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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第2章 港・信用・拠点

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39.狂気の白鳥

「サルくーん。向こうの星系の第1惑星、結局戦わずに降伏しちゃったみたい」


「宇宙から攻める側はやりたい放題ですから仕方がないですよ」


 不満そうにするベリルを宥めながら、俺は発注内容を高速で入力していく。

 既に完成している船ではあるんだが特定の種族向けの宇宙船ではない。

 俺や猫耳や猫耳の下僕が乗れるよう、地球に近い環境になるように指定して工場で設定してもらう必要があった。


「今から楽しみですね。いつ頃届くのでしょうか」


 わくわくしながら入力を終え、キンとブルネットに確認してもらう。


「……問題ねーにゃ。つーか、にゃーは本社とやらがどこにあるか知らねーにゃ」


「あなた。赤ん坊を乗せて飛ぶことも考えて、ここはもう少し……」


「了解。子供を戦場に連れて行きたくはありませんが、俺の力不足で避けられないのはありえますからね」


 費用は増えるが、慣性制御の性能を可能な限り強化するよう指定しておく。

 守りの弱さはそのままだ。

 これは、俺の自力センサーと操縦でなんとかするしかない。


「あの。あのあの。予想維持費なんだけど」


 ベリル社長の顔色は悪い。

 ベリル運送が現在所有するすべての宇宙船の維持費を合計したよりも高額だからだろう。


「メンテナンス費用は通常価格ですよ?」


 星系管制は光翼を光らせて浮かび、俺の背後に回り込もうとしている。


「ケーブルの接続部分も機密情報っすよ!」


 こっちも光翼を光らせているスッスが、俺の背後を庇う形で手と翼を広げている。


「維持費は自称地球防衛艦隊を拿捕して捻出しましょう。では発注確定しますね」


 この場の全員の目をひとりずつ見て確認する。

 最後にベリル社長を見ると、少し憂鬱そうではあるが力強く頷いた。


「では確定、と」


 カタログと超光速通信網を通じて発注する。

 超光速通信といっても即時通信ではないので、先方が注文を受け取り宇宙船を送り出して届くまで、それなりの時間がかかると思われた。


 タブレットに映し出されたカタログに、次々に情報が浮かぶ。


 ハイレベルパイロットによる発注を確認。

 即時通信を使用。

 注文確定。

 艦内の改装完了まで残り20分。

 発進するまで残り1時間。

 注文者の住所に到着するまで、残り27時間。


「27時間? 銀河通商の本社には、そんな時間で……いえ、この星系の近くに倉庫や工場があるのですか?」


 俺は混乱していた。


「先輩、ここ、すっごい辺境っすよ?!」


 スッスも混乱している。

 スッスだけでなく、タブレットの表示を見たほぼ全員もだ。


 混乱しなかったのは、俺の首の後ろを見ようとしつこく『ぱたぱた』していた星系管制と、星系管制を捕まえる途中だったキンだけだ。


「カタパルトで加速して打ち出すつもりだと思います。予想進路に艦隊を配置してトラクタービームで受け止める、昔ながらのやり方ですよ」


 星系管制の光翼は『ぱたぱた』から『ぶおおんっ』に変わり、キンごと浮かぼうとしていた。


「超高速輸送手段もお持ちとは、さすが通商ですね」


 俺は本心から感嘆する。

 はるか遠くの星系から26時間で飛んでくるなら、光速の万倍以上の速度だろう。

 想像もできない高度な技術に感心していると、スッスが呆れた目を星系管制に向けた。


「先輩。正規艦隊とはいえ第7の営業艦隊に特殊で高価な装備なんてあるわけないっす。これ、たぶん先輩の自力センサーを当てにしてるっす」


「利用するだけでなく、サルくんの自力センサーの限界を調べる意図もあるかも。僕らにとって今必要な船だから、発注した船が進路から逸れてたら、サルくんは無理してでも捕捉し続けて追いかけるよね?」


 ベリルが他者の悪意を警戒しているのを見ると、成長を喜ぶ気持ちと純心ではいられないことへの残念さを同時に感じてしまう。


「サルさん」


 ブルネットのささやき声は、いつもより浮ついてはいるが先ほどまでとは違い冷静さがある。

 俺が軽く頷いてベリルに目配せすると、ベリルはブルネットを連れて星系管制を見下ろした。


「宇宙船の受け取りについて、話し合い、しよっか?」


 姉妹の連携による値切り交渉は強烈で、猫耳ではない俺とスッスが怯えるほどだった。



  ☆



 26時間後。

 俺たちは応急修理をすませたベリル号で、星系外へ全力で飛行していた。


 俺たちといっても主要メンバーは俺とベリルとスッスだけだ。

 ブルネットもキンも体調優先で母港で休養中。

 しかし、当直ではない新人船長と下僕はほとんどが同乗している。


「通商が8隻も出してくれるなんてちょっと意外だよ」


 ベリルが少し戸惑っている。

 4隻あれば十分なはずの十字架型大型宇宙船が、何故か8隻もベリル号についてきている。


「妙に動きが良いのがいますね。最初に地球で見た船みたいです」


「さすが先輩! 分かるっすか! 第7営業艦隊の本隊から4人押しかけてきたっす!」


「こっちからは4隻ぶんしかお金は出さないよ?」


「キャリアの長いひとたちにとっても、先輩の自力センサーはそれだけ魅力的ってことっす!」


 通信要求はないんだが、瞳孔が開いた状態で凝視されている感覚を8人分感じる。

 敵意がないのは間違いない。

 しかし、意識しなくても圧迫感がある視線だ。


「反応がありました」


 飛んでくる方向を予め教えられていなければ、見落とすことはないだろうが発見するのが遅れていたかもしれない。

 俺が自力センサーで見つけたものはケーブルを通してベリル号へ届けられ、ベリル社長とスッスも情報を共有する。


 なお、ベリル運送あての宇宙船が星系外を飛んでいるのは、『星系内で受け取りに失敗すると惑星が吹き飛ぶレベルの大事故が起きかねないから』だ。


「通商の船にも知らせるね」


「本社のカタパルトだけで加速してるはずっすから、乗り込めばエネルギー残量100パーセントで動かせるっす!」


「了解。しかし、速いですね。あっという間に追い越されそうだ」


 最初の4隻の十字架型が、少し遅れて残りの4隻の十字架型が、目標の進路上に展開する。

 そして8隻分のトラクタービームが伸びる。


 一瞬にも満たない時間で通り過ぎた白い宇宙船と8隻の十字架型宇宙船がトラクタービームで結ばれ、8隻の速度が激増する代わりに白い宇宙船の速度が10分の1近くまで低下した。


「社長。移乗の準備を」


「サルくんとスッスだけで良くないかな? たぶん2人がメインで乗ることになると思うよ?」


「あれはベリル運送の船ですから社長のものですよ。最初に乗るのも、起動するのも、社長がしないと」


 それが筋というものだ。

 それに、新車に初めて乗り込むのも初めて動かすのも特別だ。

 ここはベリルに譲るべきだ。

 大人としても、社員としても、生体パーツとしてもな。


「僕のかあ。ちょっと威圧的すぎてためらっちゃうかも」


「それはまあ……はい」


「恒星から離れてるのにぎらぎらしてるっす。タキオン砲もカタログで見たときよりデカく感じるっす……」


 『翼を広げた白鳥のように優美』なのは間違いないが、その輝きは妖刀や魔剣じみている。

 特大タキオン砲に至っては、禍々しすぎて視界に入れるのもつらい。


「「「すっげーにゃ!」」」


 ただ、新人船長たちはきらきらした目でテンションを上げているし、下僕たちは穏やかな目で新人船長たちを見守っている。


「……行きましょう」


 俺たちは宇宙服を着込み、8隻がかりで減速させられた白い船へ向かった。



  ☆



 ハッチも、艦橋への通路も、特別なものは何もなかった。

 長く使用すれば必ずついてしまう傷や汚れも、微かなほこりすら存在しない。


「これが新品の船かあ」


 ベリル社長のテンションは最高潮だ。

 俺とスッスは、ベリルを追い抜いて艦橋へ突入しようとする新人船長たちをなんとかインターセプトしては下僕へ引き渡している。


 艦橋に続く扉が、正当な持ち主であるベリルに反応して開く。

 その中にあるのは、特別なところの一切ない船長席と操縦席、大小様々な画面の大群だった。


「うん!」


 満面の笑みを浮かべたベリルはマントを翻して船長席へ向かう。

 操縦、火器管制、通信のすべてが可能な席に体を沈めたベリルは、飛び上がるように驚いた。


「サルくん、センサー動いてないよ!?」


「自力センサー前提の船だと言ったじゃないですか。今ケーブル繋げますね」


 俺は操縦席に座り、延髄付近に埋まっているアダプタに、席から伸ばしたケーブルを繋いだ。

 微かな痛みを隠していたのに、痛みがないどころか全身が楽になった。


「ううん? 妙に爽快な感じですね」


「操縦する人間の負担が極限まで減るよう設計されてるっす! 先輩限定っすけど、普通に暮らすよりここにいる方が健康で暮らせるっす!」


「それはまた、とんでもない性能ですね」


 俺は周囲を『見』る。

 下僕のひとりが操縦してくれている先代ベリル号(この白鳥じみた船が新たなベリル号になる)と、8隻の十字架型宇宙船だけでなく、減速の際に使用されたエネルギーの残滓まで感じられる。


「今必要な情報は近距離ではなく遠距離ですね」


 切り替える。

 母港までを調べると敵船もデブリもなし。

 そこまで確認して、俺は集中をといて席に体重を預けた。


「快適すぎて他の船に乗れなくなりそうです」


「僕はサルくんのサポート抜きじゃ飛べなくなりそうだよ。……サルくん、ちょっと挨拶に行こうか?」


 ベリル社長はテンションが高いままだ。

 ただし目には冷静な計算の気配もある。


「いいですね」


「先輩の一日の操縦時間は、どんな事情があっても最大12時間、できれば6時間までにして欲しいっす。操縦してないときに自力センサー使うのも避けて欲しいっす!」


 スッスは真剣な表情でとんでもないことを言い始めた。

 今までは連続して24時間自力センサーを使うこともあったし、操縦時間も似たようなものだった。


「うん。6時間までだね」


「社長、それではこの船の守りが薄くなりすぎます。下僕たちが使える自力センサーは、私の今の自力センサーと比べると1桁以上有効範囲が狭いです」


「サルくん? 9ヶ月後には僕の姪か甥ができるんだからサルくんに無理する権利はもうないの。それに、遠くまで『見』えるんだから高速を出して行って帰ってくればいいじゃない」


「いや、それは……」


 俺は少し混乱しながら計算する。

 この船の加速力自体は先代ベリル号と変わらないが、慣性制御を含めて乗組員の保護は厚い。

 一度の飛行でエネルギーを使い尽くすような飛行をすれば、半日で隣接星系への往復と戦闘の両方をやることも普通にできる。

 できて、しまうのだ。


「確かに、できそうです」


「でしょ? だからね。自称なんとか艦隊を、びっくりさせちゃおうよ」


 いたずらっ子と、獲物をいたぶる猫の、両方の要素を持つ表情を浮かべるベリル。


「了解しました。目標地点までを『見』て確認します」


「通商の船にはもういいって連絡しておくっす!」


 準備はすぐに整う。

 俺たちは、8隻の友軍に見送られ、異常な加速と速度で、自称地球防衛艦隊がいる星系を目指すのだった。



  ☆



「にゃぁっ!?」


 驚愕したベリルから猫言葉がもれる。

 俺の自力センサーと連動した画面には、特大タキオン砲から放たれた大量のタキオン粒子が、葉巻型特大宇宙船の装甲に受け流される様子が映っている。


「マジっすか」


「無傷ではありませんが、装甲へのダメージは極小です。タキオン粒子はレーザーほどではありませんが減衰します。近づけば撃ち抜けるとは思いますが……」


 葉巻型特大宇宙船の近くには、動きの練度が高い涙滴型宇宙船が20隻近く展開している。

 1対5までくらいなら一方的に撃破できる自信はあるが、あのアホみたいに頑丈な船だけでなく10隻以上の涙滴型宇宙船と戦えば、60パーセントほどの確率で被弾し轟沈してしまいそうだ。


「ど、どうしようサルくん。僕、この船なら絶対に勝てると思ってたのに」


「勝てますよ」


 俺は本心から言う。


「近距離で撃ち合うなら向こうの勝ちかもしれませんが、こっちの強みは特大タキオン砲以外にもありますからね」


 反撃を受けないよう大きく移動してから、今度は別の目標に狙いをつける。

 自称地球防衛艦隊ではなく、星系外から海賊に護衛されて移動中の輸送船だ。

 俺が『見』たデータをもとにデータベースを調べると、海賊のフロント企業に所属している輸送船で、少額だが賞金までかかっていた。


「あっ、もしかしてそういうこと?」


「はい。対戦シューティングで勝てなくても、戦略ゲームで勝てばいいんですよ」


 輸送船とその周辺のデータを渡すと、今度は余裕の表情になったベリルが輸送船を狙う。

 ここから輸送船まで、とんでもない距離がある。

 しかし、タキオン粒子は、威力の低下を覚悟すれば、光速の数千数万倍の速度が出せてしまうのだ。


 ドット絵風に表示された輸送船が、まともな装甲に覆われた宇宙船なら耐えられるはずのタキオン粒子に中央部を貫かれ、爆発四散した。


「今日はこれまでっす! 母港に帰るまでの時間とあわせて合計6時間っす!」


「了解!」


「これから毎日襲撃しよう! そして、あの星系と艦隊がエネルギー不足で動けなくなってから……」


 ベリルが『にゃふふ』と笑う。

 既に、自称地球防衛艦隊のことを、敵ではなく拿捕ビジネスの獲物として認識していた。

◆ BERYL FLEET

規模:2 防衛:4 遠征:5


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2 ※故障中

船体:3 / 跳躍:2 / 航続:3 / 装甲:1 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT'S NEST MK2(4/4)

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:4 / 居住:2 / 船倉:4 / 兵装:1


◆ CAT CLAW *5

船体:1 / 跳躍:2 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ CAT CLAW CUSTOM *1

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:2 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:2


◆ BERYL THE GREAT

船体:1 / 跳躍:3 / 航続:1 / 装甲:0 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4



◆ CREW

ベリル  |船長Lv2 [財産Lv2]

サル   |操縦Lv5 [衰弱Lv3]

ブルネット|射撃Lv2 [事務Lv2]

キン   |白兵Lv2 [整備Lv2]※静養中

妹猫耳ズ |白兵Lv1 [整備Lv1]

新人船長ズ|船長Lv1 [猫語Lv1]

猫耳の下僕|操縦Lv2 [信仰Lv2]

スッス  |操縦Lv2 [医療Lv1]


◆ CREW IN TRAINING

母猫耳ズ |学生Lv1 [衰弱Lv2]


◆ CAN BE PRODUCED

装甲:2


◆ BERYL HOME PORT(3/3)

権利:1 / 規模:1 / 装甲:1 / 修理:0 / 居住:1 / 備蓄:0 / 兵装:1




◆ King of the Earth(?/?)

船体:4 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:2 / 兵装:3


◆ Pawn of the Earth*18

船体:2 / 跳躍:3 / 航続:3 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:2

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― 新着の感想 ―
やったぜ!これから毎日襲撃だ!!ストレスで発狂させよう しっかし特注の特大タキオン砲受け流すってよっぽどのとこがバックについてるのかな?
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