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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第2章 港・信用・拠点

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40.守りを固めろ

 海賊にとっての地獄が始まった。


『誰でもいいっ。酸素を分けてくれっ。金なら払うっ!』


『ぎりぎりで辺境に来たお前が馬鹿なんだよ! な、やめろっ、撃つな!』


 センサーの範囲外から飛来するタキオン粒子にエンジンを潰され、慣性飛行中に仲間割れで殺し合い、ただ死者数だけが増えていく。

 そんな光景を『見』ながら、俺たちベリル運送は資金のやりくりに頭を悩ませていた。


「サルくん、今から拿捕しにいっちゃ駄目かな?」


「今のベリル号にはトラクタービームはもちろん戦利品を載せる船倉もありません。賞金だけで我慢しましょう」


「でもそれじゃベリル号のメンテ費用も稼げないんだよ! なんだよこの船! 滅茶苦茶丁寧に飛ばしてるのに滅茶苦茶お金がかかるんだけど!」


 ベリル社長が『ふしゃー』と鳴いている。

 俺の監督下で操縦と射撃を分担して頑張っていた新人船長たちがちらりと見て、『あのベリルお姉ちゃんでも焦ることがあるんだ』という顔をした。


「せんぱーい。自分も操縦したいっす!」


「これ以上あなたの割り当てを増やしたら俺が怒られます。見稽古で我慢してください」


「はいっす……」


 雑談は気が抜けていても、戦場に向ける意識は誰もが厳しい。


「「にゃっ」」


 この新人船長コンビ、射撃とその直後の移動が『ひとりで操縦しているかのように』絶妙だ。

 個の戦闘力向上を目指すなら新人船長とその下僕の組み合わせに任せた方がいいのだろうが、いずれは隊を組んだり指揮をしたりできるようになって欲しいので、新人船長同士に組ませている。


「葉巻型宇宙船がシールドを展開して盾になったっす。うまいっすね」


「「にゃっ!?」」


「はい、時間切れだよ。サルくん、操縦お願い」


「了解です」


 火器管制はベリルに、操縦は俺に代わる。


「伏兵はないよね?」


「まだ星系外です。ステルス機能を持つ船でも、この距離ならまず見逃しません」


「ん」


 ベリル号の位置とタキオン粒子の速度を変えながら連射する。

 もちろん俺と社長で手分けしながらだ。

 過去の戦闘で使ったデータを流用したぶん手間は減っているが、使用回数が多いので疲労がたまる速度も相当だ。


「先輩、そろそろ気を付けてくださいっす」


「無理せず今日は退こう。サルくん、離脱した後は操縦はスッスに渡して。……今回は倒しきれなかったかぁ」


 俺の自力センサーからの情報で映し出された映像には、シールドを失い装甲がズタズタにされても、辛うじて生き残っている涙滴型宇宙船の姿が映っていた。

 隣接星系第1惑星静止軌道に浮かぶ葉巻型特大宇宙船には、まだ動きはない。



  ☆



「勝っているのか負けているか分からないわね」


 母港に戻った後、ブルネットに意見を求めて返ってきたのがこのセリフだ。

 ベリル運送の中では最も計算能力が高く、戦略を考える能力も高い。

 だが、それは俺たちの中では、だ。


「自分はパイロットと医者での採用だったっす。戦略分野はさっぱりっす」


「俺も子供の頃に戦略ゲームを遊んだことがあるくらいですよ」


「私は体系的な学問を学んだこと自体ないのよ?」


 俺、スッス、ブルネットが一番マシという惨状だ。


「僕の脳に軍事知識を焼き付けた方がいいのかな?」


「社長は治療が先っす。治療前と後じゃぜんぜん負担が違うので、今はおすすめしないっす」


 スッスは医者としての立場で発言する。

 普段の扱いは下っ端パイロットだが、ベリル運送唯一の医者としての立場は強い。


「輸送船だけでもかなりの数を破壊しましたから、効いてはいると思うんですが」


「けどよサル。あの星系はド辺境とはいえ孤立した星系じゃねーにゃ。あの自称なんちゃらがうまいこと宣伝して海賊を呼び寄せてるなら、倒してもきりがねー可能性もあるにゃ?」


 案外、キンが一番戦略に長けているのかもしれない。


「キン姉、いつの間にそんな知識を?」


 ベリルがきらきらした目でキンを見る。

 尊敬の目を向けられたキンは、困ったように頬をかいた。


「あの惑星の軍人と話してたらいつの間にかにゃ」


「えっ」


 ベリルが驚きで目を丸くする。

 俺はなんとなく察した。


「キンさん。暇でしたか」


「そりゃにゃ。ガキどももある程度任せねーと成長しねーし、酒も禁止されてるからにゃ。星系内なら通信費も安いにゃ」


 下僕のひとりが俺に耳打ちし、深刻な情報流出はなかったと知らせてくる。

 情報流出自体はある。

 銀河の情報へのアクセスが非常に限られる地表の人類にとって、キンが知っている一般常識だけでも価値があるからだ。


「我々は警備会社的要素もありますが、軍ではなく企業ですからね。知識に偏りがあるのは仕方がありません。……大人の中で治療が必要でないのは、下僕たちだけですか。焼き付け希望者はいますか?」


 俺が尋ねると、下僕たちは強ばった表情で首を左右に振った。

 海賊に生体パーツとして扱われた結果、体に手を加えるのに忌避感ができたようだ。

 治療のための機械化がぎりぎり我慢できる範囲らしい。


「そういう事情でしたか。酷な問いをしてしまい申し訳ありません」


「僕も勧めるつもりはないよ。……サルくん、意見ちょうだい!」


「戦略判断まで銀河通商に頼るのは怖いですね。いっそのこと地表の国……まだ国の形が残っているかどうかは分かりませんが、専門家に尋ねるのはどうでしょう。技術は違っても根本は似ているはずです」


「自称なんちゃらに、僕らの情報を渡す恐れはないかな?」


「敵の情報だけを渡して分析を依頼したとしても、サルさんの自力センサーの範囲が知られる恐れがあるわ」


 ベリルとブルネットの懸念はもっともだ。


「星系管制とどちらを信用するかですね」


「今回は地表にしよう!」


 ベリルの決断は、即座だった。



  ☆



 質問を料金前払いで送ると、数分で『最初』の回答が届いた。


「今すぐ守りを固めろ、ですか?」


 なお、俺の発言は内容の要約だ。

 詳細な分析は後で報告しますがまずはこれを、という感じで書かれている。

 自動翻訳機を切ってみると、日本語の走り書きをFAXで送って来たような、見た目は荒い文書だった。


「サルくん僕にも見せて。……確実に効いてはいる。効きが薄いとしても自称地球防衛艦隊にとって予想外かつ甚大な妨害であり、この状況が継続すれば自称(以下略)は組織存続に関わる打撃を受けると思われる。よって……」


 読み上げていたベリルが困惑顔になった。


「ベリル運送の母港に突撃してくる? 本当に?」


 目を通したブルネットも同様だ。


「いや、隣接とはいえ別星系にゃ。突撃なんて無意味に危険をおかすだけにゃ。あいつらって実は馬鹿にゃ?」


 キンは自分の友人を疑い始めている。

 俺がスッスに目を向けると、スッスの光翼が『知らないです!』と言いたそうなポーズをとった。


「先輩、自分を見ても答えようがないっす。馬鹿みたいに固い装甲を持ってる勢力っすから、他にも特殊な装備を持っている可能性はゼロではない、っすけど」


「まあ、実質ゼロでしょうね」


「特別な装備はどれも高いものっす。それに、ベリル運送の防御力もすごいっすから。先輩の自力センサーもヤバイっすけど、そこそこの自力センサー持ちの数がこれだけいる勢力は珍しいっす!」


 スッスは、新人船長たちの背後にそれぞれ控えている下僕たちを見る。

 下僕たちの価値観は独特すぎるが、操縦技術はスッスやベリルに近い水準だし、自力センサーの性能も俺が飛び抜けているだけで十分強力だ。

 何より優れているのはその数だ。

 一日数回の交代で母港からその周辺を見張ることができるのは、母港に住む人間として非常に頼もしい。


「うーん。一応警戒しておく? キン姉、今なにかできることあるかな?」


「現金に余裕がない現状でできることなんか……ひとつあったにゃ。母港周辺にデブリを撒くにゃ。隣接星系の方向を厚くしておけば、攻め込まれても時間稼ぎになるにゃ」


「母港周辺の飛行難易度が上がりますね」


 新人船長たちは大丈夫だろうか。

 俺がそんなことを考えていると、言葉にしたわけではないのに新人船長たちから『じろり』と睨まれてしまった。


「「「デブリていど余裕にゃ!」」」


「よく言ったにゃ。じゃあお前らがデブリを撒くにゃ」


「「「にゃっ!?」」」


 そういう意味では言っていないと全身で主張する新人船長たちに、キンは容赦せず仕事を押し付ける。

 下僕たちは特に抗議はしてこない。

 下僕の主なら成し遂げられる任務と認識しているのだろう。


 より詳しい『回答』が届く。

 1つではなく複数届いていて、確認してみるとどれも言語が違う。


 言葉は美しく説得力があるが、自力センサーにうっすらと嫌な反応がある。

 ベリル運送の情報は最低限しか渡していないのに、母港の位置はかなり正確に把握されていた。


「自称連中には母港の場所がバレていると思ったほうがいいね」


「社長。隣接星系への攻撃は続行しますか?」


 『効いている』というのは予測であって事実ではない。

 より攻撃的な手段をとって反応を伺うのも、個人的には好みではある。


「んー。サルくんが僕の立場ならどうする?」


 ベリルの目は真剣で、落ち着いている。

 俺は、俺自身が浮ついていることに気づき、一度大きく息を吸って思考を切り替えた。


「隣接星系への攻撃は今のまま続行します。数日様子を見て、自称地球防衛艦隊の行動が変わらないならもう一度作戦を検討します。待つのも行動継続も、立派な選択肢ですしね」


「ん。狩りごっこでも重要だよ!」


「にゃあ。ベリルねーちゃんの狩りって」


「しっ」


「ひとには得意不得意があるにゃ」


 新人船長たちが、本人たちにとっては『こっそり』話しているが俺にも聞こえる。

 気づかないふりをしようとするベリルは、顔を薄っすら赤くして『ぷるぷる』していた。


「ベリル運送もそのトップも若いのは、地球の勢力も自称地球防衛艦隊も知っていると思います。老獪な反応で混乱させるのはアリだと思います」


 俺は真面目くさった表情で発言する。

 これまで膨大な戦果を挙げてきた俺の発言は、方針を決める会議にふさわしい重みを持つ。

 なんとなく合意がとれたような雰囲気になり、ベリルが「うん!」と頷くとそのまま解散になった。


「サルさん。話し合いを切り上げるために適当に言った?」


「ブルネット。格好をつけたのは事実ですが本音ですよ」


 今日の仕事は終わりだ。

 俺は残業しようとしたブルネットを強引に居住区へ連れていき、家事を全部引き受けるだけでなく全力で甘やかした。



  ☆



 戦闘の日々は続く。

 隣接星系における自称地球防衛艦隊の練度は向上し、ベリル号が到着した時点で隣接星系の近くにいた海賊船は撃破できないことが多くなった。


 しかし、星系間を移動中の海賊船は別だ。


「うーん……。この距離だと僕かブルネットお姉ちゃんじゃないと厳しいよ。僕、船長以外にも仕事が多いんだけど」


 特大タキオン砲がエネルギー残量の実に10パーセントをもっていく。

 極めて強力な兵器が膨大なエネルギーを使っているのに、被弾時に解放されるエネルギーと破壊力はたいしたことはない。

 距離が離れすぎているからだ。


「今のブルネットを連れてくるわけにもいきませんからね」


 操縦を他のメンバーに任せて『見』るのに集中する必要がある距離で、輸送船としては高速の船(賞金つき)が砕けたのが『見』えた。


「サルくん、あの星系の様子は?」


「それなりに活発なのは自称連中だけです。星系に逃げ込んだ海賊は、ほとんど動いてませんね」


「騒ぐ元気も残ってないみたいっす。自称連中は無駄口ひとつ叩いてないっす」


 今日は通信傍受担当のスッスが報告してくる。

 今日も収穫はなしか、という雰囲気になった頃、待ち望んでいた変化があった。


「自称地球防衛艦隊の特大宇宙船が加速したっす!」


「スッス、方向は?」


「母港っす! ベリル号を無視してベリル運送母港へ一直線に加速中! ってこれ、先輩並の加速っすよ!?」


 敵がヤケクソになって動き出すのを待ち望んではいたが、敵味方を巻き込んで破滅を撒き散らしそうな展開は望んでいない。


「追撃します」


 報告する前に動き出している。

 自力センサーの射程では俺が勝っている。

 追いかけながら延々攻撃し続ければ、一方的に勝てるはずだった。


「先輩! 社長! 自称連中の残りの宇宙船も加速したっす! 特大船以外、明らかに減速を考えてない加速と速度っす! このまま進むなら目標は母港っす!」


「どちらを落とすか選べということですか」


 俺は舌打ちしたくなるのを我慢する。


「スッス、母港へ現状を伝えて。サルくん、落とすことより母港接近阻止を優先するよ」


「了解です。でしたら……」


「うん。特大船は母港と協力して迎撃する。母港ならデブリもある。……あの船を打ち抜けるくらいに近付くと、装甲皆無なベリル号だと万一があるからね」


 どちらを選んでも危険だが、選ばないのは最も危険で、選ぶのに時間がかかるのも非常に危険だ。

 だからベリルは決断するし、俺も全力で従う。


 自力センサーと射程で上回るベリル号を使い、ベリルが一方的に涙滴型宇宙船を狩っていく。

 敵船のシールドも装甲も並程度だ。

 しかもベリルが狙うのはエンジンだけなので、最小限のエネルギー消費で無力化することができる。


 だが18隻もいる。

 すべてを漂流する宇宙船(被弾時の衝撃で母港への進路からズレた)に変えたときには、葉巻型特大宇宙船の装甲を撃ち抜くだけのエネルギーは残っていなかった。


「今回で終わりにしたいですね」


「同感だよ、まったく」


 万が一など起こさない。

 その覚悟を胸に、俺たちは葉巻型特大宇宙船を追い越し、母港へ急行した。

◆ BERYL FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2 ※故障中

船体:3 / 跳躍:2 / 航続:3 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv2 [財産Lv1]

サル   |操縦Lv5 [衰弱Lv3]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]

キン   |白兵Lv2 [整備Lv2]※静養中

妹猫耳ズ |白兵Lv1 [整備Lv1]

新人船長ズ|船長Lv1 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv2 [信仰Lv2]

スッス  |操縦Lv2 [医療Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |学生Lv1 [衰弱Lv2]


◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:1 / 修理:0 / 居住:1 / 備蓄:0 / 兵装:1




◆ King of the Earth(?/?)

船体:4 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:3

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