わなかった」


 母港とベリル号があれば、仮にあの船に特殊な装備か何かがあっても撃破できるはずだ。

 しかしそれは、ベリル社長以下の猫耳がいつも通りであることが前提だ。

 猫耳たちが動揺し、怯え、動きが鈍れば、負けることはもちろん、自称地球防衛艦隊の降伏勧告(特に条件付きの降伏)に頷いてしまう可能性もゼロではない。


「先輩。故郷が遠くにある自分や、故郷の所有権や使用権がなくなっても平気な先輩とは立場が違うっす」


「私も平気では……まあ、平気な方かもしれません」


 地球人類に人権がなくなるという巨大イベントの印象が強すぎて、ほとんどのことが『どうでもいい』レベルの些事になってしまった感覚はある。

 ブルネットやベリルたち猫耳のことが数少ない例外だ。

 親父たちやスッスたち光翼人間も例外だな。


 通信要求を意味する音が艦橋に響いた。

 スッスが顔を少し引きつらせ、光翼が警戒するかのように『ぱたたたっ』と上下する。


「社長。自称地球防衛艦隊からの通信要求っす」


「っ!」


 ベリルの動揺が、完全に隠せなくなった。


「ぼ、僕につないで」


「駄目です」


 越権であることを承知の上で、俺はベリルを止めた。

 スッスは俺に盲目的に従うのではなく、ベリルの動揺が激しいことと、ベリルが改めて命令しないことを確かめてから待機する。


「いつものベリル社長なら行き先が地獄でもついていきますが、今の社長では駄目です。……少しは頼って下さいよ」


 俺が付け加えた言葉で、ベリルの肩から少し力が抜けた。


「サルくん。意見、いい?」


「はい。とりあえず奴らには待たせましょう。まずは母港がどうなっているかの確認、その次にできる範囲で避難させます。本当に最悪の場合に、被害が少なくなるよう手を打つ必要があります」


「……続けて」


「はい。といっても後は少しだけです。ブルネットが避難できそうにないなら俺が直接乗り込んで避難させます」


「それ、僕へ意見じゃなくて行動の宣言だよ。うん、でもそれでいいと思う。スッス」


「はいっす! 自称なんちゃらには回線が混んでる感じの自動音声を流しておくっす!」


「サルくん」


「ブルネットへの通信は俺が。ベリル社長は猫の巣号と猫の爪号の掌握をお願いします」


「分かった!」


 かなり、いつもの調子に戻ってきた。


「ブルネット、後3分で母港の至近に到着します。ブルネットとキンの避難は可能ですか」


『ええ。私はサルさんのもとへ行くわ。でもキンは無理』


『おめーら夫婦は割り切りが早すぎるにゃ。あいつら(母猫耳たち)も仲間にゃ。……情ぬきで考えても、あいつらが死ぬか捕虜にされるとガキどもが動揺するにゃ』


 俺はふたりの無事の声を聞いて安堵すると同時に頭を抱える。

 何か、打てる手はないだろうか?


「猫耳の下僕たちはどうしています?」


『ガキどもをあいつらから引き離して避難の準備をしているにゃ。半分は残って自力センサーと迎撃兵器を担当するって言ってるにゃ』


「……連中、猫耳の下僕ではなく、猫耳の子供の下僕と改名すべきですね」


『それでも連中のおかげで助かってるにゃ。サル。すまねー。にゃーはあいつらを見捨てられねーにゃ』


「私も見捨てるつもりはありません。ただし、妻と義妹とそれ以外では優先順位があります」


『分かってるにゃ。できるだけうまいことやってくれにゃ』


『サルさん。今から子供たちを連れて離着艦施設へ向かうわ』


 宇宙服姿のブルネットが、自信たっぷりに伝えてくる。

 本当に頼もしい。


「よろしくお願いします。社長、奴との交渉はどうします?」


「サルくんよろしく! 猫の爪号はいけそうだよ。猫の巣号は緊急発進まではいけそうだけど、戦闘はちょっと不安かも。ブルネットお姉ちゃんに指揮を任せるとか言わないよね?」


「身重の嫁さんに引き金を引かせようとは思いませんよ。スッス」


「繋げるっす!」


 スッスに散々おちょくられたらしい金髪碧眼女は、表情は完璧に制御されているが苛立ちの気配を消し切れていない。

 俺の自力センサーは『明確な敵』とまではいかない、『危険な相手』という反応だ。


『久しいな』


 こいつが何をしてきたか知っている俺ですら、頼り甲斐を感じてしまう。

 顔立ちや声が洗練されているだけでなく、カリスマが強い。


「久しいも何も、顔をあわせるのもこれが初めてでしょう。俺はベリル運送の交渉担当です。うちの母港を襲おうとしている側から何の用件ですかね?」


 俺にとってはカリスマもそれ以外もクソくらえだ。

 俺はこいつが嫌いだし、嫌い以上に『ブルネットたちの安全や将来の害』としかみていない。


『我の船は揚陸艦だ』


 俺は無表情を貫いた。

 スッスは無表情ではあるが光翼が高速で上下している。


「にゃぁっ!?」


 ベリル社長は完全に動揺してしまう。

 動揺を隠すという意識もない。


『これまでしてやられてばかりだったが、一矢報いたようだな? 無条件降伏せよとは言わぬ。貴様が我のもとへ来るなら、猫耳どもには手を出さぬと誓おう』


 金髪碧眼女の背後には、重武装のパワードスーツ姿の兵士が数十人も並んでいる。


 スッスがカタログやデータベースに当たって調べた内容をデータで送ってきた。

 かなり高額だった拿捕班用のパワードスーツより高額かつ高性能だ。

 万全の状態のキンがパワードスーツを着ても、2、3人を食い止めるのが精一杯だろう。


「……そういうことか」


 ベリルの尻尾が床に叩きつけるかのように動く。

 声も態度も冷え切って、


「生体パーツを売ってずいぶん儲けたみたいだね。サルくんを売ったら立派な武器でも手に入るの? すごいねえ」


 牙を剥き出しにして相手を見下ろし嘲弄する様子は、予想外に似合っていた。


『猫耳は劣等種族と聞いたがそこまで馬鹿ではないようだ。だが悪い話ではなかろう。同族を捕縛され、その男を売り払ってでも払えない身代金を要求されるのが好みか?』


 予想していた通りの外道だ。

 こいつに対する俺の好感度は、最初から下限に振り切っているので、『ああやっぱり』という感想しかない。


「やれるものならやってみるんだね。スッス、通信を切って」


「今やってるっす! とんでも技術ってほどじゃないっすが、結構いい機材使ってるからもうちょっとかかるっす!」


『次の通信では今より条件が悪くなることを忘れないことだ』


 通信が切断される瞬間まで、金髪碧眼女は傲慢に微笑んでいた。



  ☆



 母港に戻り、ブルネットと母港にいた猫耳幼児全員(宇宙船に乗っている猫耳幼児は除く)を回収する。

 その間も猫の爪号たちが順次補給して遠距離攻撃を行っているのだが、戦果はゼロに等しい。


「弾幕第2陣が敵船に接触するっす!」


「今度は対空レーザーだけでなく質量弾も使用されたようです。おそらく散弾です。こちらの攻撃は8割程度防がれました。今回はシールドに塞がれ装甲に届いていません」


「またぁ!?」


 ベリル社長が『ふしゃー』と鳴きながら自分の席の肘置きを『ばんばん』叩いた。


「社長。敵船の火力は迎撃に特化しています。既に撒いたデブリでは効果が薄いと思われます」


「敵船が減速を開始したっす! このまま減速するなら50分くらいで母港に移乗攻撃可能っす!」


「母港と母港に残る人たちを見捨てられるなら、完全に無意味な攻撃なのだけどね」


 そう言うブルネットは、母猫耳が母港に残ったと知らされて動揺する猫耳幼児を宥めている。


「僕がベリル号で攻撃する!」


「社長。気持ちは分かりますがおさえて下さい。敵船の装甲の性能と、タキオン粒子の減衰を考えると、有効打を浴びせられる距離は敵の攻撃が届く距離です。ベリル号が被弾即爆沈の紙装甲であることを忘れないでください」


「母港からエネルギー供給を受けながら攻撃するのはどう?」


「特大タキオン砲で攻撃中にエネルギー供給ケーブルに被弾したら、母港とベリル号がまとめて吹き飛びますよ」


「お姉ちゃん、サルくんがいじめるよう」


「社長なんだからしっかりしなさい。……ところでサルさん、本当に何か良い案はない?」


「今考えています」


 本当に考えてはいたが、妻に信頼と期待を向けられるとやる気が桁違いに増大する。

 敵は、猫耳の母港に対する愛着を利用している。

 俺たちが強引に母港から避難させることはできるが、その場合の精神的動揺がどの程度になってしまうかどうすることもできない。


『こちらキンにゃ。今、母港の中でバリケードの準備をしてるにゃ』


 体調不良の今は普通に動くだけでも辛いだろうに、キンは平然とした態度でベリル号に報告してくる。


「キン姉」


『この程度、サルがスカウトされてくる前はよくあったことにゃ』


 敵のパワードスーツは強力だ。

 もちろん、宇宙船対宇宙船の戦いに割り込めるほどの力はない。

 宇宙船に攻撃されても『一瞬であれば耐えて母港に取り付ける程度』に頑丈なのが問題なのだ。


「こちらが白兵戦で勝利できるなら、自称連中の特大宇宙船を拿捕も可能でしょうが、白兵は死にやすいのですよね」


 そんな奴らは存在するのだろうか。

 宇宙で活動できる素質がある地球人は、艦隊にスカウトされるかそれ以前に海賊や自称連中に誘拐されているはずだ。


 だが、白兵戦といっても、EVA(宇宙船外活動)が必須なので特殊技能も必要になる。

 床にくっつくタイプの靴を渡す手もあるが、それだと行動が制限されて、もっと死に易くなる。


「あいつらのことだから、他の企業に恨みをもたれたりとかしてないかな?」


「うーん、銀河に出てからはうまいことやってるみたいっす。最近は呼び寄せた海賊が死にすぎて海賊から恨まれ始めてるっす!」


(恨み、ですか)


 その単語を聞いた瞬間、俺の思考が一気に広がった。


「キンさん。地球にいるキンさんの友人に伝えてください。『宇宙海賊を地球に引き入れた連中相手に戦う傭兵を募集している』と」


『おいサル! ンなことしたら大勢死んじまうにゃ! うちらが用意できるのは普通の宇宙服と、装甲を盾や棒の形にした武具だけにゃ!?』


 キンが本気で怒る。

 艦橋にいる猫耳たちも、俺を少し非難するような雰囲気だ。

 なお、ブルネットは特に何も感じていないようだが、表情を他の猫耳にあわせている。


「キンさん。聞いて下さい。俺は奴らが嫌いです。嫌いで済んでいるのは、ブルネットもベリル社長も、親父やお袋も、俺の本当に大事な人たちが全員生きているからです」


 連中により殺されることを想像するだけで、腸が煮えくり返る。

 ひとりでも殺されたら、俺は間違いなく憎悪で狂うだろう。


「今の地球には、大事な人すべてを失った人間が多くいると思います。……きっと、復讐の機会があれば、応じれば必ず死ぬとしても、志願する人間は多いと思います」


 送り迎えは俺が確実に行うし、戦死してもしなくても必ず報酬は支払うし、地球の通貨ではなく銀河で通用する金をたっぷり支払う予定だ。

 条件も予想される敵も戦場もすべて隠さず伝えるし、途中で辞退しても地球に確実に送り返す。

 だが、そんなものがなくても、大勢集まると確信している。


『サル。にゃーは、おめーのそういうところは嫌いにゃ』


 キンは、非常に苦い薬を目にしたかのような表情になった。


「はい。俺自身、好きではありません」


 客観的に見て、同族を宇宙企業に売る裏切りに近い。

 そう見られるのも辛いが、その『裏切り』が地球人の多くに大歓迎されてしまうだろう現状も、辛い。


「サルくんの全力で飛ばしても、何往復もはできないよ?」


「一度にできるだけ多く運びます」


 募集期間は20分もないのに志願者が膨大で、過酷な戦闘に耐えうる者を選抜しても、その数はベリル号で運べる数をはるかに超えていた。

◆ BERYL FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2 ※故障中

船体:3 / 跳躍:2 / 航続:3 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv2 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5 [衰弱Lv3]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]

キン   |白兵Lv2 [整備Lv2]※静養中

妹猫耳ズ |白兵Lv1 [整備Lv1]

新人船長ズ|船長Lv1 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv2 [信仰Lv2]

スッス  |操縦Lv2 [医療Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |学生Lv1 [衰弱Lv2]


◆ GUEST

復讐者たち|白兵Lv1 [士気Lv5]


◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:1 / 修理:0 / 居住:1 / 備蓄:0 / 兵装:1




◆ King of the Earth(?/?)

船体:4 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:3

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